ぬけちゃった ぬけちゃった
作: スティーブ・アントニー 訳: せなあいこ  出版社: 評論社 評論社の特集ページがあります!
「スマホが手放せない」時代の子ども(と大人)へ……。 外の世界には、新しい冒険が待っている!

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【長新太没後10年記念連載】 担当編集者&絵本作家インタビュー

2016/07/07

【連載】第13回 谷川俊太郎さんインタビュー

【連載】第13回 谷川俊太郎さんインタビュー

詩人・谷川俊太郎さんは長新太さんの“盟友”として、何冊も絵本を一緒に作られています。『あなた』『きもち』(共に福音館書店)、『にゅるぺろりん』(クレヨンハウス)、そして詩集『地球へのピクニック』(銀の鈴社)。長新太没後10年記念連載の最終回は、盟友・谷川俊太郎さんにご登場いただきました。
●長新太は、常に仕事をしていたいなと思う画家です。
―― 谷川さんと長さんの出会いを伺えますか? 

長さんとの最初の仕事は、『日本語のおけいこ』という楽譜でした。それが出たのが1965年だったから、おそらくその1,2年前に初めて会ったんじゃないかと思います。
―― お仕事でご一緒した後も、いろいろ交流があったのですか? 

あまりプライベートでは会っていないと思います。彼、呑むでしょう(笑)。ぼくはお酒、飲まないから、仕事上の付き合いですね(笑)。
―― そう言いながらも、たくさん長さんの作品を持ってきていただいて……。貴重な作品もありますね。 

ぼくは、好きな作家の本は、本棚にコーナーを作ってまとめているんですよ。長さんもコーナーのある作家のひとりです。
谷川さんの本棚には、長新太コーナーがあるそうです。
―― 長さんと一緒に作った作品の中から、特にお気に入りの作品を教えていただけますか?  

いっぱいあって、迷いますね……。ひとつは、『わたし』(福音館書店)かな。この絵本を出版したときに評判になったのが、お父さんが料理を作っていて、お母さんが新聞を読んでいる場面。絵本が出版された1981年はまだ、お父さんはお勤めで、お母さんが料理を作っているというのが一般的でした。その常識を、長さんが崩してくれた。読者の方も新鮮だったと思います。

―― 確かに、エプロン姿のお父さんが絵本に登場するのは、驚きだったと思います。 

長さんはこういう、チャレンジのようなことをのほほんとしてしまう作家だったと思います。『きもち』(福音館書店)もそのひとつだと思うでしょう?
―― そうですね。ずっと文章がなく、絵だけで情景が語られていて、後半にだけすっと言葉が入っている。はじめて見たときは、すごく画期的だと思いました。 

この作品をどういうやり取りで作ったか、ちゃんと記憶しておけばいいんだけど、覚えていないんですよ(笑)。もしかしたら、ぼくが最初にテキストを書いて、そのあと長さんと話をして、こういう作りの作品にしたのかもしれませんね。長さんの絵を文章で説明することが一番つまらないと思ったのでね。最低限度の文章で語るのが理想だと思ったんじゃないかな。

―― 友だちとケンカをしたときや、予防注射を打つときなど、文章で書かれていなくても、絵を見るだけで少年の気持ちが分かる上に、ページによって感じる気持ちもさまざまあって、長さんのすごさを感じました。 

こういう作品はノンセンス的な絵の方が、読者も入り込みやすいんですよね。絵を通して、いろいろな気持ちの変化を感じているから、最後に全体を統括した文章があればそれでいいんです。3冊目は『地球へのピクニック』(銀の鈴社)を挙げましょう。

―― 1980年に発売された、谷川さんの詩集ですね。この表紙と中の挿絵を長さんが担当されています。詩集の絵を長さんにお願いしたのは、谷川さんのアイディアですか? 

ぼくからの指名だったと思います。『地球へのピクニック』は、ジュニアポエムのひとつとして、ぼくが今まで出した詩集の中で特に若い人に向けて書いた作品をまとめたものなんです。ただ、教育的なにおいを出したくなかったので、長さんにお願いしました。
―― 作品によって、お願いしたい作家さんが決まることもあるのですか? 

ぼくは今までいろいろなイラストレーターと仕事をしていますが、自分の気持ちの中で「この人にお願いしたい」と切望する作家さんが何人かいます。長さんも良い機会があったら、常に仕事をしたいなと思うひとりです。
―― 『地球へのピクニック』の長さんの挿絵は、線がのびやかで、谷川さんの詩を長さんなりの解釈をして描いているように感じました。 

ぼくもそうなのですが、長さんも作風が変化する画家ですよね。たぶん、ずっと同じだと飽きてしまうからなんじゃないかと思うんだけど。この『地球へのピクニック』の絵も、初期から見るとずいぶん変わっていると思います。
―― 谷川さんから見た、普段の長新太さんはどんな人でしたか? 

素面のときの長さんはとても紳士的な人でしたよ。飲んだときの長さんの様子は、太田大八さんとか多田ヒロシさんとか絵描き仲間の方がご存知なんじゃないかな(笑)。そうそう、一度、長さんとぼくと佐野洋子の3人でサイン会をやったことがあったなあ。

―― そんな夢のようなサイン会があったんですか? 

ぼくのところばかりに人が並んで、ふたりのところには全然人が来なくてね……。ぼくはすごく肩身の狭い思いをしたんですよ。ふたりとも、そんなこと全く気にしない人たちでしたけど。

―― 今だったら考えられないお話しですね。今日はいろいろなお話しを伺い、ありがとうございました。

長新太さんと谷川俊太郎さんの共作絵本


序章 ナンセンスの王様 長新太さんってどんなひと?
1958年のデビューから2005年まで独自のナンセンス世界を生み出し続けてきた長新太さん。
長さんってどんなひと? 知りたい方はこちら>>





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