絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  身近な生き物154種を美しい絵と文章で紹介『いきもの図鑑えほん』 前田まゆみさんインタビュー

人間と動物に思いを馳せながら、絵を描いていました。

───それぞれの生き物の説明部分もイラストを交えて、とても分かりやすく描かれています。この絵本のレイアウトも前田さんご自身が考えたそうですが……。

はい。イラストのスペースを計算して、どのくらい文字が入るか、入る部分にどんなことを書くか、考えながら制作を進めていきました。

───生き物の名前部分のリボンなどもとてもかわいいです。この装飾も前田さんが考えられたのですか?

そうです。デザイナーさんと相談しながら、文字やイラスト以外の小さなパーツも作りました。


貴重な原画を見せていただきました。

───解説部分には動物それぞれの「うまれ方、育ち方」「体の特徴」「好きな食べ物」などの情報と、そのほか、動物のミニ知識がたくさん紹介されていて、とても読み応えがありました。

基本情報以外のものは、私がいろいろ資料を調べていて、面白いなぁと思ったものを厳選して載せています。

───「ねこ」の「きょうだいの遊び」や「うさぎ」のページの「うさぎ島」の情報など、普通の図鑑ではあまり載っていない情報を知ることができるのも、とてもお得な感じがしました。意外だったのは、子育てに関して、多くのオスは子育てをしないということでした。

そうなんですよ。動物はシングルマザーが多いですね。「きつね」と「たぬき」は夫婦で子育てをします。私たちが想像しているイメージと違いますよね。

───「きつねはオスも子育てするんだ!」と意外に感じました。

この作品を作るために、いろいろ動物について調べていたのですが、人間の社会で起きている問題も、動物に当てはめると、すごく分かりやすく説明できること気づきました。そう考えると、広い意味で、人間も動物の一員なんだと納得しますよ。

───絵を描いているときも、いろいろ気づきがあったり、考えが広がりそうですね。

そうですね。絵を描く前にどの動物を掲載させるか考え、描いているときは動物に思いを馳せながら、人間社会のことを考え……。かなり手と頭を使って絵を描き進めていたように思います。

───動物の名前の後に、漢字を載せたのも前田さんのアイディアなんですか?

これは『野の花えほん』から踏襲していることなんです。この絵本は私たちの身近にいる生きものを中心に、特に日本固有種を多く紹介しているので、漢字を載せることでより面白いと思ってくれるかなと掲載しました。

───意外に知らない漢字も多くて、ビックリしました。「こうべもぐら(神戸土竜)」はなんだか忍術の名前みたいですし、「あぶらこうもり(油蝙蝠)」も字だけ見ると、生き物の名前じゃないように思えます。

一般的な図鑑は学術名を載せますが、これは図鑑であり、絵本でもあるので。この作品でしかできないことだと思います。

実は、虫が苦手なんです……。

───動物だけでなく、鳥や昆虫、爬虫類も載っている『いきもの図鑑えほん』ですが、前田さんご自身は苦手な生き物などはいないのですか?

実は、虫がすごく苦手なんです、私。

───え! そうなんですか? でも、ガーデニングはお好きですよね。

はい。ガーデニングは大好きです。虫もミツバチやチョウならまだ平気なのですが、小さい羽虫や芋虫、葉っぱの裏などに固まっている虫などが苦手で、見るとぞわぞわ〜〜ってします。

───その感覚に共感する人はきっと多いと思います。

以前、イギリスでガーデニングの勉強をしていたことがあるんです。イギリスっていうと、バラのイメージがありますよね。日本のバラは虫がたくさんつくものという印象がありますが、イギリスはまったく虫がつかないんです。例えば、草むらを歩くときも、日本のようにいろいろな昆虫が足元から飛び出してくることが、イギリスではないんです。

─── 意外ですね。

つまり、それくらい日本の自然は豊かということなんです。動物の種類も多いし、昆虫も多い。それに日本固有の「にほんみつばち」もいますしね。

───それだけ自然豊かで、生き物が豊富な日本だから、この絵本は生まれたんですね。

そうですね。

───爬虫類などは苦手ではなかったんですか?

以前、カメを飼っていたことがありますし、オタマジャクシも育てていました。カエルも手に乗せることができます。そうそう、子どもの頃はカイコの幼虫も育てていました。

───すごいですね! でも、カイコは虫なのでは……?

子どもの頃はなぜか平気だったんです。「かわいい〜」って、背中をなでたりしていました。あるとき、これは虫だと気づいて、苦手になりました。

───カメに、オタマジャクシ、そしてカイコ。ネコも飼われていて、本当に動物がお好きなんだということが分かります。『いきもの図鑑えほん』に載っている生き物の中で、飼ってみたい生き物はいますか?

ここで紹介しているのは野生の生き物が多いのですが、飼いたいのは「かやねずみ」です。体の大きさが5cmくらいで本当に小さくて、巣も葉っぱを細く割いて器用に作るんですよ。

───カヤネズミも本物を見に行ったのですか?

はい。上野動物園に観に行きました。地下の薄暗いガラス張りの中に巣がありました。

───絵本の中に描かれている大きさは、ほぼ実物大の大きさなんですね。

カヤネズミと一緒にヤマネも見たのですが、きちんと飼育されていてとても感動しました。例えば、私が一人で観に行こうと思っても、自然界では絶対に見ることができないと思うんです。それを動物園の方が飼育してくださって、こうやって目にすることができるのは本当にありがたいなと思いました。

───そして、私たち読者は『いきもの図鑑えほん』を通して、日本の自然の中にこんなにたくさんの動物たちが生息していることを知ることができるのが、とても嬉しいです。『いきもの図鑑えほん』、『世界のどうぶつ絵本』と動物の絵本が続けて出版されましたが、今、新しく制作が進んでいる作品はありますか?

今は『野の花えほん』の姉妹編となる、お庭の作り方やガーデニングの絵本を作ろうと思っています。お子さんも、プランターを使ってガーデニングができるような、簡単に植物を育てる方法を紹介できたらと考えています。

───それはすごく楽しそうですね。最後に、絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。

『いきもの図鑑えほん』は、あまり動物になじみのないお子さんにも楽しんでもらえるように作りました。寝る前に親子で読んでいただき、絵を見て楽しんでいただいたり、いろいろなエピソードを読んで、人間と似ている部分、違う部分などを話してもらえたら嬉しいです。

───この絵本を通じて、自然やそこに暮らす生物に興味を持つ子も増えるかもしれませんね。

「自然は大切」と言われるけれど、何事もまず、興味を持たないと好きになれないし、大切だと思えないと思います。なので、自然に興味を持つ入り口として、この絵本を手に取ってもらえたら嬉しいです。そして、絵本の動物をもっと知りたいと思ったら、家の外に出てみたり、動物園に遊びに行ったりしてみてください。

───ありがとうございました。

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前田まゆみ(まえだまゆみ)

  • 絵本作家。神戸市生まれ。神戸女学院大学英文科卒。 著書に「野の花えほん」「いきもの図鑑えほん」(あすなろ書房)「野の花ごはん」(白泉社)など、翻訳絵本に「ポーリーおはなのたねをまく」(PHP研究所)がある。京都市 在住。

作品紹介

いきもの図鑑えほん
いきもの図鑑えほんの試し読みができます!
作・絵:前田 まゆみ
出版社:あすなろ書房
野の花えほん 春と夏の花
野の花えほん 春と夏の花の試し読みができます!
作:前田 まゆみ
出版社:あすなろ書房
野の花えほん 秋と冬の花
野の花えほん 秋と冬の花の試し読みができます!
作:前田 まゆみ
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