さあ、準備はいいですか。船に乗りこんで、旅に出発しましょう! 本を手にした瞬間に、ネコ好き&冒険物語が大好きな私の血は騒ぎます。船の舳先にずらり並んだ猫と優しそうなおじいさんの顔。これは読まずにはいられません。
ネコ船長の船、カルロッタ号に乗っているのは、船員よりネコのほうが多いくらいです。商用で出かけた地で、珍しい品物を現地のみすぼらしいネコに交換してしまう船長さんは、周囲の人から変わり者と思われています。
そんな船長さんの夢は、世界中のあらゆるところを旅すること。ある日「旅に出る時がきた!」と強く思い、いつもと違う方向へと向かいます。
危険な嵐を乗り切って、ようやくたどりついたのは、小さな女王様がおさめる島です。ここにはネコが一匹もおらず、女王様は初めて目にするかわいいネコたちに大興奮! さらに、その島で困っていることを、ネコが解決できることがわかります。
小さな女王様は、船長にネコと宝石を交換しようと持ちかけます。ネコたちも狭い船内より、この島が気に入ってのびのび暮らすことを選んだのです。ネコたちとわかれた船長は、さびしい気持ちをこらえて、旅をつづけるため再び海へと出るのですが……。
躍動感と透明感にあふれた絵は、眺めていてなんとも贅沢な気持ちになります。そして、風変わりでマイペースで温かい船長さんとネコたちの絵が素晴らしいです。一緒にいるときの、お互い安心しきった空気が伝わってきます。猫たちの動きや仕草、表情がリアルで、猫好きな人はもちろん、動物好きも大満足まちがいなしです。
すごいのは絵だけではないですよ。物語はくるんくるんとひねりをきかせながら、意外な展開をみせます。
船長さんの持ち帰ったたくさんの宝石を見た他の商人たちはどうしたでしょうか? 船長さんは夢のとおり世界中を旅してまわることができたのでしょうか? 島に残ったネコたちはどうなったのでしょうか? そして、船長さんが気づいた本当に大切なものとは?
絵本を読んで確かめてみてくださいね。そして、最後のページ、作家の謝辞の言葉もお見逃しなく。思わず笑顔が大きくなりますよ!
(光森優子 編集者・ライター)
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