もうなかないよ、クリズラ もうなかないよ、クリズラ
作: ゼバスティアン・ロート 訳: 平野 卿子  出版社: 冨山房 冨山房の特集ページがあります!
読み手の年齢を選ばない子どもから大人まで、それぞれの感性で理解してうけとめる事のできる「みんなの本」です。
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ハナをほじってもいいんじゃない!?『りゆうがあります』 ヨシタケシンスケさんインタビュー

りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で鮮烈なデビューを飾り、その年のあらゆる絵本賞を総なめにした絵本作家ヨシタケシンスケさん。最新作『りゆうがあります』(PHP研究所)も、ヨシタケさんのユニークな着眼点が冴えわたる「クスッ」と笑えるユーモア絵本です。そんなヨシタケさん、絵本作家としてのデビューは2013年ですが、イラストレーターとしての経歴は長く、日常の出来事を絶妙に切り取ったイラストが人気で、『しかもフタが無い』(パルコ出版)、『やっぱり今日でした』(ソニー・マガジンズ)などの作品集も出版している方なのです。ヨシタケさんの魅力をもっと知りたい! 絵本ナビスタッフがアトリエ兼自宅へお邪魔しました。

───絵本業界ですっかり話題になっているヨシタケさん。最新作『りゆうがあります』も、とても楽しく読ませていただきました。

ありがとうございます。『りゆうがあります』では、「くせ」と「うそ」がテーマになっています。

りゆうがあります
りゆうがありますの試し読みができます!
作:ヨシタケシンスケ
出版社:PHP研究所

子どもたちが、ついやってしまうくせ。 それには、ちゃんとした「りゆう」があるんです。 大ヒット『りんごかもしれない』でおなじみの、ヨシタケシンスケ最新絵本がついに発刊です!

───「くせ」と「うそ」…。両方ともちょっとネガティブな印象がありますよね。


そうなんです。でも、「くせ」も「うそ」も全部が全部悪いわけではないと思うんです。「くせ」って大人も子どももついついやってしまいますから…。

───うちの息子も小学校に入りたての頃は絵本の男の子のように、道に落ちている物をよく拾ってきていました。なので、絵本を読んだとき、「男の子ってみんなそうなんだ…」と思って(笑)。私のように、感じるお母さんは多いと思います。

くせのチョイスは一番肝になる部分だと思い、いろいろ考えました。大切にしたのは、多くの人が共感できる「くせ」であること。「理由」は誰が聞いてもうそだと分かる、すがすがしい「うそ」であることが出せているか、気をつけました。

───「はなくそ」「びんぼうゆすり」「爪かみ」など、絵本の中に出来るくせは、どれも「うちの子もやっている!」と感じると思うのですが、この理由のつけ方がまた秀逸なんですよね。

くせを考えたときに、一緒に理由も考えていったのですが、くせって「やめなさい!」って否定されるものじゃないですか。だから、これはみんなの幸せのためにやっているんだという「理由」にしたいと思ったんですよね。「宇宙船の部品を探す手伝いをしている」とか「高い木から降りられなくなったネコを助ける」…とか。誰かのためになるという理由の方が大人受けがいいと、この子は直感で知っているんだろうな…って (笑)。

───どうして、そんな突拍子もない「理由」を思いつくのかがとっても不思議で…。結びつきがなさすぎますよね。

ページをめくって、「うそーん」って言ってもらいたい。そういうのがぼくは好きなので(笑)。「なんで、鼻をほじるの?」って聞いたときに「鼻に違和感があるんだ」って返されたら正しすぎて何も言えないじゃないですか。

───ぐうの音も出ない…おはなしが終わっちゃいますね(笑)。

そこで理由に距離感を出して、「一番遠いのはココ。一番近いのはココ」と言ってしまえば、その間は何でもアリだよ、どんな理由も成立するんだよって伝えられる。そうすることで、読んだ子もいろんな「理由」を考えてもらえるかなって。


まさか、ストローガジガジからここまで展開するとは・・・。

───なるほど〜。絵本の中では、ストローガジガジから、船で世界旅行が一番距離のある理由ということですね。

そうなんです。「くせ」とその「理由」に一番幅が出ていると一番盛り上がるかな、とぼくなりに考えて組み立てています。

───「理由」を聞くお母さんの表情も、またいいんですよね!

この本で大事なのは、お母さんが子どもの「理由」について否定をしないことなんですよね。一応、全部付き合って聞いてくれる。そういう親子関係がいいなというか、そういう余裕のある大人であるといいな…ということを言いたかったんです。

───お母さんが、きちんと聞いてくれるから、この子もどんどん壮大な理由を思いつける…(笑)。


ちゃんと聞いてくれるから一生懸命考える。ぼくも親なので分かるんですが、そういう信頼関係って、現実ではなかなか難しい…つい「言い訳して!」とか怒ってしまう…。「こういう親子関係は良いよね」という、ひとつの提案。理想形として共感してもらえたらと思って描きました。

───絵本のお母さんも、どこかで子どもの理由を聞くのが面白くなっている節がありますよね(笑)。

読者の方が、この親子がある瞬間から、お互いにやり取りを楽しみはじめているというのを感じてくれたら成功かなと思います。

───この子も、お母さんが理由を信じているとは思っていないんですよね、きっと。怒られないところを探り探りやっている感じもすごくリアルで、思わず笑ってしまう…。

基本、親子の関係って日々交渉ごとじゃないですか。買ってもらいたいんだけど、今日は機嫌が悪いとか、やんわり否定してくれたら分かるんだけど、頭ごなしに言われるから言い返しちゃう…とか。

───親としても、くせに関しては、そんなに頭ごなしに怒る必要はないと思っていますよね。でも、見ちゃったからには、言わないと…という気持ちなんです…。

辛いところですよね。大人になったら爪を噛んだり、鼻をほじったりすることは自然と止めるということは経験として知っているけれど、率先してやれとも言えないし…。これはお互いギリギリの妥協点を探る物語なんです。



───この子も言われた瞬間に、「見つかっちゃった!」と思っているのは表情からも感じられます。

子どもも、注意されることは十分わかっているんですよね。この日はたまたま双方に余裕があったから話が進んだけれど、日によっては頭ごなしに怒られる日もあると思うんです。






───最終的に、「きたなかったり、おぎょうぎがわるいやつは なるべく ひかえていただけるかしら」とお母さんが言って、子どももそれに「わかったよ」と応えている。これもお互いの余裕、この日の妥協点ということですね。

一応、子どもが納得しているのがひとつの理想的な関係なのかなって思ったんです。




───くせの直し方とか、うそをついたらどうなるか…という話には、最後に子どもを怖がらせて止めさせるという教育的、教訓的な内容になることも多いですが、そういうラストにしようとは思いませんでしたか?

『りゆうがあります』はくせを悪い事としてやめさせるのが目的じゃなく、「やってもいいじゃん!」というスタンスなので、この子がこらしめられるようなラストにすることは最初から考えていませんでした。
この絵本を作るときに考えたのは、1つの事柄に対して一通りの言い方しかないのか…ということ。うそをついたり、夜更かししたりすることに対して、「うそはダメ」とか、「早く寝なさい」とか、言ってしまうのは簡単だけど、相手に伝える言い方はもっといろいろあるはずなんですよ。その言い方をたくさん考えて、その中から一番面白い、絵本に適した伝え方を示すことができたら、ぼくにはその絵本を作る「理由」がある様に感じるんです。

───ちなみに、ヨシタケさんの小さいころのくせはなんでしたか?

ぼくは「爪かみ」でした。毎年ぎょうちゅう検査で引っかかって、すごく恥ずかしい思いをするんだけど、それも大人になったらやりませんからね。最近、爪を噛むことで免疫力を上げるという学説がでてきて、あの癖も役に立っていたんじゃないかって思います。

───私は、「貧乏ゆすり」をよくしていたのですが、それも最近、リズム感がある人がやると書かれている本を読んで、悪い事ばかりじゃないって思いました。

大人になると、何とかして自分のくせを肯定してくれるものを探しますよね(笑)。そういう作業を子どもがやってもいいって思ったのが、この絵本の発端でもありました。子どもだと、答えにいろんな選択肢があることを知らないから、選択肢が多数あることを知るだけでもその子にとってはすごい事なんじゃないかと思ったんですよね。

───大人だって「ついやっちゃうこと」、たくさんありますからね…。


そうなんですよ。結構ついやっちゃっているんですよ(笑)。でも、「大人も子どもと同じなんだよ」ってことを知らせて、大人を非難するのではなく、「大人にも子どもにもそれぞれの理由があるんだよ」というのを伝えたかったんです。別の言い方をすれば、子どもの、大人への信頼感を良い感じに落としたいと思っているんです。

───大人への信頼感を落とすんですか?

子どもの中には、大人ってそんな大したもんじゃないということを薄々気づいている子もいると思うんです。ぼくもそうだけど、大人は言っていることもマチマチだし、機嫌が良いときも悪いときもある。うそもつくし、ずるいこともする。そういう大人の姿を子どもは早いうちに知った方がいいと思うんです。成長してから大人に対する信頼を失ってしまうと、反抗的になったりして大変なので…。もっと小さいころに情操教育として大人だって子どもと同じなんだよということを知っていると、社会に対するアプローチが後々違ってくると思うんですよね。

───ヨシタケさんの絵本では、そういう新しい発想、着眼点を読者に見せているように感じました。

子どもがヒントに気づけば、それは後々きっと役に立つ。いろんなところで強い人間になる。言い方だけなんだ。言い方の向こうにある伝えたいことも推しはかることができれば親子も兄妹関係が良くなるんだって、絵本から感じてくれたら嬉しいですね。

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ヨシタケシンスケ

  • 1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)、『りゆうがあります』(PHP研究所)などがある。2児の父。

作品紹介

りゆうがあります
りゆうがありますの試し読みができます!
作:ヨシタケシンスケ
出版社:PHP研究所
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