いつもなら字のない絵本はあまり好まない娘ですが、この本には何か特別なものを感じたようです。私もどちらかと言うと、お話を読みながら、娘との会話も同時に楽しむ、という読み方のほうが好きなので(絵だけの本は、どんなことを話そうかな?と、ちょっと考えてしまったり、逆に自分の解説ばかり取り入れてしまうと、せっかくの子どもの自由な発想を妨げてしまう結果にもなりうるので、難しいな、と思ってしまうこともあり・・・)この絵本はどうかな?と、期待半分、不安半分で借りてきたのですが、やはり本当に素晴らしい絵本というのは、絵の物語る力が大なんですね。
娘も、「この本が1番好き」と言いながら、毎晩最後の1冊に選んで、布団の中にもってきます。あっと驚くような展開があるわけでもなく、列車の狭い空間の中での淡々とした時間の流れを追っているだけなのですが、小さな子どもの心をぐいぐいとひきつける何かがあるのでしょうね。加古里子さんの「ゆきのひ」や「かわ」を読んだときにも、同じような反応が得られ、嬉しい驚きがあったのを思い出します。細かい描写は、加古さんの絵本とも共通していますね。親の世代としては、昭和をなつかしむ気持ちがわきあがってくる絵本です。
それぞれの乗客にドラマがあり、人間ウォッチングのおもしろさのようなものも感じますが、娘は単純に、男の子がトイレでおしっこをしているところや、お母さんが赤ちゃんのおむつを替えている場面が、何より好きなようで、いつも嬉し恥ずかしの顔で笑っています。