●山岡ひかるさんってどんな人? 編集者さんに教えてもらいました。
───みなさんのおはなしを伺うと、山岡ひかるさんについて、もっともっと知りたくなりました。編集者さんが感じた、山岡ひかるさんの人となりを教えていただけますか?
宮本:そうですね……。山岡さんと仕事をしてすごいと思うのが、こんなに細かい作業をされていて、とても大変なはずなのに、私たちにはその苦労を一切見せないということです。
島ア:絵本を作るのが本当に楽しいと思って制作をされていることが、作品からも、山岡さんご自身からも感じられて、一緒にお仕事をさせていただくのもとても楽しいんです。
山田:絵本を見ると分かるかと思いますが、山岡さんは美味しいものが大好きなんですよ。
───分かります! どの食べ物も本当に美味しそう。お腹が空いているときに見るのは危険ですね(笑)。
山田:作品を作るときも、変身するときにワンパターンにならないように常に考えていらっしゃるんです。例えば『いろいろ じゃがいも』だと、茹でると「じゃがバター」、揚げると「フライドポテト」、煮て作る料理も「肉じゃが」と「ポテトサラダ」と、見た目も異なるようにされています。
はっくしょーん! 皮からすぽんと、バナナのきょうだいが飛び出しました。はだかんぼうでは、寒くて寒くてたまりません。どこかにあたたかくなれるものはないかしら。 「わーい! お風呂を見つけたよ」「ふわふわマントはぼくのだい!」 バナナたちは、おいしいおやつに大変身。やわらかくリズミカルな言葉にのせて、おいしく幸せな時間をお届けする絵本です。 『いろいろごはん』『いろいろたまご』『いろいろいちご』など「いろいろシリーズ」で食べることが大好きな親子の心をがっちりつかんできた、山岡ひかるさんの最新刊。 本書の魅力は、なんといっても作者、山岡ひかるさんの作りあげる「はり絵」。バナナにはいったすじや、ちゃぽんと音のしそうなチョコレートのお風呂、ふんわりまかれたバナナクレープ……あまい匂いも漂いそうなおいしそうな絵は、カッター1本で切り抜いていくという、気の遠くなるような作業によって生み出されています。
───たしかに、あまり変身する工程がなさそうな『いろいろ バナナ』も、チョコバナナになったり、バナナシェイクになったり、クレープになったり……。こんなにバリエーションがあるんだと、ビックリしました。
宮本:制作の際には、必ず実物の食べ物をよく見たり、味わったりしながら制作を進めていらっしゃるそうです。例えば「肉じゃが」を描くときには、やっぱり肉じゃがといえばおふくろの味!ということで、実際にお母様に作ってもらったものを、描いたそうですよ。読者の方に向けた「作者のことば」にも、よくそんな楽しい食べ物のエピソードが載っています。
いろいろおすし 作者のことば
───最新刊『いろいろ おすし』制作中のエピソード、とっても面白いですね。
島ア:そうなんです。山岡さんとの打ち合わせでは、いつも、美味しいお店に連れて行ってくださるので、ご本人もとてもグルメな方なんだと思います。それと、良いアイディアを思いつくと、「忘れないうちに、お伝えしたくって」とお電話をいただくんです。それが、とてもかわいいなと思っています。
宮本:『いろいろ いちご』の山登りのアイディアを思いついたときも、お電話でしたね。シリーズが続いていっても、人気の食べ物を同じ展開に当てはめていくのではなく、毎回新鮮なアイディアを形にすることを、山岡さんご自身が楽しんでいらっしゃるのが、このシリーズが単調にならない人気のひとつだと思っています。
───たしかに同じシリーズでも『いろいろ たまご』と『いろいろ おすし』では、楽しみ方が全く違う作品になっています。それも含めて、美味しい作品なのが、このシリーズの魅力なのですね。
みなさんは今後、「山岡ひかるの食べ物絵本」シリーズをどのように発展させていきたいと思いますか?
山田:実は『いろいろ たまご』から『いろいろ いちご』までのシリーズは、中国版、韓国版、台湾版が出版されているんです。
宮本:『いろいろ たまご』と『いろいろ ごはん』を作っているときには想像もしていなかった広がりを見せてくれているので、とても驚いています。特に、『いろいろ ごはん』は日本ならではの「おにぎり」や「たまごごはん」が登場するので、海外版ができるとは思っていませんでした。
左から、原書、中国版、台湾版。
───並べてみるととても可愛いですね。中国版はカバーがない代わりに、帯がついていたり、台湾版は表紙に凸凹した加工が施されていて、それぞれの国の特徴が表れているように思います。
島ア:海外版になっていない作品もありますし、アジア圏以外ではまだ出版されていないので、まだまだ広がっていってほしいなと思います。もちろん、日本の子どもたちに向けた新作も、続々と作っていきたいと思います。
───『いろいろ きのこ』の出版も楽しみにしています。最後に、「山岡ひかるの食べ物絵本」シリーズのオススメメッセージをいただけますでしょうか。
島ア:小さいお子さんをメインにした絵本で、こんなにバリエーションに富んだ食べ物が出てくるシリーズは珍しいと思います。ひとつの食べ物から、いくつもの料理が生まれる様子は、大人の方が見ても十分楽しめます。お子さんと一緒に「何になるかな?」と話しながら楽しんでいただけたら嬉しいです。
山田:作者の山岡さんご自身がとても楽しみながら作っている様子が、作品からにじみ出ていると思います。1作目から楽しむのも良いですが、好きな食べ物の絵本から読むのもオススメです。絵本を読んだ後に、実際に料理を作ってみて、食べてみると、食育にもつながると思います。
宮本:読者の方から頂くお葉書の中には、「うちの子はあまり食べることに興味がないのですが、この絵本を読んでから、ご飯の時間が楽しみになりました」というメッセージや、病気で流動食を食べているお子さんをお持ちのお母さんから「絵本に出てくる料理を早く食べられるようになりたいと、治療を頑張っています」というお言葉をいただいたこともあります。
これほど多くの反響が寄せられるのは、作品の力があってこそだと思います。まだ読んでいない方は、ぜひ一冊、手に取っていただけたら嬉しいです。そして、気に入っていただけたら、シリーズ全部を読んでみてもらいたいです。
───ありがとうございました。
文・編集/木村春子
写真/所靖子