古典作品をヒントにしてあらたに執筆されたアンソロジー、「古典から生まれた新しい物語」シリーズ。
『第三の子ども』と題された今作は、怖い話の短編集です……。
仙人さんと呼ばれるホームレスの老人が、ひとりの青年から暴力をふるわれているところにでくわした主人公。
なんとかその夜のことを忘れようとする主人公だが、不運にも青年と再会してしまい……
「仙人さん」
まるで初めからいなかったかのように、人の存在そのものを消し去ることのできる黒い消しゴム。
それを手に入れた少女は、邪魔者を消していくうちに狂気にとりつかれてゆく――
「マクベスの消しゴム」
ピアノのレッスンを休むために、ウソを重ねていく少年。
ピアノさえやめることができたなら!
その一心でウソをつきつづけてきたはずなのに……
「さよならピアノ」
三人の子どもを産んだとされる、古事記のコノハナサクヤヒメ。
ひとりは海を治め、ひとりは山を治め、しかし、古事記にその後の記述がない三人目の子どもは、いったいどうしたのか。
隠された神話に触れたとき、少女はみずからの血脈の秘密を知る――
「第三の子ども」
心がざわざわ……なんとも居心地の悪い読後感の四編。
オバケもの、怪談ものではなく、摩訶不思議な出来事の恐怖を描いた物語です。
なーんだ、オバケが出ないんならへっちゃらだぞ、なんて油断してると……ぞくっ!
人の心のありようが、やっぱりいちばんおそろしい……。
巻末の解説では、それぞれの元になった作品についてそれが収録されている書籍が紹介されています。
合わせて読むことでまた違った味わいで再読できる、二度もおいしいホラー集。
古典文学に触れるきっかけとしてもおすすめの一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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