ひとは予期せぬ病いや障害により,自分と身体との関係性を喪失し,生活や社会とのかかわりを失い,奪われる。末梢神経・筋骨格系の障害による感覚運動機能の障害,中枢神経性の障害による麻痺や身体失認,切断後の幻肢,摂食障害,離人性障害など,心身の障害は,すべて自己と身体との関係性の喪失による障害といえる。その自己と身体の関係性の喪失により,ひとは生活や社会とのかかわりを失う。
作業をもちいる療法は,作業を介した身体との,そして身体を介した生活・社会とのコミュニケーションと,作業という共有体験をコミュニケーションの基盤とした「ひと(対象者)とひと(治療・援助する者)のコミュニケーション(治療・援助関係の構築)」という二つのコミュニケーションプロセスから成りたっている。
本書ではまず,「T章」で前者の「自己と身体・生活とのコミュニケーション」について,身体の意識,身体観,身体図式と身体像,作業と脳内現象などから身体と作業の関係を見直し,病いや障害により失われた身体や生活・社会との関係性を取りもどすプロセスにおける,作業を用いた療法の治療機序について,生活機能モデル(ICF)を基盤にわかりやすく解く。
「U章」では,後者の「作業療法における治療・援助する者と対象者とのコミュニケーション(治療・援助関係の構築)」について,コミュニケーションのしくみ・手段を明らかにし,臨床におけるコミュニケーションのコツを紹介する。
「日々の章」は,日々の臨床における対象者との出会いとかかわりのはじまり,そしてどのようにコミュニケーションが展開し,治療・援助関係が生まれるかを,事例によって具体的に紹介している。
本文の内容をコンパクトに表現した「身体図式と道具・身体像の関係」,「関係性を回復するプロセス(作業―生活機能モデル」といった図表は,それだけでも有用である。
作業をもちいる療法の治療機序と治療関係の構築のための臨床の書としてはもちろんこと,これからの作業療法を考えるための新たなモデルと視点を示したテキストとして,必読の書である。
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