自らの昭和三陸大津波の被災体験を紙芝居にして、地域の小中学校に読み聞かせてきた田畑ヨシさんが、今回の東日本大震災による再度の津波体験に本としてこの「つなみ」を再刊したことが新聞記事に出てから、手に入れたかった本です。
明治29年の「明治三陸大津波」に襲われながら助かったおじいさんが語る、津波の教訓を聞いて育ったよっちゃん(田畑ヨシさん)は、津波の時に山に逃げなくても家の大きなかまどの上にいたら助かるだろうなと思っていました。
そのよっちゃんが8歳のとき、昭和8年の「昭和三陸大津波」を被災しました。おじいさんにとっては2度目の津波。
やっとの思いで山に逃げて助かったおじいさん、よっちゃんでしたが、お母さんは逃げる際の怪我がもとで亡くなってしまいます。
昔のことですからあまり多くの家並みはなかったし、絵も児童画らしく単純化されているように思います。
ただこの絵を紙芝居にせずにはいられなかった田畑ヨシさんの悲しみが、素朴に、じっくりと伝わってっくるお話です。
田畑さんはこの「つなみ」の読み聞かせを続け、70年過ぎた時、犠牲者を弔うための「海嘯(つなみ)鎮魂の詩」を作って、津波の悲惨さを訴え続けました。
ところがこの3月11日、田畑さんは2度目の津波を経験し、家は流されてしまいました。天災は忘れたころにやってきて、防ぎようがなかったのです。
ただ、逃げ延びた人たちはかつての津波による教訓を生かすことができたのでしょう。
内容もさることながら、この絵本には様々な思いが込められています。田畑さんの詩。田畑さんの読み聞かせを復活させるに至った思い。今回の津波の記録。写真。中学校生徒会長の思い。
いろいろな物が、この本を膨らませています。
紙芝居の絵のそれぞれに添えられた解説。文章は英語訳も添えられています。
今回の津波を忘れまいという思いと、犠牲を繰り返すまいという願いが込められています。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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