絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「続・どろぼうがっこう」2点同時発売記念!ワークショップレポート&編集者インタビュー

『どろぼうがっこう』の続編、『どろぼうがっこう ぜんいんだつごく』『どろぼうがっこう だいうんどうかい』の編集を担当されている千葉美香さんにお話を伺いました!
40年ぶりに続編が刊行されたこの2巻には、どんなエピソードが隠されているのでしょう。

───『どろぼうがっこう』とはどんな出会いだったでしょうか?

大学生のとき、アルバイトをしていた子どもの本の専門店で出会いました。もうすでに出版されていましたが、「すごい! こんな絵本があるんだ!」と、くまさか先生にみとれました。

───発売から40年経った今でも、変わらずに子どもたちを楽しませてくれているのがすごいですよね!
千葉さんは、『どろぼうがっこう』がロングセラーとなった秘密はどんなところにあると思われますか?

「きまじめな警官」と「まぬけなどろぼう」がいたら、きっと「まぬけなどろぼう」の方に惹かれると思います。何をしでかすかわからない期待感、そんな彼らが学校で授業を受けている、しかも「まぬけ」の筆頭は実は校長先生なのだから、たまりません。遠いところ、また遠い世界にいるはずの人たちが、ぐっと身近にきたわけなので、本を開くたびにうれしくなる、そんなわくわくする気持ちは、40年前も今も変わらないのではないでしょうか。

───「続編が出る!」というニュースは多くの読者が喜びました。この「続編」のお話が出てきたのはいつ頃だったのでしょうか。

10年ほど前、かこさんの担当を引き継いでちょっとしてから、お会いしたときです。『からすのパンやさん』と『どろぼうがっこう』は、続編を描かなくてはいけないと思っている、というお話をうかがいました。かこさんの中では、それよりもずっと前から、その思いはあったようです。どろぼうたちを、まずは脱獄させなくてはいけない、とおっしゃってました。(『からすのパンやさん』についても、4羽の子どもたちのお話、という構想は、すでにおもちでした)

───そのお話を聞いた時、千葉さんはどう思われましたか?

早くみんなを脱獄させてあげてほしい!

───みんなの思いを受けて(笑)、完成したのは見事な脱獄ストーリーでした!
このストーリーを初めて読まれた時の感想はどうでしたか? また、この絵本のみどころも教えてください。

どろぼうがっこうの生徒たちは、ずいぶん長い間、まじめにいっしょうけんめい、おつとめを果たしてきたんだなあ……ということをひしひし感じて、ちょっとじんとしました。
そして、ずいぶんたくさん、牢屋に入っている人や、刑務官の人たちがいますが、その人たちの表情がとっても豊かです。一人ずつ見ていたら、あきません。小さく小さく描かれた人たちも、みんな、いろんな人生をしょってると思います。この人何をして、牢屋に入れられたのかな、と想像するのも楽しいです。とってもイケメンの刑務官もいます。かこさんは、どんなときにも一人一人を「その他大勢」となさらないところが素晴らしいと思います。

───そして、同時に発売されたのが『どろぼうがっこう だいうんどうかい』。
2巻同時に発売という事にも驚いてしまいますが、2巻というのは最初から決まっていたのでしょうか?

決まっていました。脱獄させたら、運動会を開きたい、とおっしゃってましたから。

───2巻目はうって変わって、平和で楽しいイメージの「運動会」がテーマです。どろぼうがっこうの運動会と言えば、どんな競技があるんだろう・・・想像するのも楽しいですよね。「ニセさつわたし」「ドルばこリレー」なんて競技が登場した時、どう思われましたか?

笑いました。おもしろい! 「ニセさつわたし」は、重そうなニセさつを運ばなくてはいけない上に、あせる中、全てがニセさつかどうかを確かめるなんて、やる方は大変なゲームだと思いました。本にするとき特に問題はありませんでしたが、「ニセさつ作りワークショップ」と聞いたときは、だいじょうぶかな? とちょっと心配になりました。好評でよかったです!
かこさんは、全国を講演なさっていた頃、いく先々で子どもたちの好きな遊びや遊び方について、アンケートをとっていらっしゃいました。30万件近くも集められたそうです。地方によって、同じ遊びでもルールが違うなどいろいろありますよね。それを統計的にまとめられた集大成が小峰書店さんから出版された「伝承遊び考」シリーズです。そんな積み重ねもあるので、この運動会でも、ユニークな競技や、「あきすおんど」といった画期的な盆踊りが、ぞくぞく登場したのだと思いました。

───気になるのは、どろぼうがっこうの運動会を村の人たちが見物に来ている!?という状況なのですが・・・。

どろぼうがっこうの生徒たちは、悪いことして儲けているようなお金持ちからしか、盗まないとのこと。なので、つましく暮らしている近所の村の人たちとは友だちだそうです。

───「どろぼうがっこう」シリーズには、3巻を通してみみずくが登場しますね。このみみずくはどんな存在なのでしょうか。

『どろぼうがっこう』の絵本が出版される前、かこさんは手作りの紙芝居で、子どもたちに、このお話を語っていらっしゃいました。子どもたちは大喜びなのに、ある保育園の先生からこんなどろぼうの話は「けしからん!」とずいぶん叱られたそうです。
そんなことがあったので、その後、当時の偕成社の社長と編集長がかこさんのお宅にうかがい、たくさん作ってらした手作り作品の中から絵本にして出版しましょう、という話になって(それが「かこさとしおはなしのほん」10巻になりました)、この『どろぼうがっこう』が、その1冊に選ばれたとき、かこさんはびっくりなさったそうです。それでストーリーはほとんど、その手作り紙芝居と変わらなかったけれど、現実の世界ではなく「みみずくから聞いた話」ということにしようと、みみずくを加えたそうです。
おいのこもりのみみずくは、そんな理由で登場しましたが、とても存在感があって、みみずくのおかげで、どろぼうがっこうの世界を、よりリアルに感じるように思います。


こちらが絵本『どろぼうがっこう』の元となった紙芝居だそうです!!

───「どろぼうがっこう」シリーズは、絵に関してもとてもユニークですよね。くまさか先生の姿はもちろん、背景やどろぼうの服など色々な所に新聞のような紙がコラージュとして使われているのも面白いです。

かこさんは、昔から海外の新聞や学会の資料のコピーなど、もしかしたら何かに使えるかもしれない、と思って集めている紙類がた〜〜〜くさんあるそうです。その中から選んでコラージュに使われてます。『どろぼうがっこう ぜんいんだつごく』では、大変に細かい囚人服を、みんな切って貼って、という作業を繰り返されてます。普通のはさみでは切れないので、爪切りばさみを使っていらっしゃるとのこと。たぶんのりはヤマト糊でしょう。
かこさんは、絵本のラフ、メモ書きなどもみんな裏紙を使われます。カレンダーの裏などもよく使われます。広告の紙は、最近裏が白いのがなくなった、と嘆いていらっしゃいました。それは、手作りで絵本や紙芝居を作ってらした頃から変わっていないようです。上記の『どろぼうがっこう』の紙芝居も、化学式のある論文コピーの裏に描かれています。

───「ぜんいんだつごく」「だいうんどうかい」を通して、かこさんが子どもたちに伝えたかったことはどんなことだと思われますか?

40年前に描かれた『どろぼうがっこう』の最後で、万事休す、みんな捕まってしまって、もうこれで終わり……と思いました。でも、みんなはまじめに一生懸命牢屋でやっていたのです。無事出獄できて、楽しい運動会ができるような日常が戻ってきました。
明日はある、そして人生は続く」ということかな、と思います。

───40年ぶりの新作の発売ということは、編集を担当されている千葉さんにもプレッシャーがあったのではないでしょうか。

ロングセラーの続編、というのはとても難しいものだと思います。プレッシャーもありました。もちろんそれは作者の方が一番思われることとも思います。だからこそ、40年かかったのでしょう。本を出すまでの作業をする中で、何度もこの新しい作品を読みました。何度読んでもおもしろいのです。声に出して読むとさらにおもしろいのです。どうなるかわかっていてもおもしろいのです。だからだいじょうぶ、と思いました。
かこさんが40年考えられていたその思いが、書店の方や、読者の方たちに通じているなと感じられたときが嬉しかったです。

───続編が発売されて、読者の方からも反応はありますか?

「ボロボロになった『どろぼうがっこう』を持っています。」「本屋さんで見てびっくりして孫に『どろぼうがっこうぜんいんだつごく』を買いました。やっぱりおもしろい!」 などという、何世代にもわたるファンの方の声が多くて、子どもの本ならではのことだなあ、としみじみ思いました。

───「かこさとし おはなしのほん」シリーズは、まだまだ新作が登場予定だとか・・・?

それぞれ、かこさんの中にずっと息づいていた、おたまじゃくしたちやあかあり小学校のみんなに再会できる喜びを、みなさんどうぞかみしめてください。

───そちらも楽しみですね。ありがとうございました!!

<おまけ>
貴重なかこさんの原稿の画像(コピーになります)を見せていただきました!
「かこさんの原稿は手書きです。原画をトレーシングペーパーでカバーして、その上に、原稿を切って、それぞれ、このあたりに入るという位置に貼ってあります。(絵の部分が薄くなっているのは、トレーシングペーパーの上からコピーしているからです)
これを見て全体のイメージを掴んで、レイアウトしていきます。そして、レイアウトしたダミーをごらんになって、かこさんがさらに文字位置などに手を入れていかれます。」

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偕成社さんのHPでかこさとしさんのスペシャルインタビューが公開中です!
『どろぼうがっこう』が生まれるまで、そして続編となる『どろぼうがっこう ぜんいんだつごく』『どろぼうがっこう だいうんどうかい』についてお話されています。
こちら>>>

『からすのパンやさん』、『どろぼうがっこう』、と40年ぶりのつづきのおはなしを刊行してきた「かこさとしおはなしのほん」シリーズ。このたび、新たに4作のつづきのおはなしの刊行が決まっているそうです!
その情報の一部をご紹介します。

2014年1月刊行予定はこの2点!


パピプペポー おんがくかい

ロングセラー『にんじんばたけのパピプペポ』の続きのお話。
前作でこぶたたちが一生懸命れんがを焼いて作った劇場で、音楽会が開催されます。
「あいうえおうた」や「パピプペ ポン マーチ」など、ゆかいで楽しい演目がつづきます。
最後は観客席のみんなも大合唱!


あかいありの ぼうけんえんそく

ロングセラー『あかいありとくろいあり』の続きのお話。
あかあり小学校のみんなは、PTAのおとうさんおかあさんたちといっしょに、「ぼたもちやま」へ秋の遠足に出かけます。ところが、おそろしいアカムカデやナメクジビルなどに出くわしてしまいます。

2014年2月刊行予定はこの2点!


おたまじゃくしのしょうがっこう

ロングセラー『おたまじゃくしの101ちゃん』の続きのお話。
うしろあしが生えそろったおたまじゃくしたちは、いちべえぬまの小学校にはいります。
ある日午前の授業をおえて、お弁当を食べようとしたら、沼の底から大きなナマズがあらわれて、絶体絶命のピンチです!


あおいめのめりーちゃん おかいもの

あおいめのめりーちゃんは、お母さんと買い物に出かけます。
あおいポチポチのネクタイに、もも色とふじ色のテープ。
肉や卵にお野菜に、大きなケーキ、それからぶどう酒も!
お家に帰って早速準備です。さて、なにをするのかな?

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作品紹介

どろぼうがっこう
作:かこ さとし
出版社:偕成社
全ページためしよみ
年齢別絵本セット