「マッチ売りの少女」の絵本は色々ありますが、少女の死という悲しさのためか叙情的に捉えた絵本が多い中で、この絵本はあまりに衝撃的で異色な作品です。
パツォウスカーは、マッチをするという行為の中に、自分なりの視点を置いて、この物語を解析したのでしょうか。
物語の中で、2箇所赤文字にされたところがあります。
初めは、マッチをする「シュッ」という音です。
そういえばこの絵本はマッチというものと、その炎を強く意識した仕立てになっています。
マッチの即物性と、炎にゆらめく観念的な世界で、少女の心と現実をアートしていくのです。
絵の中で赤と、鏡のように多用される銀が挑発的です。
銀色は光を受けると反射して目に飛び込んできます。
少女の見た食卓の光景は、少女の生活を様々に乱反射したに違いありません。
物語の中の赤文字は最後に現れます。
「あたらしいしあわせな年」という、祈りをこめた言葉でした。
最初の赤文字のところで描かれた少女の顔は単色でつらそうでしたが、最後の赤文字のところでは、同じ絵に様々な色が加えられています。
そしてその色は本そのものを包みこんでいました。
心で感じる「マッチ売りの少女」だったのだと、その時理解しました。