1974年刊行以来、“ポケット絵本”として親しまれてきた童話シリーズの改訂新版、「せかい童話図書館」全40巻。 発売40周年を記念して、創刊当時編集長として制作にあたった、いずみ書房会長、酒井義夫さんにお話をうかがいました。ご自身の原点である多数の古書(貴重な本の数々!)をならべつつ、たっぷりとうかがうことができました。 昔話や名作童話に興味がある方、必見です。
- 改訂新版 せかい童話図書館(全40巻セット)
- 編集プロデュース:酒井 義夫
- 出版社:いずみ書房
何百年という長い年月を生き抜いてきた民話には、語り継いできた民族の時代背景、知恵、願いが込められています。「せかい童話図書館」は、ふしぎな話、とんち話、心うつ話、こわい話、かなしい話、わらい話・・・・・・など、子どもたちの夢や希望をふくらませ、幼児・児童期の「豊かな情操」をはぐくむ内外の童話51話を厳選。 40年間、20万セット突破の大ヒットロングセラー童話集が、改訂新版として生まれ変わりました。
●何百年も語り継がれてきたお話に、出会わないなんてもったいない
───じつは絵本ナビのスタッフの、小学校1年生の子どもが『いっすんぼうし』を知らなくて……。 昔ながらの日本のお話を知らない子どもたちが、今はけっこういるのかもしれませんね。

もったいないですよね。「一寸法師」が物語として成立したのは500年以上前。指差太郎、豆太郎ともいわれ何百年も語りつがれてきたお話です。かつては、昔話をおじいさんやおばあさん、お父さんやお母さんの声で話して聞かせてもらうわくわく感といったらなかったと思うのです。
今は、絵本が好きでいろいろ読んでいるはずのお子さんでも、昔話やおとぎ話に意外と出会わないままとおりすぎて、大きくなってしまう、そんな時代になりましたね。
───「せかい童話図書館」には、日本の昔話もたくさん入っているのですか?
はい。『いっすんぼうし』はもちろん、五大昔話といわれる『かちかちやま』『ももたろう』『はなさかじじい』『さるとかに』『したきりすずめ』をはじめ日本の昔話・神話・伝説が17冊、外国の昔話やアンデルセン・グリムなど名作童話が23冊にまとめられています。日本と外国の作品両方をバランスよく織り交ぜています。
1974年に文庫版サイズの“ポケット絵本”としてスタートしましたが、昨年、もっと読みやすくという読者の方の声におこたえしてB6版サイズに拡大し、解説にも時代に即した手を加え、あたらしくなりました。
新書よりひと回り大きいサイズです。ずらっと!40巻。
───40巻ずらっと並んでいるのを見ると、わくわくします! 上製本でつくりもしっかりしているし、コンパクトで軽くて子どもの手にはちょうどいいですね。
『ドナウ川のようせい』『エメリアンとたいこ』『みみなしほういち』『ほしのこ』『たまとり』……、あまり聞いたことがないお話もありますね。
『ドナウ川のようせい』はオーストリアの伝説です。『エメリアンとたいこ』はトルストイ、『ほしのこ』はオスカー・ワイルドの名作童話。『みみなしほういち』は小泉八雲が再話した日本の怪談、『たまとり』は四国のあたりに7世紀頃から伝わる伝説です。
───どんなお話なのでしょう? どれも読んでみたくなります!
中は、左ページが文章、右ページが絵という形式なのですね。文字はひらがなですか?
数字は漢数字で、ルビがふってあります。それ以外はひらがなですから、ひらがなが読めるお子さんなら、好きなお話を自由に読むことができます。
左右のページで文章と絵を分けるのは“紙芝居スタイル”といって、創業当時わたしが感銘をうけたレディバード社(イギリスの児童書出版社)の文庫版絵本シリーズの形式にならっています。子どもたちは読んでもらうときは絵に集中して、そして文字が読めるようになったら文字に集中して読むことができます。
本文は56ページ。ひらがなの文章で、原作・原話になるべく忠実に書かれたストーリーを、たっぷりの絵でも楽しめると思いますよ。
『ブレーメンのおんがくたい』より
───ボリュームといい、内容といい、はじめての“ひとり読み”にもぴったりですね。
お母さん、お父さんが読んであげて、耳からお話を聞くことはとても大事です。ふしぎな話、とんち話、心うつ話、こわい話、かなしい話、わらい話……。耳から聞くことで、より想像力がふくらみ、子どもたちの心をわくわくさせふくらませるでしょう。
ですから、幼いうちから読んであげて、そのうちひとりで読むことができるようになる。その両方が大事で、両方のプロセスに対応しています。
読者のお子さんの年齢層をアンケートでおたずねすると、だいたい1〜5歳。未就学のお子さんがいらっしゃるご家庭が圧倒的に多いです。
───やはり、就学前に、昔話や名作童話に出会わせてあげたいと思われる方が、興味をもつのかもしれませんね。