「荒川」「隅田川」と言えば……?
東京の夏の風物詩を連想して「花火!」と答えてしまいそう。
表紙には、まさに東京スカイツリーから川を見下ろす絵が描かれています。
じつは「荒川」の水源は、海からはるか173キロを遡った高い山の上。
奥秩父山系の甲武信ヶ岳から流れ落ちる沢から川となり、埼玉県をぬけ、途中で「隅田川」にわかれて東京湾に注いでいるのです。
これまで全7巻が出版されている「日本の川」シリーズの1冊。
小さなお子さんでも読めるひらがなの川の絵本に、専門家もびっくりの内容が詰まっています。
その場所は『たまがわ』『ちくごがわ』『ちくまがわ・しなのがわ』『よしのがわ』『いしかりがわ』『よどがわ』『あらかわ・すみだがわ』と全国に渡ります。
村松昭さんがライフワークとして描く「日本の川」シリーズは、鳥が空の上から地上を眺めているような美しい絵地図が特徴です。
地図を読み解くのが苦手な人でも大丈夫!
土地の起伏、森林や川のまがりくねった形、鳥や動物たち、駅、橋、建物など、まるごと“絵”として川の地図をあじわえます。
本書は、奥秩父の神さまとお使いの女の子が雲に乗って、空の上から「荒川」を案内します。
長い距離を抜けて、あちこち耳にしたことのある地名、駅名を抜け、いくつものダムを抜けて……ついに「いわぶちすいもん」の赤と青の水門で、「隅田川」と荒川本流にわかれていくのは、大人が夢中になるおもしろさ!
鳥瞰図を絵本で楽しむダイナミズム、ぜひあじわってください。
地図には、生き物のなかでも特にたくさんの鳥が描かれ、あちこちに桜並木が見えます。
お花見の季節に、夏はハイキングやバードウオッチング、花火で河川敷にいくときに。
本書を参考にして出かけていって、風景と絵本を照らし合わせてみるのも素敵な経験ではないでしょうか。
おじいちゃんおばあちゃん、そしてママパパと子どもたちが一緒に楽しめる、最高の遊びを後押ししてくれそうな絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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