「アンパンマン」のやなせたかしさんや、マンガの神様・手塚治虫さんに「天才」と言われ、生前、広告のイラストや絵本など精力的に活動しながらも、46歳という短い生涯をとじた作家がいました。その作家の名前は東君平。2017年、東君平さんが亡くなって30年の節目に、『こねことこねこ』『うたうたう』(廣済堂あかつき)が出版されました。この2冊は、1979年に刊行された月刊誌「ことばのほん」から生まれた絵本です。30年経った今でも、新しさと温かさを有する、東君平の世界を知るために、山梨県小淵沢にあるくんぺい童話館を訪れました。
●東君平さんってどんな人?
【東君平プロフィール】
東君平さんの作品は、絵本はもちろん、最近ではNHK番組「おかあさんといっしょ」で、代表作「ひとくちどうわ」がアニメ化されるなど、今なお、新たなファンを獲得しています。
「アンパンマン」の作者、やなせたかしさんは、君平さんについてこのような言葉を残しています。
東くんぺいさんは天才である。それもこの世には珍しい妖精タイプの天才で、詩人中原中也と同タイプである。
くんぺいさんは切り絵の画家としてデビューしたから、その詩人としての素質はあまり評価されなかったが、天から与えられた才能を持つ詩人だった。
ぼくは彼の詩を読むといつでも感動した。
くんぺいさんにはかなわないと思った。
現在の詩人達には欠落しているこころよいリズムと何よりも感性が優れていた。
(中略)
くんぺいさんの詩と比較すると、俗世の詩はみんなダサい感じがする。
へんに作りすぎている。
こういう人が天性の詩人なのだ。
(「東君平の世界」(サンリオ)より。)

●「ことばのひろば」シリーズ 『こねことこねこ』『うたうたう』ってどんな絵本?
一見開きに、ひとつの文章とカラフルなイラストで構成されたシンプルな「さかさことば」の絵本。1979年に刊行された「ことばのほん」(暁教育図書)の付録の豆本に加筆し、2冊の絵本として再構成したもので、初めて単行本となります。ことば遊びに興味を持ち始めた幼児や、文字を読みなれない子どもにも親しめる作りとなるよう、書体やデザインを工夫しています。『こねことこねこ』は動物を、『うたうたう』季節をテーマにまとめられています。

「ことばのほん」の編集を担当した、西内ミナミさんと本多慶子さんにインタビューを行ったとき、東君平さんとのとても印象的なエピソードを教えていただきました。
それでは、次のページから、くんぺい童話館館長、東英子さんのインタビュー、スタートです。