●子ども達に王さまと友達になってほしい。
───2012年9月に新たな王さまシリーズとして『王さまめいたんてい』が発売されましたが、これは今までの読み物と違い、和歌山さんが構成を考えられた絵本なんですよね。
そうなの。今回、ご家族の方の快諾があって初めて実現したことなんです。お話に添えるさし絵と違って、絵本は1ページ1ページめくりながら体験するものでしょう? 寺村さんのお話のおもしろさを、文章+絵=2ではなく、3にも5にもなるようにしたいと思って取り組んだの。もちろん、絵も全て新しく描いています。

───実際にできあがった絵本を手にしてみて、いかがですか?
今回の絵本で、一番私らしく描けたと思うのは、「王さまは その日から いっしょうけんめい べんきょうするようになったそうです。が――。いつまで つづくことやら。」という最後のページ。王さまは自由人よということを表現したかったの。この場面を見た子どもはきっと「王さま、絶対勉強なんかしっこないよね」って思うわよね。そう読んでもらえたら嬉しいわね。
───今までの王さまと今回、絵本になった王さま、和歌山さんの中で変化した部分などはありましたか?
新しい王さまの絵本を作ることになったとき、今までの王さまの本よりもっと小さな子ども達がお母さんに読んでもらうようすを思い浮かべたの。だからかしら、今まで描いた中で一番子どもらしい、かわいい王さまになりました。やっぱり、王さまは子どもだし、本当に子どもたちのいい友達になれたら…そんな思いが自然に生まれてきているのね。実際、王さまみたいな友達がいたら面白いだろうなと思うの。
――寺村輝夫さんは、2006年に亡くなられていますが、和歌山さんは寺村さん亡き後も王さまを描き続けていますよね。

実は、今回絵本を作っているときに、寺村さんがお元気だったらこんな自由に王さまを描けないだろうな…と、寺村さんがいない自由さも感じていたの(笑)。その反面、寺村さんを代表する王さまを引き継いで、王さまを絵本として成立させることに責任感も強く感じている。すごく自由なんだけど、どこかで寺村さんは見張っているぞ…と(笑)。寺村さんが生きていれば半分は寺村さんの責任だけど、今は全責任を私が持つ、そういう意気込みで次の王さまも描いていけたらいいなと思うの。幸い、寺村さんがたくさん王さまを書き残してくれたおかげで、こういう形で新しい絵本もできる。正直、寺村さんがいなくなっても王さまを描いていけるなんて思ってもみなかったから、描き続けられるだけ描き続けていきたいと思うの。
───最後に絵本ナビユーザーに向けて、メッセージをお願いします。
最近、子ども達に王さまの話をするとき、「王さまと友達になってね」ということをよく言います。
王さまは架空の人間だけど、本を大事に読んでいくと、中の登場人物と友達になれると思うんです。サイン会に来てくれるお母さんの中には「子どもの頃に私も大好きで、ぜひ自分の子どもに読ませたくて」と言ってくれる方も多くいて、その方は小さい頃に王さまと出会って、今もなお王さまと友達なんだと思うの。
王さまのおはなしは新シリーズの絵本以外にも、小学校中高学年に向けた童話の本やフォア文庫にもなっているから、子どもの成長段階に合わせて子ども自身が読み返すことで、王さまという友達と再会してもらえたら嬉しいです。
●アジア絵本ライブラリー

和歌山さんのアトリエの1階は、日本、中国、韓国、台湾など、アジアのさまざまな国で出版されている絵本を集めた、小さなライブラリーになっています。絵本以外にも各国から集めた人形やアート作品があり、アジアの生活や文化を感じることができます。
●2階のアトリエ

●なんと目の前で、王さまを描いてくださいました!

完成!!
スタッフ一同、大感動です。「本物の王さまだ!」(笑)
大切に飾らせていただきます。
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