童話には、言葉を話す動物なんてのがいろいろおりますが、落語にでてくるそれといえば、犬、猫、キツネにそれから、たぬき!
たぬきというと、ふしぎな力で人を化かすと決まっておりますが、『ごんべえだぬき』の子だぬきは、ただのイタズラ好き。
やってることは、いわゆるピンポンダッシュと変わりません。
山里はずれに住む、ごんべえさんという人情家。
子だぬきときたら、眠りにつこうとするごんべえさんの家の戸を叩き、「ごんべえ、ごんべえ」とやかましくさわぎます。
たぬきのあつかいを心得ていたごんべえさん、うまくして子だぬきをとっ捕まえてやりました。
夕飯はタヌキ汁だの、毛皮はおれがもらうだの、と村人が喜ぶものですから、子だぬきは真っ青!
ところが、そこはごんべえさん、情けをかけて逃がしてやろうと村人をいさめます。
しかし、二度と悪さをしないように、軽くおしおきをしよう。
ごんべえさんがそういって取り出したのは――
全15巻で完結した「川端誠落語絵本シリーズ」より、画風もあらたに復活した新シリーズの2作目です。
落語「ごんべえだぬき」といえば、童話のような雰囲気のある、ファンタジックであたたかな演目。
絵本とはとくべつ親和性が高いのではないか、と思って、ページをめくってみれば大正解!
落語として楽しんでいたときには、どこか間が抜けていて、生意気な小僧っ子としてイメージされていた子だぬきが、絵本になって愛らしさ300パーセント増しに“化け”ています。
また、あとがきにはこうあります。
「落語はオチで切って落としますが、絵本には裏表紙があります。オチのオチ」
そうして、これしかないだろう、という絵を裏表紙に描いたという作者の川端誠さん。
なるほど、なっとくの二段オチ!
ごんべえさんたら、人情あふれすぎでしょう!!
落語にはじめて触れる人にはもちろん、「ごんべえだぬき」は何度も聞いたよという人にもオススメできる、絵本ならではの楽しみが詰まった一冊になっています。
(堀井拓馬 小説家)
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山里のはずれに住んでいる、ごんべえさん。
ある日の夜、布団にくるまってうとうとしていると、
表の戸を、ドンドン叩き、「ごんべえ、ごんべえ」と呼ぶ声がします。
戸を開けると誰もいません。
戸を閉めてまた布団に入ると、「ごんべえ、ごんべえ」と呼ぶ声がするので、
そっと戸に近づき、ガラッと開けると、子だぬきが転がり込んできました。
たぬきをつかまえて、なわでしばったごんべえさん。
「二度とわるさしねぇようにな」
と、こらしめてやることに……。
いたずら好きのたぬきはいったいどうなる??
子供も大人も大笑い!日本語の楽しさが詰まった「落語」の世界。
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