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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2009.11.24

石津ちひろさん
絵本『かわいいことりさん』他

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立派なご意見番!

─── 少し話ははずれますが・・・『サラちゃんのおおきなあかいバス』についてのお話の中で、名前を決定される時に娘さんに相談されたとおっしゃっていましたね。

「娘には普段から色々手伝ってもらってるの(笑)。小さい頃からバレエを習っているので『くるみわり人形』などのバレエの絵本では、ポーズを全部チェックしてもらったり。作品についても意見を聞いたりするんです。結構ダメ出しがあるんですよね。『全然ダメじゃん。』『うん、随分よくなった。』『これじゃ石津ちひろじゃないよ。』なんて(笑)。」

ご家庭での雰囲気も伝わってきます。そんな一面が垣間見られると、石津さんにぐっと親しみを感じられて嬉しくなっちゃいますね。
さて、次にご紹介する作品では、そんな娘さんがご意見番として大活躍されたそうで・・・。

娘さんもお気に入り!『おばけやしきにおひっこし』

おばけやしきにおひっこし

おばけやしきにおひっこし
作:カズノ・コハラ
訳:石津ちひろ
出版社:光村教育図書刊

マージョリィと猫のオスカーが引っ越したのは、なんと、おばけ屋敷! でも、大丈夫。
だって、マージョリィは、ただの女の子じゃなくて……。
日本出身、イギリスでデビューした期待の新人作家による、かわいいおばけの絵本。

─── テンポの良い絵本の翻訳は結構大変!?

「この作品は絵がとってもくっきりしていて、文章が短くて、リズムがあって、きびきびしていて。軽やかな感じを・・・と思って訳してみたんです。そしたら娘から『全然ダメ、テンポが良くない』ってはっきり言われて(笑)。それでまた最初から全部やり直したんですよね。」

確かにこの作品は、先に紹介した2冊とはがらっと雰囲気が変わりますね。石津さんに対するこちらの勝手なイメージで想像して、こういうパキっとした感覚の作品の方がご自身に近くて翻訳しやすいのかなと思っていると・・・。

「翻訳の時は結構しっとり系の方がすんなりと出来上がるんです。言葉遊びなんかを作っていると、歯切れのいい言葉づかいがぱっぱと浮かぶんです。それが翻訳になると、こういうタイプの作品は、結構何度も何度もやり直しながら、絵と合わせてしっくりくるように完成させていく事が多いんですよね。(『リサとガスパール』シリーズなんかもそういう感じなのだそうです!)娘が感覚的にダメ出しをしてくれることも多いですね。」

それでも次に出来上がってきた石津さんの文章は、編集の方もはっとする程がらりと変わっていて、本当に感動されたのだそうですよ。結果的には、娘さんもこの作品が大のお気に入りとなったそうです!

───表紙からぱっと目をひくこの作品。オレンジと黒の2色の風景に、白い紙をはったような表現のおばけがとってもユニークです。作者はイギリスで活躍されているカズノ・コハラさん。まだとてもお若い方なのだそうです。翻訳者の石津さんの目から、その魅力を語って頂きました。

「使っている色自体はとても少なくて、構図もシンプル。でもここまでみごとに表現できるなんてすごいなと思いますね。人を引き込む力があるんですよね。すぐ目の前でその出来事を見せてくれているような。版画で表現されているんですけど、リアルに目の前で展開しているような躍動感があって。お話の方も、テンポが良くてぐいぐい進んでいきます。読み聞かせ会などで読んだとしたら、例えば絵本に慣れていないようなお子様でも引き込まれていくでしょうし、みんなが楽しんでいる様子が目に浮かぶようですね。」

おばけやしきにおひっこし

─── マージョリィとオスカー

この作品も、原書では名前はついてなかったそうです。そこで親しみを持ってもらうために名前をつけようという話になったそうです。ところが、カズノ・コハラさんは日本人の方なので(イギリスを拠点に活動されているので、原書は英語。)翻訳版を出版するにあたって、コハラさんご自身の指定で新たに名前がつけらたそうですよ。
女の子がマージョリィで、ねこがオスカー。魔女らしく、それでいてとってもキュートな名前ですよね。

最新刊は『ふゆのようせい ジャック・フロスト』

以上3冊に加えて、最後にご紹介するのはこれから発売される新刊『ふゆのようせい ジャック・フロスト』。『おばけやしきにおひっこし』の作者カズノ・コハラさんの新作です。取材時にはまだ出来上がっていなかったので、どんな内容なのか、石津さんに少しご紹介して頂きました。

ふゆのようせい ジャック・フロスト

ふゆのようせい ジャック・フロスト
作:カズノ・コハラ
訳:石津ちひろ
出版社:光村教育図書刊

冬が嫌いなコリンと犬のサミィの前に現れたのは、ジャック・フロスト! 友だちになった3人は、冬じゅう楽しく遊びます。ところがある日、コリンがスノードロップのつぼみを見つけると・・・。寒さを吹き飛ばす楽しい冬の絵本。

─── 『おばけやしきにおひっこし』とはまた違った魅力!

「同じ作者の方の新刊なんですが、雰囲気がまたガラっと変わって。こちらは冬の冷たくて澄み切った空気、ひやっとする感じが伝わってきますよね。色が本当にきれいで、空気感がすごよく伝わってきて。」

今作の舞台は冬。きれいな青い風景に、まばゆいばかりの白い線がとても印象的!

「季節は冬。退屈していた男の子の所へ、ジャック・フロストという『ふゆの精(日本語で直訳すると霜の精なのだそうです!)』が現れるんです。ジャック・フロストと一緒に、男の子は雪や氷の上であらゆる冬の遊びをします。この場面は実際に一緒に体験しているようで、見ていてすごくワクワクするんですよ。
でもある時男の子が聞くんです。『ねえ、ずっといっしょに遊べるの?』
ジャック・フロストは『遊べるよ。でもぼくの前で春の話はしないでね。魔法がとけちゃうから』と言うのですが・・・。(続きはお楽しみに。)
ちょっと切ない部分もあるのですが、最後にとてもあたたかい気持ちになれる内容です。
もちろん、雪がたくさん降る地方の子どもたちが読んでも楽しいですし、反対に雪を見たことがない様な暖かい地方の子ども達も、憧れの気持ちで楽しんで読めるかもしれませんね。」

───これから要注目の作家さん

この作品では、前作とはまた違った魅力を発揮しているカズノ・コハラさん。冬の風景の描き方など、とても大人っぽく上品な雰囲気。でも登場人物たちがとても可愛らしく、そんなバランス感覚が何とも絶妙と石津さんも絶賛!コハラさんの作品は、出版されたイギリスでまず火がつき、更にニューヨークでも『おばけやしきにおひっこし』(初めての絵本!)でニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞に選ばれるなど、世界が注目する新進気鋭の絵本作家さんなのです。これからの展開も本当に楽しみですね。

───最後にとても石津さんらしいエピソード。『ふゆのようせい ジャック・フロスト』では男の子と一緒にワンちゃん(犬)が一緒に描かれています。原書では文章には登場していないそうなんですが、石津さんの翻訳バージョンにはちゃんと一緒に登場しているそうです。

石津ちひろさん 「(編集の方に)言われて、『あぁ、そういえば』って気がつきました。ワンちゃんとか動物が出てくると無視できないんです、私(笑)。自然と登場させていました。」

そういえば『おばけやしきにおひっこし』でも、猫にもしっかり名前が与えられています。本当に動物が大好きなんですね。
今回ご紹介頂いた作品4冊に、石津ちひろさんが直筆サインを描いてくださいました!

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石津 ちひろ

  • 1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。


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