「なつやすみ、ぼくは、ひとりでしんかんせんにのって、おじいちゃんのいえにいった。
きょねんのふゆ、ぼくのだいすきなおばあちゃんがなくなってしまったから、おじいちゃんはひとりでくらしている。
そのよる、ほしぞらをみあげながら、おじいちゃんがはなしだした――。」
横型の絵本を手にとり、2回横に開くと、さらに上に広がる不思議なスタイルであることに驚きます。
描かれているのは、おじいちゃんとぼくの後姿。そして満天の星空。
「人はみんな、自分の星を持っているんだ。」
おじいちゃんは、あれがおばあちゃんの星だ、と夜空に輝くひとつの星をゆびさします。
おばあちゃんだけじゃない、おとうさんの星もおかあさんの星も、おまえの星だってあそこにある。
だから・・・いつだってひとりじゃないんだと。
星でうめつくされた群青の空は、さらに縦に大きく広がり、両手で抱えきれないほどになります。
本書は2013年に行われた第47回造本装幀コンクールで「日本印刷産業連合会会長賞」を受賞。
じつはテレビ、映画、美術など多方面で才能を発揮している北野武の、初の絵本作品なのです。
映画の作中画などで、これまでに北野武の絵を目にした方もいらっしゃるかもしれません。
絵本としてのスタイルをぶち抜き、圧倒的な夜空を味わうためだけに本書を作ったと言えそうな、すばらしい試みを堪能できる一冊です。
ちなみに、「あれは織田信長」「あれは坂本竜馬」と、クスリと笑える北野武らしいセリフもあります。
だれかに、あなたを想っているよ、と、伝えたいとき。こんな本はいかがでしょうか。
プレゼントにふさわしい、夏の夜空をまるごととじこめたような絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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