───文章を書いたシャーリー・パレントーさんはどのような方なのでしょうか?
ウォーカー:ぼくは、シャーリーと直接やり取りはしないんですよ。シャーリーとの絵や文章のやり取りは、編集者であるにサラに任せています。
───そうなんですね。サラさんから見たシャーリーさんはどんな方ですか?
サラ・ケッチャーシッド(以下:ケッチャーシッド):シャーリーは私が出会った中で、本当にステキで、カワイイお祖母ちゃんです。『おすわりくまちゃん』は、シャーリーがお孫さんと本屋さんに行ったとき、書店の遊び場でお孫さんが夢中になって小さいイスにくまのぬいぐるみをひとつずつ乗せているのを見て、「イスよりくまが多かったらどうなるのかしら…」と思ったのがきっかけで生まれたおはなしなんです。
───「くまちゃんシリーズ」にピッタリのとってもカワイイエピソードですね。
ケッチャーシッド:シャーリーには6人のお孫さんがいるのですが、全員女の子なんです。お孫さん達との関わりがシャーリーの創作の源になっているのですが、それは「くまちゃんシリーズ」からも感じていただけると思います。
───お孫さんを通じて、世界中の子どもたちに対する愛情を感じることのできるおはなしですよね
ケッチャーシッド:そんなステキなおばあちゃんに、私は「あそこを直して!ここも変えて!」ってたくさんダメ出しをしてしまうんです…。
ウォーカー:サラはぼくにも、「ここを直して! あそこを直して!」って言うんですよ(笑)。
───そうなんですか? 「くまちゃんシリーズ」の中で、特にサラさんがこだわっている部分はどこなのでしょうか?
ケッチャーシッド:「くまちゃんシリーズ」には、毎回必ず、ストーリーが展開する部分があります。そのきっかけが、ちゃいくまちゃん。なので、ちゃいくまちゃんにスポットが当たるページが毎回登場します。例えば、『おすわりくまちゃん』では、「ぼくもいれてよ! ぼくのいすはどこ?」という場面。『おやすみくまちゃん』では、夜中に目を覚ましてしまった場面…という感じです。
───本当だ! ちゃいくまちゃんだけが出てくる場面で、「どうなるんだろう?」とおはなしにさらに引き込まれる感覚がありますね。
ケッチャーシッド:最新刊『おめでとうくまちゃん』は最初、ちゃいくまちゃんにスポットが当たる場面がありませんでした。なので、私はシャーリーに「ちゃいくまちゃんに焦点を当てる場面を作ってほしい」と伝えたんです。
───「はやくしてよ もうまちきれないよ!」の場面ですね。ちゃいくまちゃんの悲しい様子がすごく伝わってきます。
ケッチャーシッド:「くまちゃんシリーズ」は今のようなやり取りを繰り返して、絵本ができあがっていくんです。
───なかなか伺えない、海外絵本の制作の様子がうかがえて、すごく光栄です。サラさんは「くまちゃんシリーズ」以外にも、 『としょかんライオン』(岩崎書店)の編集を手がけられた編集者の方なんですよね。『としょかんライオン』も日本で大変人気の絵本ですが、ご自身が担当した絵本が読まれていることをどう思いますか?
ケッチャーシッド:言葉では言い表せないくらい、この絵本を作るお手伝いができて嬉しく、誇りに思います。『としょかんライオン』が世界中の子どもたちに人気なのは、それだけ芸術や物語が普遍的なもので、国籍や言葉に関係なく作品の良さが伝わったからだと思います。そういう作品を見出す一助となれたことに、ただただ感動するばかりです。
───シャーリーさんとウォーカーさんは、この「くまちゃんシリーズ」が初の共作のお仕事と伺いました。デイビットさんに絵をお願いしたのには、どんな理由があるのでしょうか?
ケッチャーシッド:シャーリーの描く、楽しくて優しいおはなしの絵には、小さい子どもたちが手に取りたくなるような、温かいタッチのカワイイ絵が合うと思いました。私も、そしてうちの会社のアートディレクターもデイヴィッドに『おすわりくまちゃん』の絵を描いてほしいと強く推しました。デイヴィッドとは、以前他の絵本で仕事をしたことがあったから、シャーリーもきっと承諾してくれると思いました。もちろん、デイヴィッドにシャーリーのおはなしを見せて、彼も気に入ってくれたから、この絵本を作ることができました。
───ウォーカーさんは今回の滞在で、書店での読み聞かせイベントを行うと伺ったのですが、今までもこのようなイベントをしたことはありますか?
ウォーカー:ノー! ぼくはいつも、とても静かなスタジオで作業をしているんです。イヌと一緒にね。だから、日本滞在中の1週間は、ぼくにとって全くイレギュラーな、非日常な時間です。
───ウォーカーさんには、お二人のお子さんがいらっしゃると伺いましたが、お父さんとして、絵本の読み聞かせをしたことはありますか?
ウォーカー:子どもたちが小さいときは毎日のように読み聞かせをしていました。先ほどもお話ししましたが、ぼくの絵本に登場するキャラクターの仕草は、子どもたちが小さいころの仕草を参考にしながら描いています。子どもたちは、自分たちと同じようなルックスをしていて、同じような仕草をするキャラクターの方がより一層共感して、友達のように感じてくれるのでは…と思って描いています。そういう面では、アメリカも日本も…世界中どこへ行っても、子どもってみんな同じだと思うんです。だからこそ、より多くの国の子どもたちのお友達として、くまちゃんたちが受け入れられると嬉しいです。
絵本ナビスタッフ:(ウォーカーさんに)金柿は読み聞かせのプロなので、何かアドバイスが必要であればこの機会に聞いてみてください(笑)。
ウォーカー:それは素晴らしい! 是非、明日から一緒にイベントに行きましょう!
───魅力的なお誘い、ありがとうございます!(一同笑)
(後日、催された書店での読み聞かせイベントでは多くの親子連れの方で賑わって大盛況だったそうです!右上写真はその時のイベントの様子。)
───日本の子どもたちは、「くまちゃんシリーズ」を本当に心待ちにしています。新作が出たばかりですが、今も新しいおはなしは作られているのでしょうか?
ウォーカー:今の段階では、詳しくお教えすることができないんですけど。くまちゃんたちの新しいおはなしをこれからも作っていく予定です。お楽しみに!
───日本では、絵本とぬいぐるみのセットも登場して、人気ですよね。
ウォーカー:絵本とぬいぐるみ以外にも、近々色んなグッズが発売されることも決まりました。どれも日本限定です。今回の来日で、一部サンプルを見せてもらって、ぼくが描いたものが絵本の世界から飛び出して、本物のぬいぐるみやより身近なものとなって、多くの子どもたちが遊んでくれるということにとてもワクワクしています。
ケッチャーシッド:私のイチオシはパスケース。
すごくカワイイんですよ(笑)。
───最後に、絵本ナビユーザーにメッセージをお願いします。
ウォーカー:ぼくは絵本を通して、子どもに本を読んであげるということがとても大切なんですよ…ということを伝えたいと思っています。日本のお母さん、そしてお父さんにも是非、子どもと一緒の時間を持つことを大切にしてほしいです。「くまちゃんシリーズ」を手に取って、子どもたちと一緒に読んでくれることは、本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。
───ありがとうございました。
インタビュー: 金柿秀幸 (絵本ナビ事務局長)
文・構成: 木村春子 (絵本ナビライター)
撮影: 所靖子
●デイビッド・ウォーカーさん来日記念サイン本セット販売企画のご案内
新刊『おめでとうくまちゃん』に直筆サインを描いていただきました!
ぬいぐるみ付き既刊本とセットで、数量限定販売いたします。