絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  谷川俊太郎自選詩集『そして』発売記念谷川俊太郎さん、下田昌克さんインタビュー

出会いはアラスカ?

───『そして』というタイトルもとても印象に残る言葉だと思いました。同じタイトルの詩が本の中に載っていますが、どうしてこのタイトルにしようと思ったのですか?

谷川:これは出版社が提案してくれたんです。「『そして』という言葉が、未来とつながる感じがして、いいなって思うんです」といわれたので、「じゃあそれで」って。こういうのは直感ですね。

───『そして』の挿絵を下田さんにお願いしようと提案されたのはどなただったんですか?

谷川:私です。

───下田さんと谷川さんは、以前からお知り合いだったんですか?

谷川:雑誌の企画でアラスカに行ったときに、一緒に旅をした仲なんです。それから、何度か仕事をしたり、我が家に打ち合わせに来てくれるようになりました。あるとき、下田さんが一冊の本をプレゼントしてくれたんです。それが、伊藤比呂美さんが翻訳した『今日』(出版社:福音館書店)。その絵を見て、下田さんに絵をお願いしたいと思ったの。

───下田さんは谷川さんから絵を描いてほしいと言われて、どう思いましたか?

下田:今まで、雑誌の企画などぼくが谷川さんにお願いすることばかりだったので、「やってくれる?」ってお願いされて「やらないとか言うわけないじゃないですか」って答えました。

───谷川さんは、下田さんが引き受けてくれると聞いたとき、嬉しかったですか?

谷川:いや当然。断られるはずがない。



下田:ですよね〜〜(笑)

───(一同笑)。『今日』は、絵本ナビでもとても人気がある作品です。この絵も下田さんが描いているんですね。

下田:実はこれ、打ち合わせ中のときに描いた、走り描きのようなスケッチを、デザイナーさんが取っておいてくれて、それを一部使っているんです。もちろん、打ち合わせが終わった後、きちんと紙に描き直したんですよ。でも何枚描いても、下絵の持つ勢いや味が出てこなくて……。

谷川:オレの絵も、そうやって描いてほしかったのに……。なんで考えたの?

下田:『そして』の中にも、打ち合わせで描いた絵を使っているんですよ。表紙や「はじめに」がそう。表紙は何度も描き直したのですが、結局、最初に描いた絵が一番良かったので。

谷川:この絵はイタコとしか思えない。降りてきていますよ(笑)。

───本当に、こんなにピッタリ合っているなんて、面白いですね。

読んで味わって楽しめばいいのです。

───「まえがき」に「始めからページを追って読むよりも、一篇一篇を気が向くままに読むほうが楽しいと思います。」と書かれていますが、下田さんもおっしゃっていたように、現代詩が難解だと感じている読者もいると思います。その先入観を払拭してくれるメッセージのように感じました。

谷川:ぼく自身は詩とは「理解できなくても、読んで味わって楽しめばいい」と思っているし、何十年も前から、ひとつでも好きな詩に出会えるよう働きかけてきています。普段、こういうことを詩集の中で書くことは滅多にないのですが、ジュニアポエムははじめて詩と出会う読者もいると思ったので、あえてお伝えしました。


まえがき

───パラパラとめくって、どこか心にひっかかる詩、もう一度読みたくなる詩を見つけるのも楽しいですし、下田さんの線に導かれるように、最初から詩を読んでみるのも良いですよね。今回、おはなしを伺って、改めて詩集の味わい方がたくさんあることを感じました。最後に、絵本ナビユーザーに向けて、メッセージをいただけますか。

谷川:メッセージは苦手なんですよね……。

下田:そう言わず、もうちょっと扉を開けていきましょうよ。

谷川:じゃあ、下田さんからどうぞ。

下田:いやいやいや、おかしいでしょう、それは。

谷川
:メッセージは全部、詩集の中に書いてありますからね。言葉として出てこないんですよ。ほら、下田さん。

下田:えーーっと……「詩がつまらなかったら、絵を見てよ」って言うのはどうですか?

谷川:「絵がつまらなかったら、詩を読んで」って? それいいね。

下田
:何かフォーク的なね。

───(一同笑)。ありがとうございます。とても素敵なメッセージをいただけました。

『そして』刊行記念詩画展が開催されます。

『そして』の刊行を記念して、鎌倉の銀の鈴ギャラリーにて詩画展が開催されます。
皆様、ぜひ足をお運びください。

日時:2016年6月23日〜7月3日(日)
10時〜17時
※6月29日(水)休館

場所:銀の鈴ギャラリー
〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下3-8-33
TEL:0467-61-1930  FAX:0467-61-1931

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「ジュニアポエム」シリーズ


「ジュニアポエム」2015年ラインナップより

銀の鈴社が刊行している「ジュニアポエム」シリーズは、子どもにもわかる言葉で真実の世界をうたう個人詩集シリーズです。
本シリーズからは、毎回多くの作品が教科書等の掲載しに選ばれており、1974年以来、全国の小中学校の図書館や公共図書館等で、長く、広く、読み次がれています。

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【連載】絵本ナビ編集長イソザキの「あたらしい絵本大賞ってなに?」
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谷川俊太郎(タニカワシュンタロウ)

  • 1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、詩、絵本、翻訳など幅広く活躍。1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『マザー・グースのうた』(草思社)、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)、『もこもこもこ』(文研出版)、「まり」(クレヨンハウス刊)、「わたし」(福音館書店)、「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)他多数の作品がある。翻訳作品も多数。

下田昌克(シモダマサカツ)

  • 1967年兵庫県生まれ。1994年から1996年まで世界を旅行。現地で出会った人々のポートレイトを描く。この旅の絵と日記をまとめた「PRIVATE WORLD」(山と渓谷社)をはじめ、「ヒマラヤの下インドの上」(河出書房新社)など著者多数。近著に『アーン』(文:谷川俊太郎 出版社クレヨンハウス)『ぶたラッパ』(谷川俊太郎/文 出版社:そうえん社)など。

作品紹介

そして
著:谷川 俊太郎
絵:下田昌克
出版社:銀の鈴社
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