絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「ブルンミとアンニパンニ」シリーズマレーク・ベロニカさんインタビュー

「ブルンミとアンニパンニ」シリーズ最新作の原画を見せていただきました!

そうそう、みなさんにお見せしたくて、ハンガリーからもってきたものがあるの。
(マレークさん、おもむろにブルンミが描かれた写し紙(トレーシングペーパー)をたくさんとりだして机に並べます)

───わーっ、かわいい!!

絵本のもとになっている絵をもってきたのよ。この写し紙にアウトラインを描いたものをスキャンして、色指定したものをデザイナースタッフがコンピューターで色づけをしてくれています。

───ということは、これが本当の原画なんですね!?

そうです。70年代の作品は最後まで手で描いたけれど、近年の「ブルンミとアンニパンニ」シリーズはこれが原画。

───もしかしたら、これは本邦初公開ですか?!

ええ。普段は絶対にお見せしていないの。完成品とは違うので、がっかりされるといけないから。

(取材チーム一同、それぞれ原画をのぞきこんで、かわいい絵柄に夢中!)

───いつ描かれたものなんですか。見たことのない素敵なシーンがたくさん! 日本では出版されていない作品ですね。


あらまぁ、びっくりしちゃった。みなさん知っているものを見せているとばかり思っていたから!

───こんなに印象的なシーンがたくさんあるお話、見ていたら絶対忘れないと思います。だって、とてもかわいい!
まだ日本で出版される前の原画を見られるなんて、貴重ですね。

この最新作も、風濤社からそのうち発売されるんじゃないかしら。楽しみにしていてくださいね。

ハンガリーデザインの愛らしさと、子ども心をつかむ日常のお話

───「ブルンミとアンニパンニ」シリーズは、アンニパンニの服装や、家の中の調度品、色づかいに魅了されている読者も多いはずです! 家具はハンガリーのデザインなんでしょうか。

現代のハンガリーデザインとはまったく違います。私が描いているのは、1970年代のハンガリーの典型的なデザインなの。


テーブルと椅子、時計などのデザインに注目! (『ブルンミのたんじょうび』より)

───そうだったのですか。キャラクターだけでなく背景やこまかいところのかわいさに、うっとりしてしまいます。そしてもうひとつ。お話の内容が、日常を題材にしたものが多くて、私たち日本人にとっては、身近に感じるのです。

『おはなしよんで、アンパンニ!』はとくにテーマが日常的なことかもしれないわね。『おはなしよんで、アンパンニ!』を出版していちばん驚いたのは・・・子どもとこの本を読んだあるお母さんに聞いたのですが、本を読み終わった後に子どもが、「お母さん、何か手伝うことはない?」とたずねにくるのだそうです。
お話のなかで、ブルンミとアンニパンニが互いに助け合うからだと思うのですが、実際に本を読んだ子がそんな反応をしたと聞いて、すごく印象的で特別な本だと思っています。

おはなしよんで、アンニパンニ!
おはなしよんで、アンニパンニ!の試し読みができます!
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:マンディ・ハシモト・レナ
出版社:風濤社

「おはなしよんで、アンニパンニ」 「いまは、いそがしいから あとでね」 そういって買い物に出かけたアンニパンニ。 残されたブルンミは、アンニパンニのメモを見つけました。 きょうやることのメモをみて、ブルンミはお手伝い。 「あれれ? だれが やったのかしら?」


「ごめんね、ブルンミ! いそがしくて、かまってあげなかったね。おてつだいしてくれてありがとうね!」

───1冊1冊に子どもへのメッセージをこめているのですか? たとえば「助け合うことを学んでほしい」とか。

いいえ、ぜんぜん。意図して描いたものではないし、何かを子どもたちに学ばせようなんて、そんなこと何も考えていません。はじめにただ絵のイメージがあって、そこから、いいなと思うお話を作っていくの。
『おはなしよんで、アンパンニ!』にはもう一つの側面があって、お母さんたちと集まってお話をする機会があったのだけど、この絵本を読んだあとは、「ほっておいてごめんね。かまってあげられなくてごめんね」と必ず子どもに謝るんだという感想もお母さん側からもらいました。それも、とても不思議でおもしろいことだなと思います。

───私もすごく共感しました。「いそがしくてかまってあげられなくてごめんね」と母親の心で思ったり、けなげなブルンミの気持ちを想像して、泣けちゃったり。
もしゃもしゃちゃん』(福音館書店)にも共通しますが、マレークさんの作品には、よく、子どもたちの純粋な心と、それが理解されないときの悲しみ、でもちゃんとまわりに理解されるまでの様子が、優しい目線で描かれていますよね。なぜマレークさんには子どもの気持ちがわかるのですか。

それは、私が子どもだからよ(笑)。

───(笑)たしかに、マレークさんは子どもの心をもってる方なんじゃないかなって、お会いする前からそんな気がしていました!
ブルンミ、アンニパンニ、ねこの3人が家族のように暮らしているのですが、3人の関係がすてきなんですよね。アンニパンニは決してお母さんではなく、子ども。世話を焼かれるブルンミや、いそうろうのこねこも、それぞれ対等で、互いを思いやり合っているのがわかります。

そうね。『ブルンミとねこ』の中に、ねこがブルンミをなぐさめている絵があるでしょう。ブルンミにとってねこはとても仲のよい友だちなの。でも、ひどいことに、ねこにはずっと名前がなかったのよ。何冊も絵本が出たあとに、ある子に「どうしてねこには名前がないの?」と聞かれて、それでねこに名前をあげなくちゃと思って『ブルンミのねこ』が生まれたの。

───それでねこの名前が「クシュン」になったのですね(笑)。 

ブルンミのねこ
ブルンミのねこの試し読みができます!
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:マンディ・ハシモト・レナ
出版社:風濤社

おるすばんのブルンミとねこちゃん。 いっしょにあそんでいたけれど…… たいへん! ねこちゃんいなくなっちゃった。 「ねこちゃーん! ねこちゃーん! ぼくのところにきてくださーい!」 アンニパンニといっしょにねこちゃんをさがすブルンミ。 無事みつかるかな? 11冊目の〈ブルンミとアンニパンニ〉シリーズ!

アイディアをメモするときのラフスケッチがいちばんいいと思うし、いちばん好き

───あらためて、絵本を描こうとしたきっかけを教えてください。

それはとても興味深い質問だわ。そうね・・・、当時、ハンガリーでは、子どもたちは文章だけの物語を読むか、文字のない絵本を眺めるか、どちらかしかなかったの。だから、どうやったら、物語として成立する短い文章と絵が一緒になったものを作れるのか考えていました。文章と絵という、ばらばらになっていたもののギャップを、埋めたいと考えたの。

───えっ、マレークさんが最初に絵本を描かれたとき、そういったタイプのものはまだなかったのですか。

ハンガリーで、このスタイルの絵本を作り出版したのは、私が最初です。そのときは私以外、こういったスタイルの絵本を出していませんでした。ハンガリーでは、私の絵本は何度も増刷されていて、今でも子どもたちにとても人気があります。文字が読めない小さな子にはお母さんたちが読み聞かせをして、しばらくして子どもたちが学校で勉強して文字を読めるようになると、自分で本を読むようになります。

ハンガリーにはもう一人、カタツムリやテントウムシの絵本をだしているとても人気のあるBARTOS ERIKAさんという絵本作家がいます。彼女の絵本も人気があって、よく売れているわ。


これ、なんだと思います? 家の形の紙を開くと・・・
中はこんな感じ。ハンガリーでサイン会に来た子どもたちにあげている、ぬりえだそう。

そういえばほかにももってきたものがあるの。(バックの中からメモのように紙に描かれたラフスケッチをとりだします)
最近では、こうやって描いたスケッチを大切にとっておくのよ。これはとっても大事で、絵本のもとになるかもしれないアイディアのラフスケッチなの。(小さなラフスケッチと、写し紙に描かれた絵を並べます)


アイディアスケッチ。これが・・・
こんなふうに。
トレーシングペーパーに描かれ彩色されています。

こうやって、いつも絵本を作っていくのよ。もちろん最初のラフスケッチで描いたアイディアがそのまま最終的に絵本に反映されない場合もあるけれど。これはさっきお見せした「ブルンミのおうち」の中の一枚ね。アイディアのメモスケッチからさらにこの写し紙(トレーシングペーパー)に描いた状態に話をつめて、最終的に絵本の形になります。
でも、わたしはいちばん最初の、アイディアで描いているラフスケッチがいちばんいいと思うし好きだわ。


このスケッチを見てちょうだい。「ブルンミとアンニパンニ」シリーズに登場する男の子、ベンツェくんと、いぬのスーシが自転車に乗っていて、何だかわからないけれど、ブルンミは泣いているの。本当にただアイディアをメモしたものの一つで、絵の背景にお話があるわけじゃないんです。ぽっと頭に浮かんだイメージを描いているだけ。そこから、なんでブルンミは泣いているのかしら?なにがあったのかしら?とお話をあとから肉付けしていくんです。でもきっとこれはいいお話になると思うわ。子どもたちは自転車に乗るのが大好きだから。


(マレークさん、もう一枚違うラフスケッチをとりだします)

これはまた別のアイディアなんだけど・・・。ブルンミがぬいぐるみを抱っこして顔をくっつけているイメージが頭に浮かんだので描いてみたの。

───かわいい! ブルンミは茶色ですよね、抱っこするぬいぐるみは何色になるんでしょう。色のイメージはあるんですか。

だって、まだお話も作っていないのよ。だから色なんてまだわからないわ(笑)。ただ単純に、ブルンミとぬいぐるみがこうやって隣同士で丸い顔をくっつけているととってもかわいいでしょう。このかわいい感じがすきで、描いちゃっただけ。

───なるほど、こんなふうにマレークさんの絵本は生まれるんですね!

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マレーク・ベロニカ

  • 1937年、ハンガリーのブダペスト生まれ。国立人形劇場のスタッフとして働いた後、絵本作家に。その作品は世界中の子どもたちに、ずっと愛され続けている。主な作品として『ラチとらいおん』『ボリボン』『もしゃもしゃちゃん』(ともに福音館書店)、「アンニパンニとブルンミ」シリーズ、「キップコップ」シリーズ、『ぼくとおにいちゃん』『きのう きょう あした』『どうぐで なにが つくれるの?』『くだもの だいすき!』(ともに風濤社)などがある。

作品紹介

おやすみ、アンニパンニ!
おやすみ、アンニパンニ!の試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
ブルンミとアンニパンニ
ブルンミとアンニパンニの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
ブルンミのたんじょうび
ブルンミのたんじょうびの試し読みができます!
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
ブルンミとゆきだるま
ブルンミとゆきだるまの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
ブルンミとななつのふうせん
ブルンミとななつのふうせんの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
びょうきのブルンミ
びょうきのブルンミの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
ブルンミのピクニック
ブルンミのピクニックの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
ブルンミのドライブ
ブルンミのドライブの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
サッカーしようよ!ブルンミ
サッカーしようよ!ブルンミの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
おはなしよんで、アンニパンニ!
おはなしよんで、アンニパンニ!の試し読みができます!
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:マンディ・ハシモト・レナ
出版社:風濤社
ブルンミのねこ
ブルンミのねこの試し読みができます!
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:マンディ・ハシモト・レナ
出版社:風濤社
ゆきのなかのキップコップ
ゆきのなかのキップコップの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:羽仁 協子
出版社:風濤社
ぼくとおにいちゃん
ぼくとおにいちゃんの試し読みができます!
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:うちだひろこ
出版社:風濤社
きのうきょうあした
きのうきょうあしたの試し読みができます!
作・絵:マレーク・ベロニカ
訳:マンディ・ハシモト・レナ
出版社:風濤社
どうぐでなにがつくれるの?
どうぐでなにがつくれるの?の試し読みができます!
作:マレーク・ベロニカ
出版社:風濤社
くだもの だいすき!
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:マンディ・ハシモト・レナ
出版社:風濤社
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