幼い頃の私は「本読んで」と
ずいぶんねだったのだと聞かされていたので
あと数週間と言われた母の枕もとで
面会の度、絵本を読んできいてもらっていました。
こんどは私がお返しねと
きいてもらっていました。
そうしてお通夜の晩には
38年前に父が亡くなった時
従姉が母に贈ってくれたこの本を
棺の中で眠る母に読みました。
憶えているか、思い出せるかわからないけれど
めぐり巡ってまた逢おうねと読みました。
こんな心にしみこむような包み込むような黄色
たんぽぽの花か菜の花かひまわりか
それともやわらかな日差しか
そんな色のあたたかな光が迎えにきてくれたんだよね。