真っ暗な夜、家族でおうちへの帰り道。車のゆれについ、うとうとしていると、窓から見える景色がどんどん変わっていって……。「ぼく」の視点を通して、とある“帰り道”を描いた絵本『ほしのかえりみち』(絵本塾出版)が出版されました。作者のきたじまごうきさんは、『とっておきのカレー』(絵本塾出版)で絵本作家としてデビューし、今回が2作目の絵本です。絵本作家になったきっかけは…? 小さいころに読んでいた絵本は…? 『ほしのかえりみち』の誕生秘話は…? 今後が期待されるフレッシュな絵本作家さんのインタビュー、お楽しみください。
●宇宙への夢が詰まった大迫力のスペースファンタジー絵本、誕生!
───デビュー作の『とっておきのカレー』は山小屋を舞台に、フクロウやカモシカ、ゆきおとこ、宇宙人までがカレーを食べに来るという、とても不思議なストーリーでしたが、今回の『ほしのかえりみち』も不思議なおはなしですよね。このストーリーはどのように生まれたのでしょうか?
『とっておきのカレー』が出版されてすぐに、次回作のテーマをどうしようか、編集者さんと打ち合わせをしました。何パターンかあげた候補の中には、『とっておきのカレー』に出てくる宇宙人を主人公にする案も出てきたのですが、インパクトのある作品を作りたいと思い、試行錯誤を繰り返しました。

───これが、その間に描かれたイメージ画ですね! すごくたくさんあるのでビックリしました。
ストーリーが完成するまで、1年近くイメージを描いたり、ラフを描いては直し、描いては直し…を繰り返していました。
───今回のテーマは、「宇宙」ですよね。宇宙には以前から興味があったのですか?
絵本作家になる前から、宇宙は好きでしたね。それと、子どもの頃に家族で車に乗って夜の道を走っているイメージが頭にあって…。この2つを合わせたらどんなおはなしができるだろう…と考えていたら、絵本のストーリーが生まれました。
───最初読んだとき、ラストのストーリー展開にとてもビックリしたのですが、最初からこのラストは考えていたのですか?

最初は、行って帰ってくるおはなしにしていたんです。それが絵本のセオリーかと思っていましたから…。でも、あるとき編集者さんに「最後はこのまま行きっぱなしで良いんじゃないか?」と言われて、その瞬間にすごく面白いおはなしになるなってワクワクしました。ただ、子どもの気持ちを考えると、衝撃が強すぎるんじゃないか…と思い、なるべくソフトに終わらせる様、気を遣いましたね。
───このラストの衝撃は、是非、皆さんに体感してほしいですよね。
この部分は本当に絵本で体感してほしい! なので、インタビューでもあえて伏せておきたいと思います(笑)。ただ、1度読むと最初の驚きは薄れてしまうんじゃないかという不安も感じていたので、何度も楽しんでもらえるよう、細かい描き込みを工夫しました。
───その細かい工夫をひとつひとつ伺っていきたいと思います。まず最初に息をのむほど美しい星空のシーン。本当に幻想的でステキですが、画材は何を使っているんですか?

基本はパステルを使っていますが、星の光などはアクリル絵の具を使っています。大きい星は爪楊枝の先で点々と描いて、細かい星雲は筆先につけて息を吹きつけて描いています。ポイントは均一になりすぎないように、程よくまばらな感じを出したり、色に微妙な変化を出すのにも気を遣いました。
───そして、ガソリンスタンドで車が宇宙船に変形する場面。この場面は男の子の憧れですよね。
ここは、まさにトランスフォーマーやアイアンマンの様なイメージで、子どもたちがダイレクトに興奮してほしいと思って、描きました。

───よーく見ると、ロボットになったり家になったりするギアもあるんですよね。
そうなんです。それを見つけた子どもが、いろいろ想像を広げてもらえたら嬉しいなと思って描きました。こういった要素を絵本に入れるのがすごく好きなんですよ(笑)。
───いろんな要素が入っているといえば、サービスエリアの場面はまさに圧巻! とても細かくて、色々発見がありますよね。

このページはかなり力を入れて描きました。絵本の世界がより広がるように、僕なりに設定して、伏線や仕掛けを入れているんですよ。
───そうなんですか? その一部を教えていただけますか?