絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  谷川俊太郎自選詩集『そして』発売記念谷川俊太郎さん、下田昌克さんインタビュー

実は谷川さんも描いていた? 表紙のふしぎな一致とは……。

───読者としては、すべてのページに絵が入っていて、とても豪華だと感じました。詩に合わせて絵を描くのは大変でしたか?

下田:絵を描くとき、いつも思うことなんですが、具体的な絵を描くと文章の内容を限定しちゃう。でも、抽象的過ぎると、絵だけが別に意味を持ってしまうんです。なので、今回はなるべく詩を読み込まないようにして、絵も寄り添い過ぎないように、でも、絵があることでふーっと隙間ができて、奥行きが広がるような印象を持ってもらえるよう風通しの良い絵になるようにしました。

───「まえがき」から鉛筆の一本の線が、ページ全体を通してつながっているというアイディアが面白いですね。

下田:このページをまたいで線がつながっているという部分にすごくこだわりました。校正刷りを何度も確認して、ミリ単位で調整をしたりして……。

谷川: 絵を線でつなげていて、さらにそれがモノクロの線だけで描いてあるというのがアイディアだなって思いました。下田さんがぼくの詩を立ててくれているなって感じ。詩の邪魔をしないようにやってくれて、何となく流れをつけてくれたから。下田さんとしては、結構大人しいんじゃないですか?

下田:そうですか? 学校とか燃やしちゃっていますよ(笑)。

───線がときどき波になっていたり、地平線になって雲が浮かんでいたり、詩をぐるっと囲んで一枚の絵に見えるようになっていたり……すごく動きがあって、次はどんな形になるんだろうとページをめくるのが楽しくなりますね。下田さんの中でお気に入りの絵はありますか?

下田:いろいろやっていって、「空」の詩で一本の線にしたときに「やったー!」って思いました。なんか気持ちいいよね。その次の「五月のうた」の詩で「――憎んでください 憎しみがあなたを幸せにするものなら」の後に、ネコがニヤッと笑っているのもお気に入りです。


「そのかみのかぜ」


「五月のうた」

谷川:けっこう詩も読んでくれているんだね。

下田:読まないで描くんじゃないかって思ってたんでしょう(笑)。読んだけれど、読み込まないようにしました。実は、ぼくは詩を読むのが苦手で。現代詩は特に言葉を磨きすぎているように感じていて、どう受け止めたらいいのか分からなくなるんです。でも、谷川さんの詩は話す言葉のように入ってくるので、今回は直感で接していこうと思って描きました。歌でも、歌詞のなかの一言だけメロディーにのってスッと入ってくると、その一曲が好きになったり、印象に残ることってあるじゃないですか、そんな感じの絵が描ければと思いました。

谷川:野心的だね。

下田:そうやって描く前にいろいろ考えるんだけど、結果、あまり行動につながらない(笑)。

谷川:ぼくが一番ビックリしたのが、この表紙。ぼくも同じ絵を描いたことがあったんだよね。

───え、そうなんですか?


下は谷川さんが描いた手の絵。『そして』の表紙そっくり!

谷川:ミュージシャンの小室等(こむろひとし)のLPのジャケットに描いた小さな絵なんだけど。下田さんの描いた表紙を見たときにすぐに思い出して、この一致が面白いな、やっぱり前世で、どこか一部がつながっているんじゃないかなって思ったね(笑)。

下田:右手だけね、つながっているんですね(笑)。

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谷川俊太郎(タニカワシュンタロウ)

  • 1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、詩、絵本、翻訳など幅広く活躍。1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『マザー・グースのうた』(草思社)、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)、『もこもこもこ』(文研出版)、「まり」(クレヨンハウス刊)、「わたし」(福音館書店)、「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)他多数の作品がある。翻訳作品も多数。

下田昌克(シモダマサカツ)

  • 1967年兵庫県生まれ。1994年から1996年まで世界を旅行。現地で出会った人々のポートレイトを描く。この旅の絵と日記をまとめた「PRIVATE WORLD」(山と渓谷社)をはじめ、「ヒマラヤの下インドの上」(河出書房新社)など著者多数。近著に『アーン』(文:谷川俊太郎 出版社クレヨンハウス)『ぶたラッパ』(谷川俊太郎/文 出版社:そうえん社)など。

作品紹介

そして
著:谷川 俊太郎
絵:下田昌克
出版社:銀の鈴社
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