世界いち笑顔が素敵な人がいました。大きな声で笑ったり、そっと微笑んだり。「ぶわっはっは」と騒がしくしたとしても、ひとりで笑い出したりしても、まわりの人たちはみんな、幸せな気持ちになりました。
時には優しく、時には可愛く、わざとふざけている時も。女の子はその人の愛に包まれていたのです。けれど、ある日、その人の笑顔は消え……。
世界に残した大きな穴。イギリス出身で、子どもの本の編集者でもあるフェイ・エヴァンズさんの絵本デビュー作となるこのお話は、大切な人を失い、何を見ても、どこに行っても、心から楽しむことができなくなった女の子が、もう一度笑顔をとりもどすまでを描いています。
言葉はとてもシンプルだけれど、描かれるその笑顔が明るく豊かであればあるほど、見つめる女の子の表情が嬉しそうであればあるほど、その悲しみの深さを実感してしまいます。ベルリン在住の画家アイシャ・クリンガさんが描く二人の様子は、それほど魅力的なのです。
でも、だからこそ、まわりの大人たちが、ゆっくりと時間をかけて、あたたかく見守っていくことが大切なのでしょう。笑顔というのは、こんな風に、ふいにやってくるものなのかもしれません。
前を向いて歩けなくなったことがある人に。この世界に自分は一人だと感じてしまった人に。どうしても忘れたくない時間がある子の元にも。この明るく力強い一冊が届きますように。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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