絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  祝! 10周年記念! くいしんぼうのおばけの子「ばけたくん」シリーズ岩田明子さんインタビュー

7冊目の新刊は……!?

───10周年となる今年、7冊目の新刊が出るとお聞きしました! どんな絵本ですか?

『たんじょうびの巻』『ばけくらべの巻』と同じストーリータイプです。テーマは「おるすばん」。今日はラフの表紙と、原画をちょっとだけお見せしますね。


新刊『おるすばんの巻』(2019年6月刊行予定)のラフ。表紙です。


初公開! こんなシーンがあります!


こちらも初公開! でもどこかで見たことあるような……?

───『たんじょうびの巻』に出てきた、妹のばけなちゃんが登場するのですね! 『たんじょうびの巻』と同じ、ばけたくんのおうちが舞台になるのでしょうか。

そうです。そろそろ私も4冊目の『たんじょうびの巻』で描いたうちの中のおはなし、家族のおはなしを描かなきゃいけないなと思っていました。読者の方たちも、あの人たちはどうしているの?と思っているんじゃないかなと(笑)。

───ばけなちゃんが可愛かったので、そろそろ出てこないかなと思っていました(笑)。 そう言えば『たんじょうびの巻』の見返しに家の構造がこまかく描かれていてわくわくしました。おうちの中のおはなし、おもしろそうですね。


『たんじょうびの巻』見返し

そう、そう。『たんじょうびの巻』の見返しに、家の間取り図をこまかく描いてしまったんですよねえ。「えーっと……この部屋の次はこっちにつながるんだから、間を抜かして急に移動したらダメだよね……?」とか、今回は間取り図に苦しめられました(笑)。「あ、ここのお部屋だね」って見比べる楽しみもあると思うので、家具も台所の風景もそのまま、家具の配置も変えちゃいけないと。

當田:台所は悩みましたよね。岩田さんが「どんな冷蔵庫にしたら、ばけたくんのおうちの雰囲気が出るかな」と(笑)。

全体的にレトロな雰囲気の中に、冷蔵庫だけ現代風なのも変だし……と悩んで、資料館で昭和初期のレトロな冷蔵庫をスケッチしてきました。木の箱状で、中に氷柱を入れる、昔の冷蔵庫です。そもそも、おばけのうちの電化製品ってどんなものかなあ?……と考えました。電気はどうしてるんだろう? 照明は火の玉だから、移動して照らしてくれるじゃない? だから、ばけたくんの家には電気はとおってないかもなあ……と思って(笑)。


レトロな冷蔵庫! でも、おしゃれ!

───わあ、楽しみですねえ。きっと、ばけたくんがお兄ちゃんとして、ばけなちゃんの面倒を見ながら……?

そうそう。妹の面倒を見ながらつまみ食いをするの(笑)。

こだわらなくちゃいけないんだな

───2019年6月刊行予定の新刊『おるすばんの巻』は、シリーズ7冊目になりますが、1年間をどんな感じで過ごしていらっしゃるんですか。

たとえば、『おるすばんの巻』は昨年11月頭から原画に取りかかっていました。
だいたい毎年、「ばけたくん」の新刊が出来るのが6月頃です。原画が完成したら、次の作品を考えはじめます。それまでも何となくアイディアは考えておくんですけど、5・6月で最初のラフを描いて、夏から秋口くらいに詳細を詰めて、11月くらいから本格的に原画を描きはじめます。
いつも2月から3月が原画の締切。だいたいそんな1年の流れです。そうすると3か月後の6月に完成します。

───1年間、しっかり「ばけたくん」に取り組むスケジュールですね。

そうですね。私の描き方では1年に2冊は難しいなとだんだんわかってきました。壁に張った紙に、作業時間を描き出して集計してみると、だいたいどの本も1冊につき原画に300時間くらいかかっているんです。
制作は大変ですが、おいしそうに描けたときの喜びはすごくあるので、完成までは突き進んじゃいますね。

當田:岩田さんは、子どもと同じ目線で作品作りをしているなと思います。決して、努力して子ども目線になっているのではなく、自然に子どもと同じ視点を持っている。理屈だけじゃない、だからこそ読者がずっとついて来てくれて、「ばけたくん」がロングセラーになるんだろうなと思っています。

2014年には「ばけたくんサポーターカード」を作って、ばけたくんの好きなものを岩田さんに考えてもらいました。2015年発行の『たんじょうびの巻』で家族や友だちが出てきて、おうちの間取り図が出来て、キャラクターがふくらんでいきました。設定が広がり、読者にとってさらに身近な「ばけたくん」にどんどんなっていっているなと思います。


「ばけたくんサポーターかいいんしょう」


「ばけたくんサポーター」として登録した読者には、7歳になるまで毎年、誕生日に岩田さんが描きおろしたバースデーカードをプレゼント! ファンにはたまらない宝物です。


子どもたちからのおたより。

「うさぎのキャンディーを食べたばけたくん」「ドーナツを食べたら、ばけたくん、真ん中に穴があくんですか?」「ばけたくんへ。次に何になりたいですか? オムライス?」「そうたもばけたくんになりたい」「ばけたくんは、なんでも食べると へんしんできてすごいね」「バスケットボールとシューズを食べたばけたくん」「おなかこわさないでね。ばけたくんのこと、みんな心配してるよ」「あかちゃんのときもばけられたの?」(子どもたちからのおたより)

───子どもたちからのおたよりを見せていただきました!
かわいいメッセージばかりですね。

子どもたちの質問を読むと「あ、そっか! そういう設定も考えなくちゃ」とハッとしちゃうんですよね。読者が「ばけたくん」の世界を広げてくださっている感じがします。

───こうしてお話をうかがうと、あらためて「ばけたくん」の世界に魅了されます。岩田さんが時間をかけて、じっくり、1冊1冊の絵本を制作していらっしゃるのだなと思いました。
個人的には、輪郭線の味わいから生まれるばけたくんの存在感がとても好きです。

そうですね、私もいろんな絵本を見て、ささっと描かれた線も素敵ですが、ゆっくり描かれた味わいのある線って素敵だなと思っています。ディック・ブルーナさんが線を描かれるのを動画で見て、「えーっ、線ってこんなふうに描くんだな」と感動しました。本当にものすごく丁寧に描いているんですよね。ペンが止まっているのかと思うくらいゆっくりで。シンプルな線の中のこだわりを知って、やっぱりこだわらなくちゃいけないんだなと思いました。
私もディック・ブルーナさんが描くような、あんな線が描きたいな、少しでも近づければいいなと思って描いています。

───10年描いてこられて、どんなふうに感じていますか?

1冊終わったら、すぐ次と、目の前の作品を描いてきたので、10年経ったとは思えないくらい……。もっと短い時間のように感じます。シリーズのお話をいただけるなんてありがたいことで、もう「やるしかない!」と夢中で描いてきた10年間でした。子どもたちに広げてもらった「ばけたくん」の世界を、これからも描いていきたいと思っています。

●最後に、編集者から「ばけたくん」情報を!

當田:「ばけたくん」シリーズが10周年を迎えたのですが、同時にシリーズ累計で20万部を突破したんです! 本当にすごいことだなあと、読者の方々に感謝しています!
そこで、この6月から書店では「ばけたくんスペシャルフェア」を展開する予定です。何がスペシャルなのか……それはまだシークレット(笑)なので、どうぞお楽しみに。

そして、もうひとつ。大日本図書も今年は記念の年で、130周年を迎えました。会社の記念ロゴを作ったのですが、それが「ばけたくん」なんです! 岩田さんにお願いをして作らせていただきました。大日本図書内でも今年は特に「ばけたくん」があちこちに出現していて、個人的にもとっても楽しいです(笑)。ロゴをみなさんがご覧になる機会はあまりないかもしれませんので、ここで公開しちゃいますね!

 class=

───かわいい「ばけたくん」から、これからも、ますます目が離せませんね。
ありがとうございました!

文・構成: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所 靖子



※期間内【2019年4月12日から2019年5月8日まで】にご回答いただいた絵本ナビメンバーの方全員に、 絵本ナビのショッピングでご利用いただける、絵本ナビポイント50ポイントをプレゼントいたします。

今、あなたにオススメ

出版社おすすめ

  • ひつじシステム
    ひつじシステム
    出版社:小学館 小学館の特集ページがあります!
    めくるめく羊の世界!羊を数えると眠れるらしい。羊が1匹、、2匹、…108匹、ちくわ!、そうめん!?…


人気作品・注目の新刊をご紹介!絵本ナビプラチナブック
【絵本ナビショッピング】土日・祝日も発送♪

岩田明子(イワタアキコ)

  • 1967年、東京生まれ。1991年、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業。2004年、子どもの本専門店「メリーゴーランド」(三重県四日市市)主催の「絵本塾」に参加。絵本作品に「ばけばけばけばけ ばけたくん」シリーズ、『とんねる とんねる』『どっしーん!』『どんどん くるくる(中尾昌稔・文)』『そらからふるものなんだっけ?』(ともに大日本図書)、『こちら たこたびょういん』(PHP研究所)、『はらぺこソーダくん』(佼成出版社)、『でてくる でてくる』(ひかりのくに)がある。
全ページためしよみ
年齢別絵本セット