夜の終わり。美しく輝くまんまるお月さまが、森の中に静かに着陸。……え!? 着陸するの? そんな驚きの展開からスタートするこの絵本。
もっと驚くのは、月の扉がガチャっとあいて、中からうさぎのパイロットが出てくること。向かった先は「うさぎかぶしきがいしゃ」。どうやら月が空にのぼるのは、彼らの仕事のおかげらしい。そこには今日も一日よく働いた社員が待っていて、みんなで楽しいごはん。よく食べ、飲んで、うたって、そんなにさわいで大丈夫? 気がついたら……。
作者は前作『へび ながすぎる』でも、その不思議な世界で魅了してくれた絵本作家ふくながじゅんぺいさん。いつも眺めていたお月さまの仕組みが、実はこんなことになっているのかもしれない。時には思わぬ動きをしている日だってあるのかもしれない。今作でも、絵本を読んでいるうちに想像がふくらんでいき、ワクワクした気持ちでいっぱいにしてくれます。
もしかしたら、私たちの知らないところで世界をこっそり支えてくれているのは、このうさぎたちかもしれない。ちょっぴりシュールな雰囲気で始まりながら、当の本人たちはいたって無邪気で可愛らしくて。そのギャップもクセになってしまいそう! 秋の夜長の空想時間にぴったりな、可笑しくてチャーミングな「月の絵本」の登場です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む