───ペムペルとネリ。金のかわりに黄金のトマトをサーカスの番人に差し出してる時の無垢な顔!本当に可愛らしいですね・・・。だからこそ、次の場面を描くのは(トマトを投げつけられる二人)降矢さんにとってもつらい作業となったのではないかと勝手に想像をしてしまいます。
この絵本の制作の中で大変だったことを教えていただけますか?
子どもの表情を描くことが難しかったです。
トマトを投げつけられる二人の絵を描くのはそんなに辛くなかった・・というか、この物語のクライマックスはごまかさないでしっかり描きたかったです。折りしもこの絵本制作に取り組んだのは、3.11の震災、原発事故の後でした。理不尽な現実の中で子ども達が翻弄されていました。私自身そういう子ども達に実際には何もしてあげられず大人の自分のことに怒っていたと思います。私のそういう気持ちが、ペムペルとネリをあの表情に描かせたのだと思います。
───他に印象深かった場面はありますか?
サーカスのテントと表紙を描いている時がとても楽しかったです。
特にサーカスのテントは、絵の具を重ねて塗っていく度に、サーカスのテントが輝いていくんです。絵の具っていいなぁ、色っていいなぁ・・・・ってしみじみ思いました。
あと、象の場面も。思い切ってシュールに描けたから。
───「いい音」をさせながら過ぎ去っていく馬乗りたちの行列や四角のきれをかぶった大きな生き物。この場面はすごくワクワクしてきます!
ありがとうございます。ペムペルとネリのちょっぴりこわがりながらワクワクしている、そういう気持ちを読者にお伝えしたかったです。
───降矢さんの作品の色使いにすごく惹かれます。この作品では、特に場面ごとに変化していく色の変化の美しさに息を飲んでしまいます・・・。
『黄いろのトマト』での、色に関してのテーマなどがありましたら教えていただけますか?
『黄いろのトマト』の文章の中にけっこう色についての記述が出てくるのです。これは編集者さんからも指摘されました。それを表現しようとしたら、今回みたいな場面ごとの色の変化になってしまったのだと思います。それから、光と闇が生み出す湿っぽい雰囲気をできるだけ表現したかったです。
───完成した作品をご覧になって、改めてどんな絵本になったと思われましたか?
まだできたてホヤホヤなので冷静な目でこの絵本を見ることができません。日本中に賢治ファンがたくさんいらっしゃる。その人たちが怒らないでくれることを願ってます。
ただ、私自身、かなり力を入れて絵を描きました。だからいろいろな方に見ていただき、感想やご意見、批判を聞かせていただきたいと切望しています。
───賢治の童話は、日本だけでなく、スロバキアや他の国の子どもたちにも読んでもらいたいと思われますか?
賢治の童話すべてとは言えませんが、賢治のお話はスロバキアの人たちにもとても喜んでもらえると思います。賢治の世界の雰囲気って、旧東欧圏に通じるものがあると思うので。
───生まれ故郷である日本を離れ、長くスロバキアで生活をされ、創作活動も続けられている降矢さん。特に今回のように日本人に深く親しみのある宮沢賢治の童話を異国の地で創作されている時に、感じられたことはありますか?
先ほども申しましたが、賢治の世界って旧東欧圏の雰囲気と共通のユーモア、物悲しさ、暗さがあると思うのです。私が編集者だったら、賢治絵本をスロバキアの画家に作ってもらいたいと思いますよ。私の恩師のデュシャン・カーライ先生に「注文の多い料理店」か「どんぐりとやまねこ」を描いてもらいたい。
だから、スロバキアの空気の中で『黄いろのトマト』を描くことができて良かったって思います。
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