
───はせがわさんの今までの作品を見せていただいて、2つの共通項を見つけたんです。
1つは物語の季節が「冬」であること、もうひとつは「日常の中にある異空間」を描かれているということでした。『のはらでまたね』は、冬を描きながら、動物の世界を描いているので、とても新鮮でした。

───たぬきが「みどりいろのふわふわ」にほおずりしたり、体にかけて眠ってみたりする場面がすごくかわいくて。でも、マフラーを知らないたぬきが、お腹に巻くものだと勘違いしたまま外に出て行く場面や、小鳥に使い方が違うんじゃないかと指摘される場面があったり、おはなしが次にどう展開するのか想像がつかなくて、ページをめくるたびに、「次はどうなっているんだろう…」とワクワクしました。
私、絵本作家になる前に、コピーライターの仕事をしていたんです。だから、何かを真正面から見るのではなく、別の方向から見てみたらどう見えるのだろう…と常に考える癖があって。それが今の絵本に生きているのかもしれないです。
───なるほど! だから、マフラーを素直にマフラーと見るのではなく、動物が見たら何に見えるだろう…と考えて、「野原」に間違えるという発想が生まれるんですね。普通はなかなか思いつかないと思うのですが。
しかも、野原に間違えるのはたぬきじゃなくて、他の動物だと面白いなと思っていたんです。絵本の文章を追ってもらうと気づく方もいると思うのですが、文章の中では、たぬきたちが勘違いしている「みどりのふわふわ」を一貫して「マフラー」と書いています。読者には動物たちの勘違いが分かる様になっているので、勘違いと知っている子どもたちが「のはらじゃないよ〜マフラーだよ」とツッコんだり、おなかにマフラーを巻いたりしているたぬきの仕草に笑ってくれたら作者としてはとても嬉しいです。
───動物たちが小さいマフラーの上にぎゅうぎゅう座って、嬉しくなっている場面は、一足先に春が来たような温かくなる場面ですよね。
たぬきもくまも、ほかの動物たちもすごく愛らしく描かれているのですが、絵本を描く前には動物をスケッチをしに行ったりするんですか?

私は絵が下手なので、いつも練習してからラフや原画の制作に入るんです。今回は動物のスケッチをしには行かなかったですが、たぬきはどうやったらとぼけた感じが出るだろう…動物たちの動き方はどう表現しようなど、すごく悩んで、何度も下絵を描いて練習しました。

───下手だなんて! 立ち姿も表情も雰囲気があって、もうたまらないです。今回初めて書いた動物たちもいるんですか?
はじめて描いたのもいますね。フクロウとかイノシシとか…みんな、どんどん愛らしく思えてきて、楽しく描けたのでほっとしています。
───みどりのマフラーが野原に見えるという発想もそうですが、選ばれる言葉や表現がとても独特な感じがして、はせがわさんの絵本には世界観がしっかりとあるなと思いました。おはなしを書くのは好きだったんですか?
そうですね。一番はおはなしを考えるのが好きで絵本作家になりたいと思いました。もともと本が好きでしたが、幼年童話を大人になってから読んで、すごく感動して、そこから絵本も手に取るようになって、さらに絵本の奥深さに触れて、絵本の仕事をしたいと強く思うようになりました。
───絵本を書きたいと思うきっかけになった絵本作家さんや作品はなんでしたか?
デイヴィッド・ウィーズナーの絵本とかすごく好きですね。
───『かようびのよる』(訳:当麻 ゆか、出版社:徳間書店)や『3びきのぶたたち』(訳:江國 香織、出版社:BL出版)など日本にもファンの多い絵本作家ですね。

───意外な気がしますが、でもはせがわさんの作風に通じているようにも感じました。
『のはらでまたね』というタイトルもすごく絶妙。読みおわると納得しちゃう。
このタイトルはいつ頃思いついたんですか?
───そういうフレーズは日頃から探したり、意識的に探したりするんですか?
意識をしているかどうかは分からないですが、普段から言葉を探すのが好きなんです。本や何気ない会話などで良い言葉を見つけるとドキッとして、言葉のストックとして留めておいたり。そんなおはなしになるか分からない言葉のかけらを沢山集めるのが楽しいんです。
───はせがわさんが次にどんな言葉を使っておはなしを描かれるのか、とても楽しみです。絵本ナビユーザーに向けて、メッセージをお願いします。

『のはらでまたね』を読んで、寒い季節にあたたかくなっていただけたら嬉しいです。
───それは、今までのはせがわさんの絵本全てを通してのメッセージになりそうですね。
そうですね。冬の寒さや雪、雪の降るときに暖かい場所でぬくぬくとしているのが好きなので、そういう暖かさが絵本から伝わると良いなと思います。

───お二人とも、絵本作家デビューを目指す人のためのワークショップ「あとさき塾」出身の絵本作家さんだということを伺いました。あとさき塾に通われていたときはお互い面識があったんですか。

かとう:それがもう5年くらい前ですね。
───そのときの受講生で絵本作家さんになった方は他にいますか?
『だれもしらないバクさんのよる』(絵本塾出版)でデビューした、まつざわありささんは18期で、私たちの1期下でした。
───受講していた時のお互いの作品に対する印象や、作品の好きなところなど教えてください。
かとう:あとさき塾では、受講生の作品を講師とみんなの前で見せるのですが、私が通っていたとき、はせがわさんは『おばけのドレス』のラフを描いていたんです。初めて見たとき、絵がとても可愛くて印象に残っています。
───たしかに、じっちょりんの世界はすごく説得力がありますよね。どうしてこんなところに生えているんだろう…という植物は、みんなじっちょりんのおかげとしか思えないです。

かとう:あとさき塾に通っている間にもじっちょりんは色々変化をしているんです。最初は家族じゃなかったり、日本語でなく、「じっちょりん語」を話していたり…。出版が決まって、細かい部分を変えていきました。
───はせがわさんは、『おばけのドレス』以外にどんな作品を描いていたんですか?
はせがわ:『のはらでまたね』も最新作『ドムくんと なぞなぞおてがみ』(出版社:BL出版)もあとさき塾にいたときに考えた作品なんです。
───絵本作家になる前に描いていた作品がすべて絵本となって出版されるのはすごい事ですよね。
はせがわ:あとさき塾には5年もいたので、じっくり考える時間だけはあって…。アイディアのかけらは貯まったんだと思います。
───絵本作家さん同士でイベントをしたり、交流をすることはありますか?
かとう:同じ時期にあとさき塾に通っていたメンバーとは、よく集まっていろいろ話すことはあります。さとみちゃんとも会うことはありましたが、今日みたいに一緒にイベントをしたり、インタビューを受けるのは初めてです。
───せっかくお二人にインタビューをさせていただいているので、お互いに聞いてみたいことはありますか?

かとう:続編は大変だけど、「じっちょりん」シリーズは季節がテーマにあったので、それをベースに描き上げることができましたが、まったくゼロからシリーズを生み出すとなると、どうなるのか私もまだ分からないです…。
───今回の絵本はお二人ともテーマが「冬」ですが、ズバリ! お二人の冬の過ごし方は?
かとう:若いころはスノーボードとかウィンタースポーツが好きで、よく行っていました。最近の冬の過ごし方は「温かいものを食べる」…とか(笑)。

───何だかお二人の雰囲気がぴったりで、ずっと会話を聞いていたいところですが(笑)…今日はこのあたりで。
次回作がますます楽しみになりました。
今日は本当にありがとうございました。











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