
表紙から読み始めると、あれ?! 途中でユニークなつくりになっていることに気がつきます。 表紙から読むと羊飼いの物語。 裏返して裏表紙から読むと、狼の物語。 それぞれの立場から見る「わたしのやま」が語られます。
ふたりが見ている山は同じはずなのに、その風景はかなり印象が違います。 視点が違うと、同じものも違う意味を持つのです。 でももっと不思議なのは、それぞれのセリフが、一言一句同じだということ。 訳者の谷川俊太郎さんは、 「人間の立場と狼の立場が、<いのち>の眼で見れば同じという真実を、テキストとレイアウトのアイデアに溢れた工夫で、シンプルに描き出しているところが新鮮です。」 とコメントしています。
「人間にとって、きけんってなんだろう?」 「オオカミがおそれるものは?」 「人間とオオカミは、敵なの?味方なの?」 と、いろいろ考えさせられる作品です。 他者の立場になってものを考えるという体験は、子どもにとっても大人にとっても大切なこと。 ぜひ子ども大人も一緒に読んで、大いに語り合ってみてください。
(出合聡美 絵本ナビライター)

一見、相対する羊飼いと狼の同じ山でのそれぞれの生活を描き、敵か味方か、正義か悪か、といった単純化したフィルターを外して物事を見ることの大切さを伝える。訳者は日本を代表する詩人・谷川俊太郎氏。羊飼いの視点と狼の視点で表・裏表紙の両サイドから読むことができ、しかも文章は両サイドとも同じもの。一種の仕掛け絵本としてのユニークさもある。フランスでは『アンコリュプティブル賞』(2019−2020)を受賞。

顔の中に風景画が描かれているという、おしゃれな作りのイラストが印象的な作品。
表紙から読むと羊飼いの、裏表紙から読むと狼の目線で描かれる「わたしのやま」のおはなし。
前からも後ろからも読める絵本って、他にもありますが、こちらは、どちらも添えられている文章自体も同じであるというところが驚きです。同じ景色でも、同じ文章でも、立場が違うと違うものが見えるんですね。
味わい深い作品でした。
(クッチーナママさん 50代・ママ 女の子20歳、女の子18歳、男の子15歳)
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