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絵・文: 川浦 良枝  出版社: 白泉社 白泉社の特集ページがあります!
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はじめて手にとるホリスティック絵本『わたしは樹だ』松田素子さんインタビュー

食べること、住まうこと、子育て、雑貨…暮らしと心を豊かにしてくれるレーベル、アノニマ・スタジオをご存知ですか?
絵本ではしかけ絵本『オセアノ号、海へ!』や『ナマケモノのいる森で』、『ふゆ』(インタビュー記事はこちら>>>)、アンデルセンの絵本『モミの木』などを出版している、とても素敵なレーベルです。そんなアノニマ・スタジオから、「全体」「つながり」「バランス」などの意味を持つ「ホリスティック」をテーマにした絵本『わたしは樹だ』が発売されました。今回、絵本ナビでは、文章を担当された松田素子さんに、nakabanさんの原画と共に、アノニマ・スタジオのオフィスでお話をお伺いすることができました。松田さんが取材で訪れた屋久島での不思議な出会い、作品に込めた思いなど、興味深いお話が次から次へと飛び出して、絵本ナビスタッフも屋久島の大自然を垣間見たような心持になりました。

わたしは樹だ
わたしは樹だの試し読みができます!
文:松田 素子
絵:nakaban(ナカバン)
出版社:アノニマ・スタジオ

全体、つながり、バランスなどの意味を含む「ホリスティック」をテーマにした絵本。新しい命(たね)の寝床である倒木をはじめ、光と水、多種多様な動植物、目には見えない小さな菌など、一本の樹は全てとつながりあって大きな樹へと成長します。あらゆるものがつながり合い、支えあいながら、いまここにあるということについて気づかせてくれます。

「憧れの土地『屋久島』は、不思議な出会いと体験の場所でした」

───松田さんには以前、「宮沢賢治の絵本シリーズ」のときに編集者という立場からおはなしを伺って、賢治作品との不思議なつながりなどに大変感動しました。今回、作家さんとしておはなしを伺えるので、とてもワクワクしています。
『わたしは樹だ』は、「樹」である「わたし」を通して語られる、とても重厚で、果てしない時間の流れる作品。物語の舞台は屋久島ということで、取材にも行かれたと伺いました。

私にとって、屋久島はずっと前から憧れの場所でした。屋久島関係の本ばかりが増えていって(笑)。でも、憧れが強すぎるとかえってなかなか行けないことってあるでしょ? 私にとって屋久島は、まさにそういう場所だったんです。でも今回、アノニマ・スタジオから屋久島を舞台にした絵本を書いて欲しいというおはなしが来たとき、「ああ、とうとう行く時が来たのかも」と思いました。とにかく行くしかない。本などで仕入れた知識はおいて、まずゼロのきもちで屋久島の空気にひたろう。行けばきっと、そこで何かがわかるはずだという、妙な確信のようなものはありました。


屋久杉の根っこ。本当にむき出しで伸びています!

───屋久島は1度訪れると、世界観が変わるという人も多いと聞きますが、松田さんは実際に行ってみて、どうでしたか?

到着した初日に、まず衝撃を受けたのが、木の「根っこ」でした。普通、木の根って地面の中に埋まっているものですよね、でも、屋久島は島全体が岩でできている島なので、土が少なくて、深く埋まるはずの根がむきだしになって、地面をはいまわっているんです。木の高さや太さよりも先に、まず根にひきよせられた。「生きるぞ!」という執念のようなものを感じました。まさにこのときに、書くべきものが決まった気がします。



───屋久島ではやはり縄文杉まで歩いたんですか?

ええ、歩きましたよ〜。往復10時間! 縄文杉はもちろん、森全体に対していろいろなことを感じました。でも実は、歩きはじめる直前にすごく重要な出会いをしたんです
縄文杉の登山口まで向かうバスの中で、そこには他のツアーの方たちも乗っていたのですが、たまたま私が座った席の隣にいた男性が、ツアーガイドの方だったんです。その方Yさんは屋久島の伝説的な樵(きこり)――そういう職業を山師と呼ぶらしいんですが、高田久夫さんの愛弟子で、屋久島でも数少ない山師の一人だったんです。そのときYさんは、仕事中の怪我で山師を引退してツアーガイドの助っ人をしていて、バスの移動中にいろんな質問に答えてくれました。

───いろんな質問とは


樹のこと、根のこと、樹は決して1本では立っていなくて、お互い支え合い、根を絡ませ合って生きていることなど時間にして15分くらいでしたが、短い時間とは思えないほどの濃い出会いでした。Yさんの言葉は長年、山師として屋久島の樹と対峙してきた人間の生きた言葉で、すごく具体的で説得力があって、私の中に深くしみこんできました。
Yさんは、九死に一生を得るほどの怪我で山師の仕事が出来なくなったとき、師匠の高田さんから、こう言われたそうです。「お前、どうして助かったか分かるか? おまえは、これからは伝える役目があるからだぞ」って。そんな話を聞いたもんですから、別れ際に、私も絵本を創るためにこの島に来たんだということを伝えました。

───へえ! スゴい出会いでしたね。

ええ。で、実は、本ができた後にもっと「えっ?」と思うことを言われたんです。本を送って、あらためて電話でお礼を伝えたとき、Yさんが言ったんです。「あんたもそういう役目をもってるなって、あのときわかったんだ。だから話したんだよ」って。

───Yさん、格好良すぎますね!

ね〜、ほんとかどうかわからないけど(笑)、うれしい気持になりましたね。で、そのYさんとの出会いが、屋久島で絵本の原画展を開催することにもつながったんですから、ほんとに感慨深いです。それと、もう一人、大切な人との再会がありました。それは、屋久島に住み、屋久杉を撮りつづけている、写真家の山下大明(やました・ひろあき)さん。山下さんとはずっと前に知り合っていたのですが、お会いするのはなんと20年ぶりでした。

───山下さんの撮られた写真、とても幻想的でステキですね。


エメラルドグリーンに発光する木の葉の写真


私がその写真集で最も目を奪われた写真のひとつが、夜の森の写真。夜の森の中で密やかに光を放っている葉っぱやきのこの写真でした。これを見られたらと思いましたが、そんなに都合よく見られるものではないだろうし、なにより久しぶりに会う山下さんに、そんなことを切り出すのは失礼だと遠慮していたんです。ところが、再会の握手の後すぐに、山下さんの方から「松田さん、今日、夜の森に行きましょう」と言ってくれて、びっくり! その夜、まさかの光景を見ることができました。

───やはり素晴らしかったですか?


光の下では、落葉腐朽菌の光は見えなくなります

もう、言葉にできないくらい。といっても、最初に発光する葉っぱを見た瞬間は「わあ!」と思わず大きな声が出てしまいましたけどね(笑)。でもその後からは、言葉を失っていく体験でした。真っ暗な森に入っていく。本当に何も見えない。自分の手すら見えない。それなのに、5分たち、10分たって、だんだん目が慣れてくると、あちこちに光るものが見えてくる。発光する葉が、ぽつんぽつんと散らばる、そのただ中に立ったときは、もう、自分が立っているのか浮いているのか分からなくなった。まるで宇宙空間に浮かんでいるような、光のひとつひとつが銀河に見えてくるような、あの世にいるのか、この世にいるのか、それすらさだかでない。言葉はでないし、いまも言葉化しきれない。深遠でほんとうに静かな気持ちになっていってとても不思議な体験でした。

───葉っぱが、どうして光るんですか?

実は、これは葉っぱ自体が光っているんじゃないんです。葉っぱについた菌が発光している。「落葉腐朽菌(おちばふきゅうきん)というんだ」と山下さんが教えてくれました。他にも、木の枝や幹に付いて発光する小さなきのこも見ました。つまりこれは、弱った木や木の葉をゆっくりと腐らせて土に戻す役目をしている菌類の光なんです。普通、「腐敗」というと、悪いことや汚いもののように感じるけれど、よく考えれば、何かがちゃんと腐って死ななければ、次の命も生まれない。死は生を育むものだということを、あの光は私にしっかりと教えてくれました。屋久島での取材は期間にするとわずか4日間の短い滞在でしたが、この絵本を作るうえで、とても重要な出会いとつながりを、私に見せてくれたんです。

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松田 素子(まつだもとこ)

  • 1955年山口県生まれ。編集者、作家。児童図書出版の偕成社に入社。雑誌「月刊MOE」の創刊メンバーとなり、同誌の編集長を務めた後1989年に退社。その後はフリーランスとして絵本を中心に活動。これまでに約300冊以上の本の誕生にかかわってきた。各地でのワークショップを通して、新人作家の育成にもつとめており、なかやみわ、はたこうしろう、長谷川義史など、多くの絵本作家の誕生にも編集者としてたちあい、詩人まど・みちおの画集なども手がけた。また自然やサイエンスの分野においても、企画編集、および執筆者として活動している。

作品紹介

わたしは樹だ
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文:松田 素子
絵:nakaban(ナカバン)
出版社:アノニマ・スタジオ
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