たねこちゃんは、タンポポの綿毛の子。同じ花から綿毛になったきょうだいたちは飛び立つ準備ができていますが、いちばん小さい、たねこちゃんは自信がありません。「わたしの わたげは ちいさいし、たねも とても ちいさいもの。どこか とおくへ いって、はなを さかせるなんて、できっこ ないわ!」
お兄さんやお姉さんがあたたかな風とともに飛んでいってしまったあとも、ポツンと残り「ここにいる」と言うたねこちゃん。
ところが、スズメがたねこちゃんを連れて飛び立ってしまいます。風に吹かれて雨に流されて、たねこちゃん、かわいそう……? いえいえ、旅先で「こんな とおくまで、とんでくるなんて すごい こじゃ。たいしたもんじゃ」と褒めてくれるひとたちに出会うんですよ。
花なんて咲かせられないと思っていたたねこちゃんだけど、「だいじょうぶ。きみならできる」と励まされて……?
人には見向きもされないような、小さな綿毛の子と苔植物たち(!)を丁寧に愛らしく描いた絵本。作者は「どんぐりむら」シリーズ(学研)や「そらまめくん」シリーズ(福音館書店・小学館)、「くれよんのくろくん」シリーズ(童心社)などで人気のなかやみわさん。「科学」と「心の成長」をテーマに、本書を制作されたそうです。
のどかな風景の中で、ずっと眉をよせて自信なさげな、たねこちゃん。ちっとも目立たないけれど必死にがんばっているたねこちゃんの姿や、やさしく励ます苔たちに、子どもはほっとするのではないでしょうか。
ちょっぴり自信がないお子さんや、新しい環境に一歩踏み出すお子さんに、ぜひ読んであげてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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