
貴重な初版本がずらり!
───だるまちゃんシリーズと言えば、もう井原さんご自身が子どもの頃からあったのでは・・・。読んでいましたか?

───「だるまちゃん」は、私も小さい頃から身近にあった存在。子煩悩なだるまどんや、やさしいお母さん、かわいい妹のだるまこちゃんなど、だるまちゃん一家も印象的でした。
- だるまちゃんとてんぐちゃん
- 作・絵:加古 里子
- 出版社:福音館書店
ながい鼻とかうちわとか、てんぐちゃんの持っているものを何でも欲しがるだるまちゃんの物語を、親しみやすい絵で語ってゆく、ユーモアあふれる絵本。
───そしてなんといっても『だるまちゃんとかみなりちゃん』がだいすき。この絵本も人気がありますよね。
絵本作家さんがお気に入りとして、この本をあげるのを何度か聞いたことがあります。
- だるまちゃんとかみなりちゃん
- 作・絵:加古 里子
- 出版社:福音館書店
だるまちゃんシリーズの2作目。だるまちゃんは、今度はかみなりちゃんと親しくなり、雷の国に案内されます。漫画風の絵で描かれる雷の国の楽しさは抜群です。

───本当ですか?それだけ井原さんもお好きだったと(笑)。この絵は、いま福音館書店さんのFacebookのカバー写真になっていますよね。「絵本よむ? 外であそぶ?」のキャッチコピーが、この絵と夏にぴったり!
以前どこかのインタビューでかこさんが、最初に『だるまちゃんとてんぐちゃん』を出したときに懐古趣味だと言われて、僕はへそ曲がりだからそれじゃあ次は近未来だと、『だるまちゃんとかみなりちゃん』を出したとか・・・。
───いいえ! あのだるまちゃんにモデルが?

貴重な資料とともにお話をうかがいました
───モデルは「読者児童」。つまり子どもたち、みんな。だるまちゃんは子どもの代表だったのですね!
だるまちゃんってひげがあって、こわい顔をしているみたいなのに、どうしてこんなにかわいいんだろう、そもそもなんでだるまが主人公なの?と不思議なことがいっぱいあります。
───『マトリョーシカちゃん』・・・たしか、かこさんの絵本がありますよね。
ソ連の絵雑誌について「母の友(2013年10月号)」でかこさんがお話されています
───なるほど、そんないきさつがあったのですね!
ですから、かこさんご自身も「だるまちゃんのおおもとはソ連の絵本です」とおっしゃっていて、日本の郷土玩具をしらべるなかで、だるまちゃんやてんぐちゃんが生まれていったのだとおっしゃっています。
●子どもは、あそぶのがしごとだ!
───少し話がもどりますが、『だるまちゃんとかみなりちゃん』のどこが一番好きだったかというと、あの、すべての絵にツノがついているところだったんです。なぜ子ども心に、ツノがあんなに心をわしづかみにされるほど魅力的だったのだろうと、不思議なくらいです。「けんけんぱ」の輪っかまでツノがついて、浮き輪もツノがついて。
そうですよね、あんまりぜんぶにツノがついているから、ひょっとしたらツノがついていないものがどこかにあるんじゃないかと、探しましたもの(笑)。
───やっぱり(笑)。かこさんの本って、必ずどこかに遊びの要素が入っている。それが子ども心をくすぐるんじゃないかと思います。
- だるまちゃんとうさぎちゃん
- 作・絵:加古 里子
- 出版社:福音館書店
だるまちゃんシリーズの第3作目。雪の日、だるまちゃんはうさぎちゃんたちに会い、いっしょに遊び始めました。冬の遊びをふんだんに紹介している絵本です。
───(一同笑)
つまり『だるまちゃんととらのこちゃん』を読んでまた、いろんなところをぬりたいという子どもが増えちゃうんじゃないかということですね(笑)。
───赤土ねんど、黄土ねんどがペンキ代わりになるんだ! 道路や建物って、絵を描いたり色をぬったりできるものなんだ!と驚きでワクワクしました(笑)。このあたりは『地球』『海』などの科学絵本シリーズを描かれているかこさんらしい視点も感じちゃいます。
- だるまちゃんととらのこちゃん
- 作・絵:加古 里子
- 出版社:福音館書店
だるまちゃんシリーズの第4作目。だるまちゃんは、ペンキ屋さんの子・とらのこちゃんと、とらの町いっぱいのいたずらがき、ペンキぬりにと大活躍します。
───『だるまちゃんとだいこくちゃん』『だるまちゃんとてんじんちゃん』でもだるまちゃんは目一杯遊びます。『だるまちゃんとやまんめちゃん』では、やまんばの娘と友だちになり、おはじきやどんぐりならべ、葉っぱで作った鳥を飛ばして遊ぶのですよね。だるまちゃんシリーズはまさに「あそびの本」と言えるのではないでしょうか!?

やまんめちゃんと遊ぶ、だるまちゃん
そうですね、かこさんは子どもたちのことをすごく信頼されています。インタビューでもお話されていますが、子どもには遊ぶ力がある。大人は子どものじゃまをしてはいけない、と。新作『だるまちゃんとにおうちゃん』では、まさに地面と松の木しかないお寺の境内で、子どもたちがいろんな種類のすもうをとって遊びますよね。ここには、かこさんの「子どもたちの遊ぶ力が、生きる力」だと信じる、原点が描かれているのではないかと思います。