雨の日に傘をささずぬれるのも楽しい。「春雨じゃ濡れていこう」って言葉もあるよね。こどもたちは雨の日のお散歩が大好き。そうそうピータースピアの「あめ」っていう傑作絵本もありますよね。そんなこどもたちが6才になったら読んであげたいのがこの本。
シランさんは普通の会社員。休みの日には友だちとテニスなんかを楽しんでいます。でも、ある日警察犬を伴って大勢の人がシランさんを拘束します。理由は「雨の日に傘をささないから」。そんなバカな!雨の日に傘を差さないのなんて、その人の自由じゃないか! そう思いますヨね。でも現実に世界中に、「戦争はいけない」って言っただけで何年も牢獄に閉じこめられたひとがいます。何にもしていないのに、裁判さえしてもらえず何十年も牢獄に入れられている人がいます。
アムネスティという団体は「そんなバカな!」という理由で収監されている人々=良心の囚人の存在を知らせるという大切な活動をしています。この本もアムネスティの依頼で谷川俊太郎さんがテキストを書かれました。いせひでこさんは、それこそ何度も何度も書き直しをして余分な書き込みを削り、こんな硬質な画面に仕上げられたそうです。このテーマを谷川さんと描くことが出来たことを大切に思っているというコメントを読んだことがあります。
硬派の本ですが、美しい。だからこそ伝わる真実があるでしょう。私は最後のページの「閣下の国の美しい音楽を聴いています」という部分を読むたびに涙があふれます。美しい物を作る人の心をこそ信じて、武力を通じずに訴えることの大切さを、こどもたちに伝えたいと思います。