絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >   “食欲の秋” の 美味しいおいも絵本『やきいもするぞ』 おくはらゆめさんインタビュー

原画は和紙に、紅茶で色をつけて描いています。

───絵本を描くときの画材のお話も伺えたらと思います。『やきいもするぞ』では、今までと異なる手法を使っているんですよね。

はい。まず和紙を使ったのはこの作品がはじめてでした。和紙を使って日本画的な作品を作りたいと思ったんです。

───和紙に絵を描こうと思ったきっかけは何ですか?

日本画がいいなあと思ったのは、大道あやさんか丸木俊さんの絵を見たことがきっかけです。絵本作家になりたての頃、お二人の展覧会に観に行って、「ああいう絵が描きたいな〜」と思い、その足で日本画のビギナーセットのようなものを購入した記憶があります。絵本でその技法を使ったことがなくて。『やきいもするぞ』でようやく、日本画の手法を絵本に使おうと思ったんです。

───「やきいも」というテーマから、自然と日本画で描いてみようと思ったのですか?

はい。落ち葉のようなかさかさと乾燥した雰囲気を描くなら、日本画が一番だろうと思いました。ただ、和紙をそのまま使うのも、ちょっと雰囲気が出なかったので、一度和紙を紅茶で染めて、その上から絵を描きました。

───なぜ紅茶で染めようと思ったのですか?

秋のカラッとした空気感や焼けた匂いのようなものを紙の色からも表現したかったんです。紅茶だけでなく、コーヒーなどの飲み物も和紙に描いて実験してみましたし、紙も和紙以外にケント紙なども試しました。紅茶に決めてからも、濃さの違いを何パターンも出したりして……。色をつける素材を変え、紙を変えとしていたら、同じ構図の絵を20〜30枚描いていました。

───同じ絵を30枚も! すごい熱意ですね。おくはらさんは、作品によって使う画材を変えることは多いですか?

いつもはアクリル絵の具を使うことが多いです。日本画の画材を使うのはやはり作品の雰囲気を見て考えます。『やきいもするぞ』では、紅茶の色の濃さが決まったら、刷毛を使って、和紙を全部紅茶色にしました。それから絵を描いたのですが、確か紅茶を塗った後にジェッソ(白色地塗り剤)も下地に使ったと思います。
ジェッソを使うと、ところどころムラが出て、より風合いが増すのですが、絵に詳しい人からすると、和紙にジェッソを使うのはかなり大胆な手法だと思います。

───そうなんですね。

当時は、いろいろ実験をしながら、絵を描いていて、この和紙にジェッソを塗ることも、チャレンジの最中だったからできたことだなと、今は思います。

以前絵本ナビで開催した、「おくはらゆめ やきいもするぞ 原画展」をご覧になりたい方はこちら

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おくはらゆめ

  • 1977年、兵庫県生まれ。辻学園日本調理師専門学校卒業。2005年、MOE絵本・イラスト大賞 年間グランプリ佳作、2006年、第12回おひさま大賞最優秀賞、2007年、第8回ピンポイント絵本コンペ入選。『ワニばあちゃん』(理論社)でデビュー、同作で、第1回MOE絵本屋さん大賞新人賞入賞。『くさをはむ』(講談社)が第41回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他主な作品に、『チュンタのあしあと』(あかね書房)、『まんまるがかり』(理論社)『やきいもするぞ』(ゴブリン書房)など多数。

作品紹介

やきいもするぞ
やきいもするぞの試し読みができます!
作:おくはら ゆめ
出版社:ゴブリン書房
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