朝露の中、ほかほかいい気持ちの土の中で目を覚ましたのは、サトウキビ。耕されたサトウキビ畑にやってきたセキレイが声をかけます。
「ことしも おいしい こくとう できると いいですね」
サトウキビは、山風がふく畑で、さっちゃんたちに手をかけられ、太陽の光をたっぷり浴び、秋の台風にも耐え、ぐんぐん背がのび大きくなっていく。お正月が明ければ収穫の時期。刈り取られたサトウキビは山の黒糖工場へ。そうして、いよいよ黒糖づくりが始まるのです。本当にこの青々としたサトウキビが、甘くて美味しい黒糖へと変身するのでしょうか?
「よろしくおねがいします!」
ローラーを通ってぺちゃんこに搾られたサトウキビは、薪をくべられ長い長いおふろの時間。焦げないよう見張られていると、だんだんどろどろしてきて……。
愛媛のサトウキビ畑と黒糖工場を舞台にし、黒糖が完成するまでの過程を「サトウキビの言葉」によって丁寧に語られるこの物語。なにしろ、前半ではまだまだ草みたいな味がするだけだったサトウキビなのです。後半になると一気に姿を変え、緊張感が張り詰める中で劇的に変身していくその様子に、誰もが釘付けになってしまうことでしょう。
作者は作家・作詞家として活動しながら、故郷の愛媛で一年の半分を農家として過ごされている高橋久美子さん。そこへ何度も取材で訪れ、黒糖づくりの作業を経験した上で絵を描かれたのは画家・絵本作家の加藤休ミさん。煮えたぎり、まぜられながら黄金のように輝いていく黒糖の色は、濃密で上品。そして生命力に溢れているのです。
たくさんのサトウキビからとれる黒糖はごくわずか。栄養たっぷり、食べれば思わず「ぴょ〜」となる! さあ、めしあがれ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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