『どろんこハリー』でおなじみ、短い足がキュートな黒ブチの犬のハリー。
さいきんハリーを悩ませているのは、高い声で歌うおとなりの女性。
ハリーはあの手この手でなんとか、おとなりさんが歌うのをやめさせようとがんばりますが、いえいえ、おとなりさんもめげません。
彼女の歌にたいする情熱といったら!
あげくにハリーが家族に怒られてしまう始末。
そんなある日、家族がハリーをチューバの演奏会につれていってくれて―
おとなりさんの歌でふきげんになったり、大好きなチューバの音色を想像してわくわくしながら耳をすましたり、いたずらをして無邪気に笑ってみたり・・・
ハリーの心のありようとその表情が、くるくると変わっていくのが楽しい一冊。
むすっとした表情を見せてピアノの足にかみつくハリーや、丸く身をたたんで眠るハリーなど、そのかわいいしぐさにも注目。
また、ハリーのきらいなおとなりさんの歌声と対比して描かれるのが、大好きな「ひくくてやわらかな音」。
ハリーがいかにもうっとりとそれに聞き入っている様子を読むと、まるでおいしい料理の感想を読んだときのように、「味わって聞いてみる」ということをしてみたくなります。
はたしてハリーは、静かな生活をとりもどすことができるのか?
物語の最後にハリーが聞く、「いままでで いちばん きれいなおと」とは?
ハリーのかわいい奮闘劇!
(堀井拓馬 小説家)
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