絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  かこさとしさんの「だるまちゃん」シリーズの魅力に迫る!編集者インタビュー

とんとんずもうと、『日本伝承のあそび読本』復刻

───ところで『だるまちゃんとにおうちゃん』の付録には、とんとんずもうがついているのですよね。
おもしろそう!


『だるまちゃんとにおうちゃん』のおまけページ、とんとんずもう

「こどものとも」700号記念ということで、読者参加型の企画を考えていて、『だるまちゃんとにおうちゃん』のテーマが“体をつかった遊び”だったところからひらめいて、とんとんずもうを絵本の巻末につけることになったんです。
じつはおもしろいエピソードがあるんです。まず、かこさんに「だるまちゃんとにおうちゃんのとんとんずもうを作りたいのですが・・・」とお話したんです。そしたら、この本に紙ずもうの作り方が出ていますから見てください、と。渡された本を見てみたら、おもしろいんですね。それがこの『日本伝承のあそび読本』なのです!

日本伝承の あそび読本
著:加古 里子
出版社:福音館書店

草ずもう、ささ舟、紙鉄砲、手袋人形、影絵遊び、あやとり、あぶりだし……。古くから受けつがれてきた身近な遊びを集め、イラスト付きで解説しています。伝承遊びの本の先駆けとなった旧著を刊行当時のままに復刻しました。

───そうだったんですね! 新刊にしては何だかとてもなつかしい内容と写真が満載だと思っていたら、そんな貴重な本の復刊だったとは・・・。

ええ、長らく絶版になっていたので、社内でもほとんど存在が知られていなかったくらい。初版が1967年ですから、作られた当時の社員はもういなくて。
現在のとんとんずもうの力士は、自立する物も多いです。でもかこさんが推奨するとんとんずもうの力士は、自立しないんです。

───どういう意味でしょう?

こんなふうにがっぷりよつに組み合って、互いに支え合わないと立てない。でもこれでとんとんずもうをすると、驚くほどくるくるまわったり、多彩な動きかたをするんです!
かこさんがおっしゃるには、古いハガキなどのしっかりした紙を二つ折りにしてちょきちょき切る。そうすると左右対称の力士ができる。そして、折るのはちょっと斜め折りにする。それが子どもたちには一番かんたんだと。
斜めに折ることで非対称になった力士を、がっぷりよつで組み合わせて立たせ、とんとんするものだったんです。

───おもしろそう〜。やってみたくなります! たしかに最近とんとんずもうをしてみて、あれっこんなにかんたんに倒れちゃったかなと違和感があったんです。もっと派手に動きまわるものでしたよね。

そうなんです!

───さすがかこさん! では『日本伝承のあそび読本』を見て、これも復刻しようということになったと。

はい。とんとんずもうのことがあって、あらためて『日本伝承のあそび読本』の内容のすばらしさを知って、いまの子どもたちにもぜひ伝えたいと、復刊することになりました。

実際にかこさん自身が、家庭で娘さんたちと一緒に遊んでいらした「あそび」が、ユーモアをまじえたやさしい目線で読み物になっていて、すてきなんですよね。ちょうど伝承あそびの配信をはじめようという社内の企画もあったので、これを機に復刻することにしました。

───かこさんはどんな反応をされましたか?

「それはいいですね!」ととても喜んでくださいました。
いまでこそ、こういった日本伝承あそびはかこさん、と定評がありますが、これが最初の本だそうです。かこさんが郷土玩具や伝承あそびに興味をもって、地道に資料をしらべたり、地方へ行ったときに聞き取りをして、採取していらしたことに当社の松居(編集部脚注:のちに福音館書店社長、現在、相談役の松居直さん)が注目し、本書をまとめることをすすめたそうなんです。この本が出版されてから、ありがたいことにほかの出版社からも同じような趣旨で声がかかるようになったんだとおっしゃっていました。
『だるまちゃんとにおうちゃん』にとんとんずもうをつけたいとご相談したときも、喜んでくださいましたが、『日本伝承あそび読本』も、復刻できて本当によかったと思います。



「おとうさんの胸の音をきいてみましょう」

───本の最後にある「おとうさんの胸の音」、この写真、若きお父さん時代のかこさんですよね!
親も祖父母ももう忘れてしまったような「あそび」が発掘され、生き生きと収められている本。日本の宝物ですね。








『だるまちゃんとにおうちゃん』に出てくるすもうをぜんぶやってみよう!

───におうちゃんの話にもどりますが、かこさんが「遊ぶ力が生きる力だ」とおっしゃった、そのことが『だるまちゃんとにおうちゃん』にははっきりと現れていますよね。

そうですね、異年齢で遊ぶことのたいせつさ、遊びに大人は決して入ってこないこと、でも子ども同士の遊びで勝ち負けはとても大事で、そこをはっきりさせるために和尚さんが出てくることなど、かこさんのなかにはとても明確な意思があって描かれていると感じます。
地面に、松ぼっくりで勝ち負けを記した「星取表」が書かれていますが、こんなものを昔はよく地面に描いたんだともおっしゃっていました。


松葉と松ぼっくりで、星取表! だんだん横に長くなっていきます

───そう言えばそうですね。いまは異年齢で遊ぶことが減ってしまいましたが、昔、ちょっと大きなお兄ちゃんたちお姉ちゃんたちが遊んでいるところって、見ているだけでもおもしろかった。勝負になると応援したり、点数を書いたりも小さい子の遊びのひとつでしたね。

ええ。かこさんは、数歳年上ではなくて、もっと大きいお兄さん。たとえば、いまで言えば高校生・大学生くらいのかなり大きくなったお兄さんたちの存在も、とても重要なんだとおっしゃっています。

───じつは小学5年生のうちの息子、すもうが大好きです! ダンナさんが「すもうやるか!」と言うとむしゃぶりついていって、投げられて大笑いしています。私とは、腕ずもうの力が拮抗していて、そろそろ負けそう・・・(笑)。
女の子がいるおうちは違うのでしょうか。いまあまりおすもうってやらないですか?

どうなんでしょう。昔に比べれば減っているのかもしれませんね、でもうちは6歳の娘ですけど、『だるまちゃんとにおうちゃん』に出てくるおすもう、全部やりましたよ! しりずもうが一番盛り上がったかなあ(笑)。




───たしかに、ぜんぶやってみたくなりますね。力勝負だけじゃなくて、タイミングをうまくあわせられるかどうかだったり、いろんな要素があるすもう。年齢関係なく夢中になっちゃいます。
ちなみに娘さんは、『だるまちゃんとてんぐちゃん』の頃より、だるまちゃんの腕や足がたくましいことについて、何も言っていませんでしたか?(笑)


原画の、だるまちゃんとにおうちゃんです。りりしい!

「あれ?だるまちゃん、足がながくなってない?」と言っていました(笑)。
かこさんは、いつも、表紙でお友だちを並べたときのバランスを考えてだるまちゃんを描いているそうです。今回はにおうちゃんに対応して、たくましくなっていますよね。『だるまちゃんとてんぐちゃん』『だるまちゃんとかみなりちゃん』の頃からすると、かこさんははっきりおっしゃってはいませんが、だるまちゃんが成長しているんだな、と私自身は感じます。絵本のなかの「だるまちゃん」だからこそ、絵は変わっていくし表情も変わります。でもそれは自然なこと。あくまでキャラクター先行ではなく、絵本のなかの「だるまちゃん」なのですから。子どもにとってはどれも「だるまちゃん」みたいですよ。

───以前かこさんに、だるまちゃんのお友だちの候補は50〜60あるんだとうかがってびっくりしたことがあります。

いいえ、もっとあるんですよ。テーマも決まっていて、この主人公ならこのテーマとか、案はいくつもお持ちだそうです。それはもうびっくりするくらい! でも32ページの物語にしようとすると、なかなかむずかしいところもあるんだとか・・・。

───米寿を迎えられたかこさとしさん。もうお体第一と思いつつも、願うならばだるまちゃんシリーズをもっと見たいです! でもまずはかこさんが教えてくださった、おすもうを、ぜんぶ息子とやってみようかな!

ぜひやってみてください。そしてとんとんずもうを投稿してくださいね。
だるまちゃんとんとんずもう こどものとも場所 開催中!>>http://www.fukuinkan.co.jp/darumachan/
「だるま」「てんぐ」なんて聞くと、いまの時代に初めて出会うお母さんお父さん方は古めかしいと感じられるかもしれませんが、じつはこんなにも子どもがおもしろがるもの、喜ぶものが詰まっているんだということを、知っていただけたらと思います。


会社の入り口も「だるまちゃん」一色に!

───子どもの日常生活にひそむおもしろさ、それを拾い上げる絵本に出会えたときの感動は、時代が変わっても、変わりませんものね。だるまちゃんシリーズはこれまでも、そしてきっとこれからもたくさんの子どもたちの宝物です!
きょうはお話を聞かせてくださってありがとうございました。





おまけ。化粧箱入り7冊セットをご紹介します!

だるまちゃんの絵本(7冊セット)
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店

日本の伝統玩具だるまをモチーフにした“だるまちゃん”は、1967年に「こどものとも」に登場して以来、そのかわいらしいキャラクターと、シリーズ各冊ごとにいろいろな友だちとくりひろげるゆかいなストーリーがあいまって、時代をこえた人気者になっています。第1作『だるまちゃんとてんぐちゃん』から最新刊『だるまちゃんとやまんめちゃん』までの7冊を化粧ケースに入れてお届けします。

インタビュー:磯崎園子(絵本ナビ編集長)
文・構成:大和田佳世(絵本ナビライター)

©Kako Research Institute Ltd.

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加古 里子(かこさとし)

  • 1926(大正15)年福井県武生町(現・越前市)生まれ。1948年東京大学工学部卒業。工学博士。技術士。
    民間化学会社研究所に勤務しながら、セツルメント活動、児童文化活動に従事。1959年から出版活動にかかわり、1973年に勤務先を退社後、作家活動とともに、テレビニュースキャスター、東京大学、横浜国立大学などで児童文化、行動論の講師をつとめた。
    また、パキスタン、ラオス、ベトナム、オマーン、中国などで識字活動、障がい児教育、科学教育の実践指導などを行い、アメリカ、カナダ、台湾の現地補習校、幼稚園、日本人会で幼児教育、児童指導について講演実践を行った。
    『だるまちゃんとてんぐちゃん』『かわ』(福音館書店)、『からすのパンやさん』(偕成社)、『富士山大ばくはつ』(小峰書店)など、500冊以上の児童書の他、『伝承遊び考』(全4巻・小峰書店)など著書多数。
    土木学会著作賞、日本科学読物賞、児童福祉文化特別賞、菊池寛賞、日本化学会特別功労賞、神奈川文化賞、川崎市文化賞、日本児童文学学会特別賞、日本保育学会文献賞、越前市文化功労賞、東燃ゼネラル児童文化賞などを受賞。
    現在、科学、文化、教育に関する総合研究所を主宰。

作品紹介

だるまちゃんとてんぐちゃん
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
だるまちゃんとかみなりちゃん
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
だるまちゃんとうさぎちゃん
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
だるまちゃんととらのこちゃん
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
だるまちゃんとだいこくちゃん
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
だるまちゃんとてんじんちゃん
だるまちゃんとてんじんちゃんの試し読みができます!
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
だるまちゃんとやまんめちゃん
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
だるまちゃんとにおうちゃん
作・絵:加古 里子
出版社:福音館書店
日本伝承の あそび読本
著:加古 里子
出版社:福音館書店
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