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大市の前夜、吹きすさぶ嵐の中で老いた馬と飼い主とが再会します。 一度は見捨てた愛馬への温かな気持ちは甦るのでしょうか? 風の魔女とニルスとが、じっと見守っています。
『ニルスのふしぎな旅』の長編を息子に読み聞かせをした時に、主人公はニルスなのにニルスだけでなくニルスが立ち寄った場所の人物や動物が主要人物となりお話が動いていくのが不思議なことの一つでした。
先日、菱木晃子さんのお話をお聞きして、スウェーデンの地理を子どもたちに伝えるための教科書として作られたということをお聞きしたことで、ニルスの背景がわかりました。
たまたまこのシリーズ息子に読み聞かせをすることができました。6冊読んで私が一番好きなのはこのお話だと思いました。
父が亡くなっても父のやってきた通りに生きようとする35歳の男の前に、若い頃に飼っていた馬と父が不幸にしてしまった家族との再会と出会いがあります。
それを静かに見守っているのが魔女カイサとニルスと男の母親です。
「母親はつくづく、男というのはいつだって、自分の心の底にある正直な気持ちを話せないもんなんだ、と思いました」というくだり、同じく息子を育てている母親でもある私にも思いあたることがあり、なるほどと思えました。
絵本6巻を読んで思うことは、近代化の並みの中で豊かさ便利さを追いかける生活の中で見失われてしまった人の心でした。
菱木晃子さんは、ニルスの入門編として読んでほしいとおっしゃっていましたが、確かに美しい絵や解説にある写真と共に、ニルスの物語がより一層理解できる気がしました。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子12歳)
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