心あたたまる、血の通った絵童話集
この絵童話集は、最初、元祖アンパンマンのストーリィを知りたくて、手にとりました。でも、読み始めたら、どの作品も読み終えるのが惜しく、こんなに血の通ったメルヘン集を読んだのは初めて!と思えるほど、短篇童話全十二作の一つひとつが心にしみました。
一緒に読んだ10歳のふたりの女の子たちは、ユーモアいっぱいの「アンナ・カバレリイナのはないき」に爆笑し、「クシャラ姫」の結末の意外な大どんでん返しに拍手していました。
切ない童話に思える「アンパンマン」「キュラキュラの血」などからも、自らを犠牲にして他者を助ける深い愛が伝わります。戦争の悲惨さを描きながらも、本書全体に流れる作者やなせさんの目指す正義は、驚くほどあたたかです。
「まえがき」と「あとがき」が面白く、秀逸なことも見逃せません。まずは大人にお薦めしたい、ふしぎな絵本です。
投稿日:2025/04/24