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点字つき絵本の出版と普及を考える会10周年記念「3社合同プロジェクト」

てんじつき さわるえほん さわるめいろ
著:村山 純子
デザイン:村山 純子
協力:点字つき絵本の出版と普及を考える会 岩田 美津子
出版社:小学館

てんじつきさわるえほん 点字の線をさわってたどり、迷路を楽しむ絵本です。収録される迷路は、全11種類。単一の線をたどってゆく簡単なものから始まり、順を追って難しいものにチャレンジしてゆきます。 第61 回産経児童出版文化賞 大賞 第23回 剣淵絵本の里大賞 アルパカ賞 第48回 造本装幀コンクール 審査員奨励賞 IBBY 障害児図書資料センター 2015年推薦図書 第4回 JBBY賞(IBBY障害児図書資料センターのバリアフリー図書) 受賞作品

てんじつき さわるえほん こぐまちゃんとどうぶつえん
作:わかやま けん もり ひさし わだ よしおみ
出版社:こぐま社

ロングセラー『こぐまちゃんとどうぶつえん』が、点字つきの絵本に。こぐまちゃんの鮮やかな色はそのまま、その上に透明樹脂インクで盛り上げ印刷をしていて、点字だけでなく、絵も触って楽しめます。こぐまちゃんとしろくまちゃんでは感触も違うんですよ。見える人も見えない人も一緒に絵本を楽しみたい!そんな思いのつまったシリーズです。 ◆◆盲学校の幼稚部にて◆◆ 盲学校の幼稚部に通うあるお子さんは「てんじつき さわるえほん」が大好き。お母さんにお話を読んでもらいながら、自分は絵を触って、「これ、しろくまちゃん?」と確かめ、楽しんでいました。そのうちにすっかり文章をおぼえてしまい、いまでは、絵を触りながら文をすらすら読んでくれるそうです。 目が見えなくても、子どもは絵本が大好きなんですね。こうして、本に触る楽しみを知った子どもは、自然に点字を読み取ることになじんでいくそうです。 目が見えなくても、子どもは絵本が大好きなんですね。こうして、本に触る楽しみを知った子どもは、自然に点字を読み取ることになじんでいくそうです。

てんじつき さわるえほん ノンタン じどうしゃ ぶっぶー
作・絵:キヨノ サチコ
出版社:偕成社

『ノンタンじどうしゃぶっぶー』のバリアフリー絵本版 ノンタン絵本の点字つきさわる絵本版。カラー絵に重ねた透明樹脂インクによる隆起印刷で絵が触ってわかるバリアフリー絵本!

───お話を伺って、今までにいろいろな「点字つきさわる絵本」が出版されていることを改めて感じました。

こぐま社・関谷:ただ、出版しただけでは、書店さんの棚に並ばず、一般の絵本の中に埋もれてしまいます。それで、みなさんと話し合い、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」10周年となる2012年に記念事業を行うことになりました。

───記念事業とは、どんなことをしたのですか?

小学館・北川:1冊1冊では売り場で埋もれてしまうので、3社同時期に出版することにして、3冊揃ったところで、書店さんでフェアを行い、マスコミ各社に取り上げてもらえるよう、プロモーションを行いました。

───すごい! 一大プロモーションですね。

こぐま社・関谷:ジュンク堂書店池袋本店の児童書担当の市川さんにご協力いただき、書店でのフェアを2013年2月に開催できるよう、3社同時出版をしました。

───このとき出版されたのが『てんじつきさわるえほん こぐまちゃんとどうぶつえん』(こぐま社)、『てんじつきさわるえほん ノンタン じどうしゃぶっぶー』(偕成社)、『てんじつきさわるえほん さわるめいろ』(小学館)の3冊ですね。

偕成社・千葉:そうです。10周年記念で子どもたちに人気のロングセラー絵本「ノンタン」の「点字つきさわる絵本」を出したいと思っていました。数ある「ノンタン」シリーズの中でも、線をたどる面白さが触図で楽しめるだろうと思い、『ノンタン じどうしゃぶっぶー』を選びました。

こぐま社・関谷:『こぐまちゃんとどうぶつえん』は、『しろくまちゃんのほっとけーき』に次ぐ人気であることと、絵本にいろいろな動物が登場するので、図鑑のように動物を触りながら知って、楽しむことができると思い、点字つきさわる絵本にすることにしました。

小学館・北川:小学館は、オリジナル絵本となる『さわるめいろ』。今回、作者である村山純子さんにもお越しいただきました。

───よろしくお願いいたします。『さわるめいろ』はスタートからゴールの間に模様が並んでいて、そこに触図で道筋が迷路のように示されています。村山さんはどのような発想から、この『さわるめいろ』のアイディアを思いついたのでしょうか?

村山:小学館の北川さんから「点字つきさわる絵本」のことを聞いたとき、まず考えたのは、どういう内容ならば絵と触図にずれがないかということでした。迷路でやってみようと思ったのは、迷路自体に触ってたどるという性質があること、グラフィックな処理できれいな本ができるだろうという予想があったからです。


『てんじつき さわるえほん さわるめいろ』作者の村山純子さん

小学館・北川:村山さんから迷路のアイディアをいただいたとき、「これこそ目の見える子も見えない子も一緒に楽しめる絵本だ!」と確信しました。ただ、本当に目が見えない方でも楽しめるのか検証する必要があり、岩田さんに触っていただきました。

───岩田さんはこの『さわるめいろ』を触ったとき、どのように思いましたか?

岩田:北川さんには「もっと難しくした方が面白い」と言いました(笑)。……というのも、目の見えない子どもたちは手先の感覚がとても優れています。なので、簡単な迷路だと、数回やっただけで飽きてしまいます。点字つき絵本はどうしても高価になってしまいますから、どうせなら、何十回、何百回と楽しめるものを作ってほしいと思ったんです。

村山:私はその岩田さんの言葉を聞いて、ホッとしました。迷路の難易度をどの程度にすればよいのかは、読者の年齢や触図の習熟度に影響されますので、判断が難しいのです。岩田さんのアドバイスをいただいて、当初考えていたより、もう少し難易度を上げることにしました。

───ジュンク堂書店池袋本店で開催されたフェアでは、2013年に発売された新刊3冊とともに、今まで発売された「てんじつきさわるえほん」も店頭に並んだと伺いました。そのフェアの立役者となったのが、ジュンク堂書店池袋本店の市川さんです。市川さんはいつからこの「点字つき絵本」の活動に興味を持たれていたのですか?

ジュンク堂書店池袋本店・市川:私は地域文庫を立ち上げて活動をしていた時、家庭文庫も開いていました。そこにいらしたお子さんの中に、耳の不自由なお子さんがいたのです。その子がとても本好きで、お母さんの影響もあったのか、夢中で本を読む姿が印象的でした。その姿を思い出し、書店でいろいろな子どもたちに本を手渡せる場になればいいなと思い、点字つき絵本を探すようになったのがきっかけです。でも、皆さんがおっしゃるように、当時、目の見えない子が楽しめる絵本が本当に少なかった。書店員として、本屋は文化の発信地にならなければいけないのでは……と思っていたので、まず自分の担当からだと思い、ジュンク堂書店池袋本店の児童書売り場で点字つき絵本の常設棚を作りました。


ジュンク堂書店池袋本店の市川久美子さん

───そのときは「点字つき絵本の出版と普及を考える会」のことはご存じだったのですか?

ジュンク堂書店池袋本店・市川:いいえ。会のことを知ったのは、もっと後のことで、JBBY(社団法人 日本国際児童図書評議会)で講演をしたときでした。そのときの講演内容は別の話だったのですが、最後にちょっと、ジュンク堂書店池袋本店で点字つき絵本の常設棚を作ったことや、流通している点字つき絵本の少ないことを、出版を祈りながら話したんです。すると講演後、千葉さんと北川さんがいらっしゃって、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」のことを教えてくださいました。

小学館・北川:ぼくらとしては、カリスマ書店員として児童書業界で有名な市川さんの口から点字つき絵本のことが出たことがとても衝撃で……。でも、少しでも会に賛同していただければと思い、ドキドキしながら声をかけました(笑)

ジュンク堂書店池袋本店・市川:岩田さんの活動を知ったのも、会に参加してからでした。岩田さんのお話しを伺って、会の活動を聞いて、私自身改めて知ることが多くありました。……と同時に、目が見える子と見えない子の両方が楽しめる絵本があることが、どれほど価値のあることか、もっと多くの人たちに向けて発信するべきだと強く思うようになりました。

───10周年記念の3社同時出版企画は、市川さんの中でもとても大きな意味を持つ企画だったのですね。

ジュンク堂書店池袋本店・市川:はい。この数回目のフェアがスタートしたとき、『さわるめいろ』を目の見える子と見えない子で同時にやってみるというイベントを開催したのですが、私の中で、目の見える子と見えない子の両方が一緒に絵本を楽しむことを目の当たりにして感動でした。

───どちらが早くゴールまでたどり着いたのですか?

小学館・北川:目の見えない子の圧勝でした。目の見える子は、ほぼ全員が人差し指を使って触図をたどっていきますが、目の見えない子は両手の指を使って、すべての触図を触りながらゴールを探っていきます。あっという間にゴールまで行ってしまう子がいて、ビックリしました。

岩田:目の見えない子は訓練していますからね(笑)。ジュンク堂書店池袋本店さんでのフェアは本当にこの10年の集大成という感じで、盛り上がりました。

小学館・北川:3社同時出版企画では、ジュンク堂書店池袋本店でのフェアのほかにも、目的がありました。それは、3社合同で、新聞社やテレビ局などマスコミにPR活動を行い、「点字つきさわる絵本」を取り上げてもらうこと。最終的に80くらいのメディアで紹介をしてもらいました。

「3社合同プロジェクト」ジュンク堂書店池袋本店での様子


『てんじつきさわるえほん さわるめいろ』を使ったイベントの様子

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「多くの出版社に参加していただき、点字つき絵本の輪を広げていきたいと思います」岩田美津子さん

───お話を伺っていると、2007年から10年間の活動には、特にすごいパワーを感じます。

小学館・北川:少しずつですが、活動が実を結んできたという実感があります。

ジュンク堂書店池袋本店・市川:私としては、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」に参加することで、点字つき絵本を出版することの大変さを知ることができたのが何よりも収穫です。そしてここ数年は、以前より切望していた「しろくまちゃん」や「ノンタン」、「ぐりとぐら」などの、晴眼者の子どもたちが夢中になって読んできたロングセラー絵本が「てんじつきさわるえほん」として出版され、目の見えない子どもたちの生き生きとした姿を見ることができました。

偕成社・千葉:これらの活動は、絶対に一社ではできなかったと思います。「点字つき絵本の出版と普及を考える会」があって各社の垣根を超えて情報交換ができたこと、田中産業さんという点字や触図印刷を手がける印刷所があったこと、そして何より、核となる岩田さんがいらしたからこそ、ここまで来ることができたのだと思います。

───今後は、どんなことに力を入れていきたいと思いますか?

こぐま社・関谷:認知度としては、まだまだこれからという部分が多いと思います。何より、一番届けたいと思っている、目の見えない方の多くは、本屋さんに自分たちが楽しめる絵本が売られているということをご存じありません。なぜなら、目の見えない方にとって、本はこれまでフラットな紙の束でしかなかったのですから。今よりもっと点字つき絵本が多く出版され、一定数の点字つき絵本が並んでいる本屋さんがあり、その情報がひとりでも多くの読者の方の耳に入る状況を作ることができればと思っています。

岩田:お話ししたように、点字つき絵本はコストも労力もかかります。今日ここにいらしている、出版社の皆さんの多大なる努力のおかげで、ようやく今、点字つき絵本が少しずつですが広がりを見せています。しかし、このままではこの先、先細りしていってしまうと私は思っています。点字つき絵本に少しでも関心を持ってくださる出版社の方、そして必要性を理解してくださる読者の方がひとりでも増えてくださることが、今後は大切になります。なので、私たちも皆さんの力を借りながら、より一層、仲間を増やしていきたいと思っています。

───先ほど、偕成社の千葉さんから、『じゃあじゃあびりびり』の「てんじつきさわるえほん」が出版されるという話を伺いましたが、今後、出版を予定している「てんじつきさわるえほん」はどんなものがあるのですか?

小学館・北川:ぼくは現在、子ども向けの図鑑の部署にいます。なので、点字つきの図鑑を出したいと、いろいろ試行錯誤している最中です。

福音館書店・管野:弊社でも『ぐりとぐら』、『ぞうくんのさんぽ』に次ぐ第3弾を出したいと思っています。どの作品にするのか、どのタイミングで出版するのかはまだ決まっていませんが、この本を待ってくださっている人たちがいるという実感はありますので、時間をかけて考えていきたいと思います。

───皆さん、一冊一冊、技術を向上させながら、作品を作っていらっしゃる様子を強く感じました。絵本ナビでは今後も、点字つき絵本の情報を、ユーザーの皆さんにお伝えしていきたいと思います。最後に岩田さんから、絵本ナビユーザーの皆さんへ、メッセージをお願いします。

岩田:私にとって、我が子に絵本を読んであげられたことは、子どもの成長に大きな意味を与えていると思っています。小さいときに絵本を読んでもらった記憶は、絵本の内容はもちろんですが、膝の上に座って読んでもらっているときの、肌のぬくもりを通して、知らぬ間に親の愛情を受け取っていると思います。我が子には思春期も反抗期もありましたが、あまり苦労しなかったのは絵本のおかげだと思っています。

───小さいときの読み聞かせによって、大きくなってからの親子関係に変化があると思いますか?

岩田:我が家に限っていえば、息子が多感な時期にお互いの距離感が測れたのは、子どものころから絵本を通してコミュニケーションを取ってきたからだと思っています。なので、関係していると思いますね。

───ありがとうございました。

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