絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  シェフがお客で、お客がシェフで?! 中毒性がクセになる!『へんてこレストラン』 古内ヨシさん 竹内通雅さんインタビュー

お気に入りのレストランは?

───古内さんが構成案を快諾されたことで、私たちはいま、このパワーにあふれる作品を目にすることができるのですね。読者によって、好きなページがあると思うのですが、著者おふたりそれぞれのお気に入りのレストランを教えていただけますか?

竹内:ぼくは「ナマケモノの レストラン」が意外と好きですね。「つまらないことを なにもかも わすれるための レストランなんだ」という文章がいいでしょう。あと、次のページの「ラッコのレストラン」も描いていて楽しかったです。自分のレストランではお客に料理を出そうとしないナマケモノが、客として貪欲に海鮮を求めている姿(笑)。

古内:「ナマケモノのレストラン」は、いっさい料理がないんですが、通雅さんはこのページにこっそり食べ物を描いていて、それが、壁にかかっている額縁の絵のバナナなんですよ。これを見たとき、「通雅さんはやっぱりおしゃれだな〜」って感心しました。

竹内:あ、気がつきました? 「ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」という1960年代のロックバンドのレコードジャケットに、アンディ・ウォーホルのバナナのイラストが使われていたんです。それがとても印象的だったので、ひそかにイメージしました。

───建物などとてもリアルに描かれていますが、なにかモデルにしたものはあるのですか?

竹内:ラッコのお寿司屋さんは、ぼくが年に1度くらい食べに行くお寿司屋さんをモデルにしています。

古内:高級なお寿司屋さんですね。ぼくがいちばん好きなのは、「うちゅうじんの レストラン」かなぁ……。絶対においしくないだろうに、カバが、けっこう平気な顔をして食べているのがおもしろいなあと思いました。あと、「ゆきおんなのレストラン」も好きだな。この雪女は美人ですよね。

竹内:やっぱり日本の雪女には、はかなげな雰囲気が必要ですよね。あと色っぽさ(笑)。

古内
:そうか、色っぽいのか(笑)。

───最初は動物だけが出てくるおはなしなのかと思っていたら、魔女や雪女、カミナリさまと、どんどん空想上のキャラクターが登場し、ヘンテコ度も増していきます。そして、「おばけの レストラン」ではこれまで出てきたすべてのキャラクターが大集合! この後いったいどうなるんだろう……と思いました。

古内:そうそう。ふつうなら、全員集合したら次はおしまいだと思うじゃないですか。でも、ここでひとひねり加えているのが、この『へんてこレストラン』のおもしろいところなんです。

───なるほど。

古内:このラストの黄昏の空がすごく良いでしょう。ぼくは見惚れてしまうんです。

竹内:夕焼け空を描くのは以前から好きです。いろいろな絵本にもよく夕焼けの場面を描くんですが、こんなにふしぎなキャラクターと夕焼けとのタッグは、いままで描いたことないですね。

イラストレーターとして活躍し、絵本の世界へ……。

───プロフィールを拝見すると、お二人は年代も近く、絵本作家になるまでの経歴も似ているように思いました。

古内:ぼくが今年65歳で、通雅さんは60歳。年齢はぼくのほうが5つ上ですね。

竹内:ぼくは28歳でイラストレーターとしての活動をスタートしました。当時は、バブル真っ只中。イラストレーターだけで十分仕事ができたんですよね。39歳で絵本作家デビュー。

古内:イラストレーターになる前は何をやっていたんですか?

竹内:印刷会社でシルクスクリーンの印刷などをしていました。

古内:そうなんだ。ぼくも、最初は建築塗装……かんばん屋をしていました。それから、グラフィックデザイナーの田中一光さんに推薦してもらって、イラストレーターとして活動をはじめたのは、20代後半。絵本作家になったのは40歳のときでした。

───絵本作家になりたいと思ったきっかけはなんですか?

古内:バブルがはじけたことですかね。それまで、現代アートに近かったイラストレーターという仕事が、ちょっと路線変更したというか、カラーが変わっていったんです。ぼくはもっと自由な絵が描きたいと思ったので、それができる場を求めていたら、絵本の世界にたどり着きました。

竹内:ぼくも同じような感じです。それまでは絵本に全く興味がなかったけれど、バブルがはじけて、仕事がどんどん減っていく中で、知り合いの編集者が声をかけてくれたのに飛びつきました。でも、どうやって描いたらいいかわからないまま、もがき続けて、結局5年もかかってしまいましたけれど。

───イラストレーターとして活躍したあと、40歳前後で絵本作家としてデビュー。デビューした時期も同じくらいなんですね。もしかして、好きな絵本作家さんも同じだったりして……?

古内:長新太さんが一番好きです。ああいうバカなことをやりたいなといつも思いながら作品を作っています。長さんの作品は、絵本として「理にかなっている」んですよ。それを追求できたらいいなと思うんです。

竹内:ぼくも長新太さん好きです。好きすぎて、絵本デビュー作の帯を長さんにお願いしたくらい。

古内:そうなんだ。すごいねぇ。

竹内:イラストレーターとして仕事をしていたころ、年齢別の幼児雑誌の表紙を、それぞれ長新太さんと杉浦範茂さんとぼくが担当していた時期があったんです。あるとき、絵本の世界でも大ベテランだった大先輩のお二人と食事する機会があって、「通雅くん、絵本は、やらないの?」と。「今度、絵本を描くことになっているんですよ」と報告したら、長さんは「自分の好きなように、勝手に好きなものを描きなさい」とアドバイスをくださいました。それから完成するまで5年もかかってしまったけれど、5年たって改めて帯のコメントをお願いしにいったら、引き受けてくれました。うれしかったですね。

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古内ヨシ(フルウチヨシ)

  • 1952年愛知県生まれ。絵本作家。子どものころから絵を描きつづける。色が重なってどろどろになっても描きつづける。10歳で油絵をはじめ、15歳で洋画家・白浜禎吉氏に師事。イラストレーターをへて、40代で絵本の世界へ。主な絵本の作品に、『おばけのムニムニ』(あかね書房)、『ともがき』『子ぐものいのり』(文・久留島武彦/幻冬舎ルネッサンス)、『ながーいでんしゃ』(至光社)、『すごいサーカス』『オナラせんせい』(絵本館)、『つきよのニャロベエ』(論創社)、『ウシくんにのって』(絵本塾出版)など多数。

竹内通雅(タケウチツウガ)

  • 1957年長野県生まれ。創形美術学校版画科卒。雑誌『イラストレーション』のコンペで第3回「ザ・チョイス年度賞」大賞受賞。39歳でイラストレーターから絵本作家へ。主な絵本の作品に、『走れメロス』(作・太宰治/ほるぷ出版)、『月夜のでんしんばしら』(作・宮沢賢治/三起商工)、『おどるカツオブシ』(文・森絵都/金の星社)、『じごくのさたもうでしだい』(文・もとしたいづみ/ひかりのくに)、『ぐるぐるぐるぽん』(文・加藤志異/文溪堂)、『ぶきゃぶきゃぶー』(文・内田麟太郎/絵本館)など多数。

作品紹介

へんてこレストラン
へんてこレストランの試し読みができます!
文:古内 ヨシ
絵:竹内 通雅
出版社:絵本塾出版
全ページためしよみ
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