いつも寝てばかりで、仕事をしない酒好きの魚屋がおりました。
酒はこんどばかりでやめにする、明日からまじめに働くから! そう約束したけど、やっぱりぐうたら。
妻に尻を叩かれ、ようやく仕入れに出た先で——
魚屋、まさかの、大金入りの財布をひろった!
ひろったからにはおれのものだと、友だちを呼んで豪遊三昧!
「急に大勢友だちひっぱってきて、おまえさん、なにかめでたいことがあったのかい?」
「あったじゃねえか。しばの浜で、革の財布をひろってきたじゃねえかよ」
ところがどうして、当の財布がどこにもない。
なんと、お金をひろった夢をみていたらしい。
しかも、豪遊ばかりは現実で、支払う金なんてありゃしない。
酒好きの魚屋も、こんどばかりは自分の酒癖にほとほと懲りて……
笑える噺、怖い噺、そして、泣ける噺もある。
それが落語!
くすりと笑えてほろりと泣ける、古典落語は人情噺の大名作、「芝浜」が絵本になりました!
「芝浜」は個人的にも大好きな噺のひとつで、聞くたびに「やっぱり落語っていいな」と思わせてくれる演目です。
一年を締めくくる大晦日という、どこかふわふわと心わきたつ日を舞台に描かれる夫婦愛と、そしてその美しく粋なオチに、いつでも泣かされてしまいます。
絵本になっても魅力はそのまま!
波立つ青の表紙がさわやかな、あらたな「芝浜」が誕生しました。
くすりと笑えてほろりと泣ける、人情噺の醍醐味を味わうことのできる一冊です。
脈々と話し継がれてきた「泣ける落語」の魅力を、ぜひ絵本でたのしんでください。
(堀井拓馬 小説家)
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