
亡くなった姉との一晩の出来事を通して、静かに「死」と向き合う絵本。

注目の新刊をみどころとともにご紹介します!
気になった作品をぜひチェックしてみてくださいね。
● 耳に届いたのはお姉ちゃんの声?
ある日、主人公「ぼく」の耳に届いた、ふしぎなささやき声。
「ねえ、あたしのおとうと!」
それは、ぼくが生まれる前に亡くなった、お姉ちゃんの声だった。
「いっしょにいこうよ」
「夜になったら、むかえにくるからね!」
お姉ちゃんの声に誘われて、ぼくはその夜、
お姉ちゃんと一緒に、自転車で出かけて行った……。
ベルギーの作家シェフ・アールツが自身の子どもの頃の経験を元に描いた本作は、
亡くなった姉と弟の一晩の冒険を通して、
大切な人を亡くした悲しみに暮れる人々の心にそっと寄り添うように、
静かに物語を紡いでいきます。
そして、画家マリット・テルンクヴィストの手によって描かれた
幻想的な雰囲気が漂うファンタジー世界は、
この世ではない美しさと悲しさを醸しながら、
どこか明るく、優しく幼い姉弟を包み込んでいるように感じます。
オランダの銀の石筆賞、ベルギーのボッケンレーウ賞を受賞し、
国内外に高く評価された絵本がついに日本でも発売となりました。
「死」について考えるとき、そっとそばに置いておきたい一冊です。
(木村春子 絵本ナビライター)
「おねえちゃんにあった夜」
文:シェフ・アールツ
絵:マリット・テルンクヴィスト
訳:長山さき
出版社:徳間書店
おねえちゃんはぼくが生まれる前に亡くなった。だからぼくは、おねえちゃんにあったことがない。でもある日、ぼくはふしぎな声をきいた。「ねえ、あたしのおとうと! 今晩いっしょに、自転車ででかけようよ」そして夜になると、ほんとうにおねえちゃんが現れて…? 子どもが「死」を受け入れていく過程を、詩的な文章と叙情的な絵で描き出し、ヨーロッパで大きな話題を呼んでいる絵本。オランダ・銀の石筆賞、ベルギー・ボッケンレーウ賞受賞作。
美しい余韻を残す絵本
亡くなったお姉ちゃんが弟に会いにきます。
軽すぎず、重すぎず、死と向き合うことができる絵本です。
まだ自転車に乗ったことのなかったおねえちゃん。
あそこにいたんだと病院を指さす場面。
ところどころ切なくて、でも弟は弟なりに受け入れていきます。
はじめは暗い色調だった食卓が、最後のページはちょっぴりにぎやかな食卓にかわっています。
お姉ちゃんの死は決して忘れることはできない、乗り越えることはできないけれど、時がたって家族が前に歩み始めたことがわかるページです。
(ミキサー車さん 40代・ママ 男の子1歳)