2019年ノーベル経済学賞受賞のエステル・デュフロ教授が作った子ども向けの絵本シリーズ(全5巻)です。デュフロ教授は、世界の「貧困」を解決する方法を「経済学」で見つけ出そうとしている開発経済学者です。
日本語版は、世界じゅうの国々と協力しあい、開発途上国などを手助けしている日本政府の機関、JICA(独立行政法人国際協力機構)が監修しています。
3巻は「高齢者」がテーマ。年金制度がない国で暮らす、家族がいない孤独なお年寄りコンウー。とても貧しく、村のはずれでぼろぼろの家に住んでいる。ぶつぶつとひとりごとを言うせいで、村人から「魔女」とよばれて避けられている。ニルやアフィアの友だち・ビビールも恐れていたが、あるときに魔女・コンウーと仲よくなる。そして、高齢者がひとりでも暮らせる方法を村のみんなと探ることに! 貧困の解消や高齢化社会について、気づきを得られるストーリーです。SDGs目標1「貧困をなくそう」と目標10「人や国の不平等をなくそう」の教材にもどうぞ。
◆シリーズ紹介◆
絵本の舞台は、地球上のどこかにある村。村人たちは貧しいながらも、大人も子どもも助けあって暮らしています。主人公の子どもたちは、同じ小学校に通っている友だちです。中心人物のニルは、元気いっぱいの女の子。1巻と5巻で主人公をつとめ、全巻に登場しています。
各巻には、教育、医療、高齢者、環境、ジェンダーというテーマがありますが、これらのテーマが「貧困」と関係してストーリーが動きます。子どもたちは率先して助けようとしたり、まわりに訴えかけたりして解決に導こうとがんばり、大人も行動をはじめます。状況がよいほうに変わっていくところで、ストーリーは終わります。
日本の子どもには「貧困」がつかみづらいかもしれません。そのため巻末に、理解を助ける日本版オリジナルのページを用意しました。ストーリー内でのできごとや発言の解説をするなかで、デュフロさんの「経済学的視点」のコメントもあり、興味深く読むことができます。監修者JICAとの会話形式で紹介しているので、テンポよく読むことができます。子どもたちに話しあってもらうためポイントの提示や、各巻のテーマに関係した「世界各地でおこなっているJICAの取り組み」も知ることができ、視野を広げられます。さらに、本書を使った小学校での指導例も掲載しているので、学校現場でも大きく活用ができるシリーズです。
作者のデュフロ教授は「子どもだって、なんでだろうって疑問に思うし、どうしたらいいのか、考えられる。それにやってみようって行動もできるんだから!」と、子どもの能力を引きだす言葉を贈っています。貧困の問題を知り、解決につながる行動を起こしほしいと期待しているのです。
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