吹雪が3日も続き、えぞふくろうは目をじっとつぶったまま、巣穴の中で動きません。
森の動物たちはみな、お腹をすかせながら吹雪がやむのを待っています。
ようやく吹雪がやみました!
冴え渡った空の下、枝につもった雪がさまざまな形をつくる立木、からすたちががあがあと鳴きながら死んだ動物に群がっている姿。
食べるものが少ない厳しい冬は、たくさんの動物が死ぬのです。
お腹をすかせたえぞふくろうは、夜になるのを待てずに、食べ物を探しに飛び立ち、空の上から森の様子を見つめます。
雪原に出てきたねずみを、音もなく飛んでつかまえ、木の上で何日ぶりかの食べ物を食べます。
空には月がのぼり、しだいに日暮れて夜になり、静かな森の奥から何かの音が聞こえてきます……。えぞふくろうが耳をすます、不思議な音は……?
えぞしかが移動する音、えぞももんがが飛び回る音、雪原の上でのゆきうさぎがはねる音。
動物たちが愛を交わす姿を見て、仲間がいないさびしさを感じた若いえぞふくろうは……。
木につもる雪がさまざまな形を作り、リアルな生き物の形にさえ見える描写は、北海道の作家、手島圭三郎さんならでは。
月明かりの青い影。えものをとらえるえぞふくろう。えぞももんがが枝先から飛ぶ姿……。木版で彫られた絵は、どれも驚くほど力強く繊細です。
太古の昔からくりかえされてきた、寒さに耐えて冬を生きる、生き物の姿をとらえた重みのある絵本。
自然の厳しさと、気象によって不思議な形があらわれる自然のおもしろさや、愛を交わす動物たちのよろこびが描かれ、心を動かされます。
えぞふくろうが結婚相手を見つけて近づいていくときの、愛らしい表情は必見ですよ。
雪に覆われた森の、しんとした世界。そしてその中で静かにつたわってくる不思議な音。
絵本でありながら、雪の森の静けさや不思議なさわがしさが、絵から「音」のように伝わってくる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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