川辺に広がる田園風景。田んぼと自然に囲まれて、いろんな生き物が暮らしています。古くからある村々が、それぞれに田んぼを耕しながら平和に暮らしていけるのは、ぜんぶ用水路のおかげ! 近くを流れる大きな川から田んぼに水を引くために、カエル村、ナマズ村、イシガメ村の三つの村が、手を取り合ってつくったものです。
その甲斐あって住みやすくなった土地には、引っ越してくるものも増え、あたらしく村もできました。ところが、住むものが増えれば、トラブルも起きるもの。
「ねえ、あたしたちの むらにも、みずを ひきたいよねえ」
用水路から少し離れたところにあるイタチ村とカニ村が手を組んで、用水路に手を加えてしまいます。それがまさか、川の恵みをめぐる、大きな水騒動に発展するとも思わずに──。
カラフルな生地と、それを着こなすふさふさの毛並みがかわいらしい、イタチ。黒い着物に、青いつばさがよく映える、カワセミ。個性的な色模様の野良着と、それを身にまとった生き物との組み合わせがオシャレです。
いっぽうで、やわらかなタッチで描かれる田園風景はほっこりとあたたかく、なつかしい気持ちにさせてくれます。そのコントラストが、本書の魅力!
あたらしい村とのあいだに起きたいさかいを解決するため、用水路を作り変えることにした古い村の面々。これで万事めでたしめでたし……となるはずが、水騒動は終わりません。
川の水を損得なく分けるには、どうしたらいいものか。頭を悩ませていたカエルに思わぬアイデアをさずけたのは、ボロボロになった水桶!?
現実の田んぼでも大活躍。川の水を平等に分配するための、カエルの発明にご注目!
(堀井拓馬 小説家)
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大きな川から用水路をつくって水をひき、米作りをしてきたダルマガエルのとうきちや、イシガメのがんじい。
まわりでくらすイタチのおりょうや、カニのもくずは、自分の田んぼにまでは水がこないので、おもしろくありません。そこで、むりやり水の道を変えてしまいます。さらには新しい村もできたりして、このままでは水のとりあいで村同士がけんかになってしまいます。
そのとき! てんびんで水を運びながら、とうきちはあることを思いつきました。
「こうすりゃ、まるくおさまるんじゃなかろうか」
そのアイデアをもとに、みんなで力を合わせてつくりあげたのは……。
農業用水を平等にわける施設である「円筒分水」をモチーフに、水をめぐって生きものたちがくりひろげる騒動をえがく、創作むかし話です。
円筒分水とは…サイフォンの原理を利用し、下側につくった水路から、上につくった円筒型のしかけに水をふきあがらせることで、平等に水をわける施設。全国で200カ所以上あるともいわれている。
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