『旧約聖書』の「創世記」に記されているお話として、世界中で知られる「ノアの方舟」が、クロアチア生まれの絵本作家によってかわいらしい絵本になりました。
「ノアの方舟」は、地上でくりかえされる争いごとに嫌気がさした神様が、あるとき、地上を一掃しようと大洪水を起こすお話。
ただ、神様は、たったひとりだけ正しい心をもつノアを救うため「方舟をつくり、家族と動物たちをのせるように」と伝えます。
神様の言葉を信じ、ノアは巨大な舟をつくりはじめますが、人々はノアを馬鹿にし“大洪水がくる”なんて信じようとしません。
ところが、本当に何十日もの間つづく雨で陸地は沈み、人間も動物たちも、地上から姿が見えなくなってしまいます。
方舟にのったノアと家族と、動物たち以外には……。
二千数百年以上前から伝えられてきたお話は、子どもに様々な光と影をなげかけます。
雨がふりつづけば陸地がなくなってしまう、自然の力のこわさ。
巨大な舟をつくり、動物たちとともにのり込む冒険心。
顔をだした陸地にいのちの芽吹きを見いだす興奮。
いろいろな種の動物を“つがい”で舟にのせたからこそ、種のいのちがつながっていく興味深さ。
一方で、本書は、手触り感のあるやわらかいタッチと色彩で、未来のにぎやかさと希望を描き出します。
じつは、世界中にあるという“洪水神話”。あとがきによると、日本でも沖縄県に、洪水から生き残った男女が人間のはじまりだと語る話があるのだそうです。
わかりやすい言葉、幼いお子さんにも親しみやすいイラストレーションは、親子で読むのにぴったり。
古い神話である「ノアの方舟」を大人も一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。
幅広い年齢層に受け入れられそうな絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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