アメリア 空飛ぶ野ネズミの世界一周
- 訳:
- 金原 瑞人
- 出版社:
- ブロンズ新社
絵本紹介
2025.07.11
野菜畑の下で暮らす野ネズミが、あることをきっかけに外の世界に関心をいだく。やがてそれは大きな夢へとつながっていき……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『アメリア 空飛ぶ野ネズミの世界一周』。シリーズ1作目の刊行から10年!「ネズミの冒険」シリーズ5作目の登場です。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
野ネズミは、自分の探している答えがみつかるような気がしていたので、あとをつけられていることには、まったく気づいていない。
空を飛びたい一心で飛行機を完成させた野ネズミを待ち受けていたのは、他の野ネズミたちからの心ない言葉と仕打ち。
「おれたちは穴掘りネズミだ。空を飛んだりするもんか!」
そんな逆風をものともせず、自分を貫きつづける野ネズミを主人公に、この壮大な物語を生み出したのは、ドイツの絵本作家トーベン・クールマンさん。世界35言語62を超える国で翻訳出版されている「ネズミの冒険」シリーズ待望の5作目です。
コミュニティの役割からはみ出し、より大きな世界に向けた冒険へ一歩を踏み出す野ネズミと重ね合わせているのは、100年以上も前に女性飛行士として活躍したアメリア・エアハートという実在の人物。何度も苦境に立たされる中、軽やかに問題を乗りこえていく姿は、時代を超えて、子どもたちに憧れの気持ちと希望を抱かせることでしょう。
そして物語に登場する有名なパイロットというのは、もちろんあの……。シリーズを読んできた方ならすぐにわかりますよね。最後にはアメリア本人の姿を見ることもできます。
すべて水彩で描かれているという、まるで映画を観ているような緻密で重厚な絵。緊張感のある場面と、愛らしくユーモラスな場面が交互にあらわれ、読み応えのある物語をぐいぐいと引っぱっていってくれます。
史実とファンタジーが織りなす物語。独自の世界が広がるこのシリーズは、どの本から手に取っても楽しめるはず。好きな物語からじっくり味わうことをおすすめします。
語られている物語とはまた別の
前へ前へと突き進んでいく健気で勇ましい主人公の姿が印象的なこの絵本ですが、その絵をじっくり見ていくと、ページをめくる手が何度もとまってしまうほど見どころがたくさん詰まっています。野ネズミの仕事場に貼られているスケッチの数々、アライグマが見せてくれた新聞の切りぬき、ライオンとの出会い、飛行機の設計図などなど……。語られている物語とはまた別の物語が見えてくるようです。子どもも大人も、くたくたになるほど想像力を働かせながら読んでくださいね。
この書籍を作った人
1982年、ドイツ生まれ。イラストレーター、絵本作家。幼い頃から絵を描くことが好きで、おもしろいものを発明したり、機械や蒸気機関車、飛行機についてのさまざまな歴史に夢中になる。デビュー作『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』(ブロンズ新社)は、2014年の発売と同時に20の言語に翻訳された。
この書籍を作った人
翻訳家・法政大学教授 1954年岡山市生まれ。訳書は児童書、ヤングアダルト小説、一般書、ノンフィクションなど550点以上。訳書にマコーリアン『不思議を売る男』、シアラー『青空のむこう』、グリーン『さよならを待つふたりのために』、ヴォネガット『国のない男』、モーム『月と六ペンス』、クールマン『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』、サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』など。エッセイ集に『サリンジャーにマティーニを教わった』、日本の古典の翻案に『雨月物語』『仮名手本忠臣蔵』など。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。