●絵本作家 石津ちひろさんが生まれるきっかけ
今回の特集の様に、絵本の翻訳家として大活躍されている石津ちひろさん。(「リサとガスパール」シリーズも全て石津さんが翻訳されてます!)でも「言葉の魔術師」と評される通り、回文やなぞなぞを初めとして言葉遊び絵本をたくさん生み出されている作家さんでもあります。その他絵本作品も合わせると、絵本ナビに登録されているだけでも170作品以上!そのラインナップを見ていくと、意外と慣れ親しんでいた絵本が実は石津さんの作品だった・・・という方も多いのではないでしょうか?そんな石津さんに、絵本の仕事に携わるきっかけとなったエピソードをお伺いしてみました。
─── 全てのきっかけは回文から
「絵本の仕事を始めさせて頂くきっかけとなったのは『まさかさかさま 動物回文集』(絵・長新太 河出書房新社刊)でした。」と石津さん。全ては回文がきっかけなのだそうです。
「パリに留学していた時に、たまたま集まっていた2〜3人の日本人のお友達とカフェでお茶をしていた時、『回文の作りっこをしよう。』という話になったんです。その当時、回文なんて知らなかったので聞いてみると『上から読んでも下から読んでも同じもの』とのこと。で、『例えば・・・きしゃのやしきとか?マカオのおかま?』なんて口に出してつくってみたんです。そしたらお友達が『紙に書かないで出来るんだ。すごーい、天才!』なんて言うから、『てんさい?じゃあ・・・さいさんててんさいさ。』どんどん出来たんです。それがすごくお友達に受けて。私こんなに受けたことなかったかも!なんて思った事が回文作りの最初のきっかけでしたね。」
うーん、何とも軽やかなきっかけ。口に出してみたら出来たなんて、石津さんらしいエピソードです。でも、ここからがもっとスゴイ。
─── 回文が本になるまで
「それから日本に帰ってきて。暫く回文の事は忘れていたんですけど、ある日部屋にかすみ草を飾った時にふと『カスミソウ?逆さに読むとウソミスカ。じゃあ・・・わたし かすみそう うそみすかしたわ』できた!と。他にも『きりん ねていて ねんりき』『ちんぱんじいから かいじんぱんち』なんて色々思いついたんです。お友達に話してみたら、『それ絶対面白いよ!動物ばっかりで作ってみたらどう?』って言ってくれたんです。それで10個位書いてたんですよね。」
このお話を聞きながらも、石津さんの口からスラスラ出てくる回文に驚かされっぱなしです。いくらでも出てきそう・・・。
「ある日、何かのきっかけで河出書房新社の方から『お茶でも飲みにいらっしゃい。』と誘われたんですよね。飲みにいらっしゃいと言われても、何も持っていかないのも・・・と思って、作った回文を10個位持って行ったんです。そしたら『これ、面白いかも!』と言ってくださって。この動物回文を80〜100個位書けたら本に出来るかもしれない、と言われたんです。」
もう、その帰りからずっと回文を考え始めたという石津さん。この頃お子様が誕生されたばかりで、なんと0歳の赤ちゃんを抱えながらずっと作っていらっしゃったそうです。目に見えたもの何でも回文にして・・・。
「そしたら130個位出来たんです。」
130個!そうして本を作る事になったら、今度は絵を長新太さんが描かれることになって。今では回文を書きながら絵が同時に浮かぶ事も多いという石津さん、この時の長さんとのやりとりで色々学ばれた事が多かったそうです。何ともうらやましい話ですね。その後も藤枝リュウジさんと組まれた人気シリーズなど、回文や早口言葉など言葉遊びシリーズは沢山出されてます。
─── それにしても、まさに子育ての思い出と、回文作成の思い出が一緒になっている感じなのではないでしょうか?
「そうそう。だから娘は小さい時、原稿用紙のマスを○で埋めながら『オシゴト』『マシャカシャマよ』なんて言ったりしていましたね。ちょっと大きくなると、幼稚園のお迎えの自転車の上で『ママ早く帰りたい』って言うから、お腹空いたのかな?と思ったら『いい絵の考えが浮かんだの』なんて口にされて、驚いたこともあります(笑)。」
「そんな風にして家でずっと仕事していたから、じゃあもう日曜日だけは仕事をやめよう、娘となぞなぞでもしよう!・・・で生まれたのがこの『なぞなぞのたび』なんです。」
『なぞなぞのたび』
まさにお子様との遊びの中から生まれた絵本だったんですね。この絵本、小学生に大人気です。この日も石津さん自ら出題してくれました。
「あさにはなくて ひるにあらわれ よるのあいだは ずっといて
あさになると またきえる さていったいなあに?」
さあ、皆さんも考えてみてくださいね!絵を見ながら考える問題なので、気になる方は本を覗いてみてください。
(※答えは記事の最後で)
─── 更につながっていって・・・
その『なぞなぞのたび』を、あるイベントでみんなの前で読む機会があったそうです。たまたま新沢としひこさん(シンガーソングライダー・絵本作家)が司会をしていらしたそうで。
「なぞなぞをいくつか読み終えた時に、新沢さんが『石津さんのなぞなぞって、何だか詩みたいだよね。』って言うから、照れ隠しに『知らなかった?私詩人なのよ。詩を書かない詩人なの。』って言ったんです(笑)。」
それをたまたま会場で編集者の方が聞いてらして、数日後、石津さんに声をかけられたそうなのです。「詩集を出しませんか。」って!それがきっかけで出来上がったのが『あしたのあたしはあたらしいあたし』。
ここまでお伺いしていて多くの方も感じられているでしょうが、本当に<お仕事のしりとり>みたいだと思いませんか!何だかとっても不思議なお話です。その後も絵本のお話を書かれたり、翻訳の仕事をなさったり。大活躍の石津さんなのです。
●娘さんとの貴重なエピソード!
───お話の中で、度々登場している石津さんと娘さんとのエピソード。子育て中の方が多い絵本ナビ読者にはとっても気になる部分ではないでしょうか。そんな皆さんの為にとっておきの微笑ましいエピソードも教えてくださいました!
「実は、リサとガスパールの絵本の中でよく登場するセリフ『ひゃー、やっちゃった。』というのは、娘の口グセだったんです。よく驚いた時に『ひゃー!』って言ったり、失敗したら『やっちゃった。』なんて言っていて。」
そうだったんですね!あの可愛らしいセリフは、シリーズを通してもとっても印象的ですよね。あれ、そういえば『あしたうちにねこがくるの』の中にも「ひゃー、かわいい」というセリフがありますね?
「あ、そうそう。これもそうですね。」
それから思い出したように・・・
「そういえば、娘が小学生の頃に移動教室をかねて山登りに出かけた事があったんです。その日に担任の先生が宿泊先から家に電話をかけてくださったんです。どきっとして、『何だろう?』 と思っていると、先生が『実は・・・娘さんが、猫を拾ったんです。』って言うんです。『それが・・・とっても可愛いんです。2匹なんです。』って(笑)。」
娘さんは猫を連れて帰りたいと泣くし、校長先生に確認をしなければならないし、ミルクをやらなければならないし、ちょっとした騒動になっていたようなんです。
「それで、家でわくわくしながら待っている間に私が考えたんですよね。『どんな猫なんだろう?』『山にいた位だからすごく弱ってるのかな?』『目は何色なんだろう?』なんて。そしてたらすご―く可愛かったんです!!まさに『ひゃー、かわいい!』です。あの絵本は、実はこの出来事がきっかけで生まれたんですよ。」
そのまま2匹の猫は石津さんのご家族になられたそうです。
●最後に・・・
───絵本作家になられて良かったと思われる事はありますか?
「もちろん、自分の作品が本として出来上がるというのはとっても嬉しいことです。でも、何よりも・・・これは答えにはなっていないかもしれないんですけどね。絵本の仕事を始めてから、この業界の方達が本当にいい方ばかりなので嫌な思いをした事がないんですよね。絵本作家の方にしても、編集の方にしても。とてもいい方に囲まれて生活できるというのが、本当に幸せなことだなあって思うんです。」
───絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いできますか?
「絵本っていうのは一冊ずつ完結していますよね。でも、例えば自分の好きな猫の絵本であったり、乗り物の絵本であったり、テーマを決めて読んでみたり。そういう風に系統をつけながら読んでいくと、世界が広がっていって楽しいですよね。
それからなぞなぞだったら、お子様に読むだけでなく、自分自身も一緒に考えたりして楽しんでほしいですね。更に自分でもなぞなぞをつくってみたり、回文や折句なんかを考えてみたり、参加してみる事を是非おすすめします。
他にも、例えば今回ご紹介した『かわいいことりさん』の本を読んだ後だったら「鳥を見つけてみよう』とか、「サラちゃん〜」だったらバスに乗ってみようとか、シーツでおばけになってみようとか、絵本を読んだ後、日常生活に結び付けて考えてみると楽しめるかもしれませんね。」
なるほど、そんな風に絵本を楽しめるのも実際に子育てを楽しんでこられた石津さんならではなのかもしれませんね。
「それから大きくなってから絵本を読む事によって、子どもの頃の感覚を思い出せるという効果もあると思うんですよね。自然体だった頃の感覚を思い出したり、小さい頃に親に読んでもらって嬉しかった時の感覚を思い出せたり。そういう意味では、親子で絵本を読む時間っていうのは子ども達にとっては宝物のような、本当に大切な時間なのでしょうね。」
ありがとうございました!
色んな方との出会いがとっても嬉しいとおっしゃる石津さんですが、話していると、こちらの方が何だか幸せな気分になってくるんです。きっとまわりの皆さんもそう思われているのでしょうね。ついつい長い時間お話をお伺いしてしまいました。
最後に記念にパチリ!
この後、ご一緒にお茶までお付き合い頂いたのでした・・・。









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